第四章 ep7
その思いはみなに通じたみたいだった。
わたしがリュート・オリヴェルを取りに立ち上がろうとしたとき、セラフィナが手でそれを制して、自分が立ち上がった。
幌馬車の荷台から、自分のリュートを取り出すと、焚火の近くに腰を下ろし直した。
セラフィナの細い指が弦をはじいた。
「蒼い星がきらめき
すべてが静かになりゆく
この夜を彩る星たちに願わん
わたしたちの行く末に、幸あれと」
美しいソプラノとリュートの響きに、聴き惚れてしまった。魔詩ではあるけれど、それは聞く者の心の平安を願う詩で、なにかが直接おきるわけではない。
「セラフィナのリュート・ジゼル。本当に美しい音色ね」
ヴァネッサさんが、うっとりと目を閉じたまま言うと、ギルバートが大きくうなづいた。
「おれ、はじめて見たよ、こんな綺麗な魔音楽器」
「それは、そうだろう。わたしも、このリュート・ジゼルも王都を出たことすらなかったからな」
セラフィナの愛器は小ぶりのリュートで、貝殻細工の細やかな装飾がふんだんにほどこされた華やかなものだ。もちろん見かけだけでなく、音質もすこぶる良い。
「これだけは、王族であったことに感謝だな。宝物庫で眠っていたものを拝借してきた」
「宝物庫?」
三人の声が同時にひっくり返りそうになった。
「これほどの魔音楽器なのに、王宮の宝物庫で文字通りお飾りになっていたのだ。一応父上には、借りていくと断りを入れたが、もう返す気はない」
「それ、大丈夫なの……国宝ってことよね?」
「国宝ではあるが、その前に魔音楽器だ。弾かれぬ楽器など価値はないだろう。それくらいなら、わたしが借りっぱなしにしたほうが、何倍も有益だ」
「まあ、そうね。こうやって音色を楽しませてもらってるし」
ヴァネッサさんはあくびをひとつして、そろそろ寝ようと言って、毛布を準備してくれた。焚火のおかげで、毛布にくるまれば、それほど冷えずに眠れそうだった。
「本当にここで寝るのか……?」
「幌馬車の長椅子で寝てもいいけど、そっちのほうが寒いわよ」
セラフィナが少しぐずってはいたけれど、ヴァネッサさんは適当にあしらってる。このあたりのセラフィナの扱い、とても上手でわたしも見習いたい。
セラフィナは別にわがままなわけではないけれど、やはり王宮育ちなので、なかなか庶民の感覚に慣れないのだ。
わたしたちは、火の回りに集まって、星空の下眠ることにした。
父さんと旅をしていた頃は、これが普通だった。
宿に泊まるとお金がかかるからだけど、わたしは星空を見ながら眠るのは大好きだった。その頃の気持ちを懐かしく思いながら、眠りに落ちていった。
面白いと思ったら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援お願いします!
これからも、毎日更新の励みになります!
よろしくお願いいたします




