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第五章 ep5

「ミーリャ、そなたのリュートが呼んでるぞ」

「え? セラフィナ、もしかして、オリヴェルが喋るって知ってた?」

「喋る?」

「あ?」

 もしかして、わたし墓穴を掘ったのだろうか。

「そなたの楽器は、よく共鳴りをするとは思っていたが……」

 共鳴りというのは、楽器が弾いたとき、ほかの楽器の弦が一緒に響いてしまうことだ。

「あー、そうなの。それ、共鳴りのこと……なんか、良く鳴っちゃうのよね」

「その割には、同じ音じゃないがな」

 共鳴りするのは、基本的に同じ音程の弦。オリヴェルが喋るのは、そんなことおかまいなしだ。

「おい、ミーリャ、聞こえてるんだろ。早くだしてくれ。あんな調子っぱずれな音、聴いちゃいられん!」

 とかいいながら、その口調は実に楽し気。

 元々、吟遊詩人の父さんの楽器だから、こういった宴会の雰囲気が大好きなのだ。

 それは知ってる、知ってるけど、セラフィナが隣にいるのよ。

「喋ってるな」

「……」

「おい、ミーリャ、聴いてんのか! 出せって言ってんだろ、おれも舞台に連れて行けってんだ!」

「いま、喋ったよな」

「……はは」

 もう、ごまかしようがない。

 わたしは、リュート・オリヴェルを包んでいた布を広げ、手に取った。

 オリヴェルはご機嫌で、十一本の弦をビーン、ビーンと勝手に鳴らしている。

「よっしゃ! おれさまの出番だな!」

「そなた、リュート・オリヴェルとやら」

「!」

 オリヴェルは、急に黙り込んだが、もう後の祭りだ。

「見かけからして、奇妙な魔音楽器だとは思っておったが、そなた自身が喋るとは面妖なことよな」

「……」

「オリヴェル、もう、ごまかすのって無理だと思うよ」

「……くっ、ばれたか」

「もう、ばれたかじゃないわよ! 父さんが言ってたのに、秘密だって!」

「なぜ、秘密にするのだ?」

「そういえば、どうして秘密にしなきゃいけないのかまでは知らない……はじめてオリヴェルの声を聴いたのって、父さんが亡くなる直前だったから、そこまで聞いてなくて」

「そうか……」

「そうかって、セラフィナはオリヴェルが喋ってびっくりしてないの?」

「驚いてはいる」

「ぜんぜん、そんな風にみえないけど」

「そなたのリュート・オリヴェルは、いかにもいわくのありそうな魔音楽器だからな。なんらかの能力があってもおかしくはなかろう」

「さすが、見る目がある者の言葉は違うな!」

「ちょっと、オリヴェルは黙っててよ」

 わたしが、ビーンと一番うるさく鳴っている太い弦をぎゅっとつまむと、いかにも不機嫌そうにその上の弦がなった。

「ミーリャ、こら、離せ!」

「大人しくしてくれるって約束してくれるなら、離してあげる」

「わかった、わかったから、離せ!」

「もう、本当にしょうがないんだから……」

 オリヴェルと丁々発止を繰り広げている間に、大きな拍手が巻き起こった。舞台で楽しそうに歌っていた少年たちが息を切らしながらこちらに駆け寄ってきた。

「ミーリャさん! セラフィナさん! 良かったら聴かせてくださいよ!」


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