第二章 ep6
入寮日の翌日、わたしは真新しい制服に袖を通した。
黒いローブは魔詩師の正装のローブと似ているが、候補生にあたるわたしたちは膝上までの短いもの。袖は楽器を扱うときに邪魔にならないよう手首が見える長さ。
ローブの中の白いブラウスの首元には学年を現すリボン。わたしたちの学年はワインレッドだ。この色は卒業するまで変わらない。前年度の卒業生の色が、新入生の色となる。男子生徒は細身のリボンで、女子生徒は幅広のリボンをゆったりと結ぶ。
これまで、伸ばしっぱなしで適当にまとめていた黒い髪は、きちんと編み込んで、頭の後ろで一つにまとめた。これは入学が決まった時、公爵邸のメイドのリリアさんに特訓してもらった。最初のうちは腕が吊りそうだったけれど、練習の成果もあって、今日はそこそこ綺麗にまとめることができた。小さい頃は、父さんのきらきらした金の髪と違っていたことがとても悲しかったけれど、この黒い髪は、血のつながらないジーク様との数少ない共通点なので、今は自分でも気に入っている。
そして、隣にいるセラフィナも身支度をしていた。
王女様なのに、誰の手も借りず着替えを済ませていることに少し驚いた。少し髪を結うのにはてこずっているようだけれど、それでも自分でなんとかしようと奮闘していた。ふわふわの金の髪が揺れている。
「……セラフィナ」
「今、手が離せんのだ、後にしてくれ」
「えっと、そのことなんですが、お手伝いしましょうか?」
「その言葉使いはよせ、それから手伝いはいらん」
「でも、入学式に遅れますよ」
「だから……その丁寧な言い方はやめよ、ええい、もういい!」
苛々とそう言い放つと、セラフィナは手にしていた髪紐を投げ出した。
「セラフィナ、手伝おうか?」
「王立魔法音楽院に入学したのだから、王女気分ではダメなのだ」
「ルームメイトに髪を結ってもらうのは、割と普通のことだと思うけど」
「そうなのか?」
実のところ、わたしも学校生活の経験は皆無なのだけれど、さすがに初日から遅刻は避けたいし、何よりも、ちょっと悲しそうなセラフィナをそのままにしておけなかった。
「髪紐借りるね、昨日と同じでいい?」
ふんわりと横の髪だけを編んで、後ろで結ぶシンプルなまとめ方だ。きっと自分でもできるように教わっていたのだろう。でも見えない自分の頭の後ろで髪紐を結ぶのにはコツがいる。わたしだって特訓しなければできなかった。セラフィナもこれから毎朝やっているうちに、きっと自分でできるようになる。今日だけは、ルームメイトのわたしがお手伝い。
セラフィナの机に置いてあった、レース仕立てのワインレッドのリボンを最後に結ぶ。制服のリボンと色が合わせてあって華やかで、淡い金の髪にとてもよく映える。
「はい、できあがり!」
「あの、その……ありがとう」
「どういたしまして。急がないと遅れるよ」
わたしたちは、お互いの楽器を手に部屋を飛び出した。
面白いと思ったら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援お願いします!
これからも、毎日更新の励みになります!
よろしくお願いいたします




