表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
28/69

第五章 ep1

 翌日、谷をひとつ越えて森に入った頃から、気温ががくんと下がった。

「寒い…」

 セラフィナがちょっと口をとがらしてそう言った。

「でも、幌の中にいるわたしたちより、御者台にいるギルバートやヴァネッサさんのほうがずっと寒いだろうし」

「ああ、わたしたちは、慣れてるから大丈夫よ」

「王都とはずいぶん気候が違うんですね」

「寒暖差があるほうが、木目がしっかり締まるからね。そのほうが楽器製作には適してるのよ」

 わたしたちは王都で買い込んだ外套を着こみ、マフラーをまいた。御者台で手綱をにぎるギルバートは丈夫な革づくりの手袋をしている。

 魔音楽器を弾く者たちにとって、指はなによりも大切だ。万が一にも霜焼けやあかぎれを作るわけにはいかない。わたしたちの手袋はうさぎの毛で編んだもので、やわらかくそしてとても暖かい。

 森が少し開けてきて、奥に小さくいくつかの建物が見えた。何人か出迎えの人もいるようだ。御者台のヴァネッサさんが大きく手を振った。

「ただいまー!」

 王立魔法音楽院では、生徒会長として凛とした印象の強いヴァネッサさんだが、故郷に戻ってくると、どこか子どものような雰囲気に変わっている。

「お嬢! おかえりなさい」

「ギルバート、遠かっただろう、ごくろうさん」

「おお、後ろに誰か乗ってるのかい? お客さん?」

 ギルバートとヴァネッサさんの姿を見つけて、郷のひとたちが馬車の周りに集まってきた。

 わたしとセラフィナは、ギルバートの手を借りて馬車を降りた。

「わたしの後輩たちなの。みんなへの紹介はまた後でね。とりあえず父さんのところへ行かなきゃ。ギル、荷物お願いね」

「ちょっと姉ちゃん、それはないだろ」

 ギルバートは口では文句をいいながら、馬車から荷物を運んでくれている。ギルバートの友達だろうか、数人の少年たちが声を掛けて手伝ってくれていた。

 よそ見をしていたわたしに向かって、ヴァネッサさんがひらひらと手招きをしているのが見えた。わたしは小走りになりながら、郷で一番大きなお屋敷に向かって歩き出した。


 ルーデンスのお屋敷は、静かな中でもずっしりと重みがあり、柔らかな木の香りがしていた。ヴァネッサさんに導かれて、工房の奥へと進んでいくと、近くにいる若い男の人が声をかけてきた。

「お嬢、おかえりなさい」

「父さんは中? 調音してる?」

「今日は曇ってるから、調音はしてませんよ。入っても大丈夫です」

「ありがとう」

 そう答えて、大きな木製の扉をノックした。

「父さん、わたしよ。今、帰ったわ」

「入れ」

 中から、壮年の男の人の声がした。扉の中に入ると、そこには作りかけのハープがいくつか立てかけられていた。

「すごい……」

 わたしは思わず息をのんだ。

面白いと思ったら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援お願いします!

これからも、毎日更新の励みになります!

よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ