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008集まる生存者4

「花火大会の正体は、生徒会長の魔法だったのか」



 放たれた燃え盛る火球が遠くで固まるホブゴブリン達を襲った。

 音に釣られて来ても戦う為に前へ出ない者達は、こうして定期的に燃やされる。怯えた群れは絶好の的……前に出た方がマシなのだと生き残った者達は思う。

 そうして空いたスペースに、新しく誘き寄せられた獲物が入る。


(システム化された地獄だ───)


 ゲームをリアルにすると怖いなぁ~と頷く秋里涼真。


「いいなー、やっぱ魔法あるんだ……」

「喜世川さんも光弾を飛ばしてなかった?」

「うちの〈聖女〉スキル、ホントは魔法じゃなくって祈りなの。【破邪の祈り】」

「火の玉も光る玉も、あんま変わらねぇだろ?」


 魔法を使う生徒会長のインパクトに三人は気を取られていた。

 そのせいで背後から来る爆発音に釣られたホブゴブリンに気が付いていない。

 兎洞雄之助に反論しようと振り向いた喜世川有栖が、驚いて声を出す。


「ひっ‼ めっちゃ来てるじゃん!」


 慌てる彼女の反応で、他の二人も敵の群れに気が付いた。

 入口付近で騒ぐ三人は生徒会長から丸見えだ。


「むっ⁉ そこに居るのは本校の生徒なのか?」

「いやあああああ!」


 押し寄せるホブゴブリンの圧で喜世川有栖は逃げ出した。

 魔法の爆撃で部屋の中は敵が減った状態とはいえホブゴブリンはまだ大勢居る。怯えた様子で迷い込んで来た人間は、ポニーテールの人間よりも簡単に狩れそうだと本能で直感するホブゴブリン達。

 秋里涼真と兎洞雄之助が、一人で飛び出した喜世川有栖を守るべく走る。


「戻れ喜世川! 後ろの二人と力を合わせて互いをフォローするのだ!」


 生徒会長が叫んでも、動揺したチア部キャプテンの耳には届かない。

 男達は必死で走ったが救助対象はジグザグに移動してどんどん遠ざかっていく。喜世川有栖に押し寄せたホブゴブリンも、その全てがスピードに振り切られた。

 悲鳴を上げて逃げる女の子に、誰も追いつけないのである。


「ほう……速いではないか、喜世川!」


 ホブゴブリンをしばきながら生徒会長は感心した。



「ちょ、待って……あ、指輪か!」

「おま、渡したまんまか?」


 遠距離攻撃の出来る銃で最低限のフォローをしながら追いかける。

 悲鳴が響く中、魔法の音に釣られた敵は増える一方だ。膠着状態は続くかに思われたが、喜世川有栖のスピードが段々と落ちていく───

 そして足が止まるとペタンと床に座り込んだ。


「あれ? なんで、うち疲れてないのに⁉」


 運動量の多い部活で鍛えているのでバテるはずがなかった。

 しかし現に立ち上がれない、絶体絶命の危機に走り続けた男達が到着する。


「勝手に飛び出すんじゃねぇ!」

「や、やっと追いついた……」


 二人を見上げた喜世川有栖は、安堵(あんど)から無意識に言葉が(あふ)れ出す。


「た、助けて───」

「「任せろ!」」


 兎洞雄之助が先頭に立った。

 荒れた日常の経験が、人を守る為に生かせるのは悪くない気分だ。無敗の暴力は、妙な力を得た事で更に磨きがかかり、人間とは違うが命のやり取りも経験した今、何かを掴めた感覚がある。

 それを確かめるようにホブゴブリンをぶっ飛ばしていく。


「凄いな、一人でどうにかしちゃえそうだ。指輪をこっちへ」

「へ? あ、うん」


 ありがと、そう言って返還された指輪に温もりを感じた気がした。

 装着した指輪に秋里涼真が魔力を注ぎながら二丁拳銃で駆け、ベストポジションから銃撃を繰り返す。個人プレーでやって来たようなものだが、余りの敵の多さに効率化も考えざるを得ない。


(個人の無双はどこか平面的だ、立体的な連係プレーの方が殲滅速度(せんめつそくど)は上か?)


 銃の利点は遠距離攻撃!

 もう少し言えば、遠くから狙った場所を凄い速度で攻撃する能力。

 つまり……遠くから他人の戦闘に干渉が出来る。


「今から俺が銃でフォローやってみます!」


 兎洞雄之助と城ヶ崎一夏の戦いに介入する秋里涼真。


「うおっ⁉ おう、助かる」

「さっきから聞こえていたのは銃声か……」


 秋里涼真は、自分の戦闘としてヘッドショットを撃ちまくりつつ、仲間と戦闘中の敵を邪魔───グロック17の銃撃で攻撃を妨害、意識の外から撃たれる恐怖と、負傷による無力化を試す。


「秋里君、凄い……」


 異常なスピードで走り回る砲台の出現だ。

 取り囲んでも倒せない相手と戦うホブゴブリン達に、彗星の如く現れた理不尽が猛威を振るう。感情があると既に知っている秋里涼真は、自分がされたら嫌な行為でコミュニケーションをした。


「例え化け物でも、言葉が通じなくても、俺達は分かり合える」


 秋里涼真は少し感動した。

 取っ掛かりさえあれば、どんな存在とも人は通じ合えるのかもしれない。

 ホブゴブリン達は殺すけど……この学びは頭の片隅に覚えておこう。


「秋里君、怖い……」


 三人がドン引きする中、敵の数は驚くほどの早さで減っていった。


「さあ、これでとどめだカッパども!【ファイヤーボール】」

「「「カッパ⁉」」」


 燃え盛る火球が残った敵に襲い掛かる。

 ハリウッド映画のRPG-7みたいに壮大な爆発を引き起こして殲滅(せんめつ)完了!


「カッパじゃなくてホブゴブリンですよ」







「これが宝石だったら、うちらは大金持ちなのに……」

「もう立っても平気か? ほらよ、こっちはこれで最後だ」

「うん、もう大丈夫!」

「無理はするな。まだ座っていてもいいのだぞ?」


 全員生存して戦闘も終わり、今は魔石集めの最中。

 積もる話はその後でも十分にやれる。生徒会長に色々と説明をして部屋中の魔石を集めると凄い量になった、だが生徒会長によれば戦闘を続けていた割に戦利品が少ないようだ。もしかしたら時間経過で床に落ちた物は消えるのかもしれない。

 三人の元へ遠くから秋里涼真が走って来る。


「これで最後。壮観だよ、この魔石の量は」

「秋里君よく走り続けられるね……疲れる感じとかないん?」

「ん~、ないよ?」


 意味もなくグルグルと走り回って元気にアピールする。


「……その指輪の力で早く走れるのだったな?」


 試したそうなので指輪を貸す秋里涼真。

 済まぬ、と受け取って指に装着した生徒会長は気付いた。


(体内の魔力が指輪へと流れている?)


「間近で見ると良い細工だな。自己紹介を先にしよう、私は城ヶ崎一夏(じょうがさきいちか)、学校では生徒会長をしている。ジョブは〈狩人〉と〈魔法使い〉だ」


 試してくる、と言って走り出した。

 残った三人は会話しながら銃に魔石を喰わせていく。



「これはいいな」


 魔力に対して幅広く関連されたジョブが〈魔法使い〉である。

 城ヶ崎一夏は魔力の流れを目で観察して試した。高度な補助の仕組みは、脚力を上げると指輪に流れる魔力量を自動で上昇させる仕様だ。

 では、意図的に魔力の流れを操作すれば───


「くっ、ここまで消耗が酷いとは⁉……」

「秋里君みたいな速さで走ってる!」

「「おお~」」


 指輪に流れる魔力を減らしてUターン、スピードを徐々に落として帰還した。

 ジョブのおかげで魔力の流れが分かると前置きして城ヶ崎一夏が解説する。


「この指輪は、魔力を消費して移動スピードを上昇させるようだ。装着者の走るペースに対して自動でアシストを強弱させる性質があり、魔力の保有量が少ない者にとっては負担が大き過ぎるだろう……私でさえだ」

「秋里君って、魔法使わないのにどんだけ魔力あんの?」

「いや、そう言われても」

「俺は魔力が少ねぇのか……」


 困惑する秋里涼真の元に指輪が戻ってきた。

 靴を履かずに凄い速度で走った生徒会長は、足の裏がとても痛かった。

 せっかくなので四人一度に回復する喜世川有栖。


「もう痛くない……便利だな。それではこれからの事だが───」

「俺、いいですか? 今度は何時になれば向こうで目を覚ますのかなって」


 空腹感覚的に、もうそろそろのはず。と付け加えた。

 色々あり過ぎて忘れていたが、今すぐ起こるかもしれない重要な問題だ。

 記憶を持ったまま向こうで目覚める秋里涼真は重要な存在である。


「うちは……次起きたら多分、学校へ行くから説得頑張って」


 話についていけない城ヶ崎一夏と兎洞雄之助。

 秋里涼真は、辛そうな本人に代わり説明した。


「そんな状況で目が覚めたのかよ⁉」

「着てた服は乱れて返り血まで付いるし、床には血まみれの棒が転がってんの! 叫んじゃって……パパとママが警察とか学校の対応してくれてさ。部屋から宝石に似たのも発見されて騒ぎになった。こっちの記憶無いし、あっちじゃ今、すっごい疑心暗鬼で過ごしてて───表には出してないけどね」

「辛かったのだな、喜世川……」


 残り時間を使い、全員で打ち合わせしていく。

 あちら側で秋里涼真がやれる事は多い。


「む、無理ゲー染みてる」

「お願い!」

「てめぇにしか無理なんだ、覚悟決めろ」

「この四人の運命は全てお前に()かっている、頼んだぞ!」


 秋里涼真はプレッシャーで潰れそうだ。


「この借りた剣も預かっといて、うちが持ってると警察に没収されちゃうし」

「分かった、こっちで預かっとく。それでみんな───」



 向こう側で目覚めるのは、この十数分後。

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