第五章 ep6
そのきらきらとした目は、ちょうど包みから出していたリュート・オリヴェルを見つめている。
「わぁ、それがミーリャさんの魔音楽器なんですか? リュートっていうにはすごく大きいですね!」
「どんな音がするんですか?」
五人の男の子たちに囲まれて、わたしは圧倒されそうになっていたが、オリヴェルのほうは上機嫌なようだ。いつもはあまり鳴らさない、一番上の弦が笑うようにかすかに鳴っている。
もう、こうなったら、わたしが舞台にあがるしかないかな。
「セラフィナ、わたしが先でもいい?」
「もちろんだ」
にっこりとセラフィナが笑うと、そこにいたギルバートとその友人たちは、頬をあからめてぼうっとなった。
ある意味、その微笑みは罪作りだと思うよ、セラフィナ。
わたしは、詩いたくてうずうずしているリュート・オリヴェルを手に、大広間にしつらえられた、小さな舞台に上がった。
ルーデンスの郷の人たちは、わたしの持つオリヴェルを見て、驚いた表情を浮かべていた。その中には、ヴァネッサさんの父であるルーデンス子爵の姿もあった。
わたしは舞台に置かれた椅子に腰をかけると、リュート・オリヴェルを構えた。
ここで詩うなら、吟遊詩人の父さんがよく酒場で詩っていたような、誰もが楽しめる詩がいい。
わたしは手早く調弦をすませると、興味津々でわたしを見つめているルーデンスの郷のみなさんに向かって言った。
「森の娘」
おおっと言う声がどこからともなく漏れた。王立魔法音楽院の生徒が詩うものとしては、庶民的すぎるかもしれない。
ただ、この森に囲まれたみなさんには、気軽に聞いてもらえる楽しいものがふさわしいと思ったのだ。
短い前奏を奏でた後、わたしはゆっくりと息を吸いこんだ。
「森の娘は何が好き?
赤い花束
甘いパイ
白いハンカチ
髪飾り
違う、違うわ。それじゃない
森の娘は何が好き?
知ってるでしょう?
でも、言わない
それは、あなた、ただひとり」
何らかの力を持つ魔詩ではなく、酒場で詩われる恋の詩だ。父さんはよく『あなた』のところを、酒場にいる若者の名前に変えて歌って喝采を浴びていた。
楽しい曲だ。だれかが足を踏み出して、そのまま踊りの輪になっていった。
二番・三番と少しずつ即興で歌詞を変えながら、詩いつづける。広間の奥のほうで、ヴァネッサさんが、少し年上の若者と踊っているのが見えた。セラフィナが少年のひとりに誘われて、踊りの輪に入っていくのも見えた。
ルーデンス子爵は、その様子を広間の隅から眺めながら、大ぶりのゴブレットでお酒を飲んでいるようだ。いかつい顔の大男だけれど、その目元には優しい笑みが浮かんでいる。
わたしの腕の中にいるリュート・オリヴェルは、嬉しそうに楽器全体を響かせるように音を紡いでいる。わたしも、それに合わせて軽やかに楽しく、詩い続けた。
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