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第四章 ep5

 幌馬車にすべての荷物を積み込んで、寮を出発する頃には昼前になってしまっていた。王都を通り抜ける途中でヴァネッサさんが言っていた屋台により、昼食とこれからの旅路で必要となりそうな食料をいろいろと買い込んだ。

 わたしとセラフィナは、王都に出るのも初めてで、実は自分の手で買い物をするのも初めてだった。

 馬車の番をギルバートに任せ、ヴァネッサさんを筆頭に三人で買い物をする。とにかくヴァネッサさんの買い物が早くて、わたしもセラフィナも荷物を持ちながらついていくだけで精一杯だった。

「ほら、うちは子爵っていっても、名前だけなのよね。中身は庶民だから」

 そう言って、パン、りんご、干し肉と、どんどん買っていく。

「もう、持てぬぞ、手がいっぱいだ」

 そうセラフィナが文句を言うと、隣の屋台で大きな籠を買い、それに買ったものを盛り直して手渡した。わたしのほうには、肩にかける紐がついた大きな麻袋だ。

「二人のところが四人になったからね。食料はちょっと多いかなってくらいでちょうど良いのよ。足りなくなったとき、すぐに手に入るとは限らないから」

 それはそうだ。特に地図で見たように田舎のほうへ向かう場合は、下手をするとお金があっても食べ物をわけてもらえないこともある。

「それから、ふたりにはこれ」

 急に肩の上にもこもことしたものが掛けられた。

 毛皮のふちがついた外套だった。

「ルーデンスの冬ってすごく寒いから」

「でも、ヴァネッサさんの分は?」

「ああ、わたしの外套は馬車に積んであるから大丈夫。さてと、じゃあ昼食は温かいものを買って帰りましょう。早くしないとギルが空腹で倒れちゃう」

 そう言うと、ヴァネッサさんは湯気のでる肉団子をはさんだ大きな白パンを四つ買い込んだ。ひとつずつ紙に包んでもらう間にもいい匂いがして、思わずお腹が鳴ってしまった。

「ミーリャもお腹がすいた?」

「はい!」

「わたしもすいているぞ」

「馬車まで戻ったら、一緒に食べよう。さすがにここでつまみ食いしたとばれたら、ギルが怒り出しそう」

 ヴァネッサさんが湯気の出る紙袋を片手にそう言うので、思わず笑ってしまった。


 買い出しに時間がかかってしまったこともあって、昼食は馬車に揺られながらということになった。ヴァネッサさんとギルバートは御者台で、わたしとセラフィナは幌の中の長椅子に腰掛けて食べた。

「美味しい!」

 ぱくりと一口食べて、わたしは思わず声を出してしまった。

「おおっ!」

 セラフィナも同じように、ちょっと驚いている。

「でしょ! あそこの店の肉団子は相変わらず絶品なんだから」

 御者台から振り返ってわたしたちに自慢げに話してくれた。

「温かいものがいつでも食べられるわけじゃないから、今日は存分に味わって食べてね」

 ヴァネッサの隣では、ギルバートが器用に片手で手綱を握ったまま肉団子入りの白パンをほおばっている。

 がたがたと揺れる馬車の中で、何かを食べるなんてセラフィナにとっては初めてなのだろう。口元がソースでべとべとになっている。

 いつもは上品にフォークとナイフを使って食事をしているのに、紙に包まれた大きな白パンと格闘しているところが、なんともほほえましかった。

「セラフィナ、これで口元拭いて」

「ああ、すまぬ……」

 わたしがハンカチを渡すと、これまた優雅なしぐさで口元をぬぐった。

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