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第四章 ep1

「セラフィナ、冬休み、寮に残るって本当?」

「そのつもりだが。それがどうかしたのか」

 前期試験を無事クリアして、初めての長期休暇に入る。王国中から集められた候補生たちは、みんなこの休暇を楽しみにしていた。

 まだ十三歳から十五歳だ。はじめて家を出たという生徒がほとんどで、家族の顔が恋しくなるころだから。

 昨日までで前期のカリキュラムは終了し、朝から迎えの馬車に乗り込む同級生の姿もちらほらみかけた。

 そして、前期試験で力を発揮できずに、王立魔法音楽院を去ることが決まった生徒も数人いた。

 わたしもセラフィナがいなければ、あの中のひとりになっていたかもしれない。

「わたしは、もう王宮の自分の部屋を引き払ったからな」

 セラフィナは王女ではあるけれど、王立魔法音楽院に入学するときに、王族の身分を返上したと言っていた。

「だから帰る場所はないのだ。そういうミーリャは? 帰り支度はしていないようだが」

「ああ、わたしもなの。公爵邸のお部屋は片づけてきちゃった」

「詩長がそうせよと言ったのか?」

「まさか! ジーク様がそんなこと仰るわけないじゃない。ただ、わたしが、きちんとけじめをつけなきゃって思っただけよ」

 父さんを亡くして、その場で呆然としていたわたしを引き取ってはくれたけれど、それに甘えるばかりじゃいけないのだ。入学というのは、わたしにとって独り立ちするのにとてもいい機会だと思っている。

 とはいえ、王立魔法音楽院に寮があり、王立ということですべての衣食住が無償だからこそ、こんなに悠長にしていられるのだ。

 もし、入試に失敗していたら、吟遊詩人として独り立ちできていただろうか。少なくとも寒い冬に向かう季節に旅に出ようとは思わなかっただろう。そのくらい、吟遊詩人の暮らしは甘くはない。

「じゃあ、わたしたち一緒に寮に残れるね! ひとりじゃないの、ちょっと安心した」

「実はわたしもだ」

 セラフィナとわたしは、顔を見合わせてほほ笑んだ。

 その後、ふたりで寮監の先生のところに、冬期休暇の間も寮で暮らすための届をだした。そこで困ったことになったのだ。

「まさかの展開だが、当然だともいえるな」

「そうよね、寮監の先生やお世話してくれている通いの人たちだって、新年のお休みは欲しいもの」

 冬休みのうち、年末・年始にあたる十日間は、食事を含め、すべての世話をしている人も休みになってしまう。寮に残ること自体は問題はないのだが、その期間中はすべて自活をしなくてはならないというのだ。

 王女だったセラフィナはもちろん、公爵邸の地下室に引きこもって暮らしていたわたしたちは、料理はもとより、まったく家事ができなかった。

「料理を作ってくれる魔詩ってないのかな」

「洗濯と掃除もだな」

 ため息とつきながら、とぼとぼと廊下を歩く。

 年末年始だけでも、公爵邸にいられるように連絡したほうがよいのだろうか。そう考えていたとき、目の前を人影がよぎった。

「あら、あなたたち。帰らなかったの?」

「ヴァネッサさん?」

 そういうヴァネッサさんも旅支度をしているようには見えなかった。

「ヴァネッサさんも帰省されなかったんですか?」

「するにはするんだけど、少しずらす予定なの。良かったら、わたしの部屋においでなさいな。お茶くらいごちそうするわよ」

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