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007集まる生存者3

「まだ〈戦乙女〉のスキルは一個も無いよ?」



 お互いに出来る事の確認をしていった。

 今の三人は〈聖女〉の浄化スキルでリラックスした爽快な状態。


「ちゃんと剣も扱えるから、こんな感じで───」


 兎洞雄之助の質問に対して、喜世川有栖はやって見せていく。

 そして今度は秋里涼真の番となる。


「俺のジョブは〈ガンナー〉が一つだけ。前のダンジョン攻略後の選択で新しい力を選ばなかったのは、このジョブが十分に強かったのも大きな理由だね」


 どこからともなくグロック17を取り出して握る。


「ずっと気になってたんだが、それ手品か何かか?」

「俺のジョブは銃を呼び出せるんだ」

「安心したぜ。銃を持ったゴブリンは居ないんだな」

「怖っ。想像しちゃったじゃん……居ないからいいけど」


 二丁拳銃のスタイルになって構えた。


「グロック17以外の銃は、レベルを上げて新しく呼び出せるようになった。だから何でもかんでも銃を呼び出せる訳じゃないのと、喜世川さんに出会ってから知った特性があって、銃を他人に渡して使わせたり出来ないんだ」


 兎洞雄之助にMk23を差し出したが、やはり銃を触れない。


「うお、マジか……」

「ヤバいよね。あ~あ、一回撃ってみたかった~」

「日本の外でなら撃てる場所も一応あるから。俺はアメリカに住んでた時に左手で撃っても満足に当てられるように練習で撃ちまくった」

「お前……ジョブは関係なく当てれンのかよ⁉」


 兎洞雄之助は、銃の適正がジョブに内包されていると考えていた。


「うちも初めて聞いた時にビビった」

「一応スキルに【エイム補助】を持ってるけど、効果が分からない。スキルである以上は、発動する感触があるはずだし……魔石で銃を強化するスキルみたいにね」


 字面(じづら)が強過ぎるので【無限強化】のスキル名は濁しておく。

 集めた魔石の山から人差し指と親指で一つ取ると、銃に押し付けた。

 沈み込んで行く魔石を二人は不思議そうに見ている。


「うちもやる! これ楽しいし」


 経験者の喜世川有栖は、手慣れた手つきで魔石を銃に押し付けていく。


「変わった感触だな……他人でもやれるなら、魔石を使えば銃を撃てないか?」

「魔石で銃の引き金を引くのは無理だった、この現象は魔石側で起きてるっぽい。それと、銃はちゃんと握って撃たないと危ないから実験が成功してても貸さない」


 当初の銃を生存者に持たせる発想は、散々試して頓挫している。


「うちらが色々やって無理だったし、兎洞君も諦めなって」

「一回くらい撃ってみたいだろ?」

「日本の外でなら───」


 三人は雑談しながら銃に魔石を喰わせていく。







「どんどん生き残ってる人と合流するぞー!」

「走って足の裏が痛くなっても、喜世川さんが居れば安心だね」


 ハチドリが飛ぶように、走るスピードを自由気ままに変化させる秋里涼真。


「お前やたら機敏に動けるな、陸上部か?」

「帰宅部だよ。生活が大変なんだ」

「……バイトでもしてんの?」

「両親は海外で共働きしてエグく稼いでる。だから月のお小遣いは黙秘するけど、一人暮らしで炊事や洗濯に買い物とホブゴブリン!」


 曲がり角から現れた途端に、ヘッドショットで消滅する。


「怖い、怖いから秋里君」

「また犠牲者が出るかもと思うとさ……」


 秋里涼真は魔石を拾いに走り、安全も確認。


「はぐれ個体だった。他には居ないみたい」

「兎洞君、秋里君って異常なスピードしてね?」

「だろ? スキルの説明の時にも出なかった。おーい、速さは秘密なのかぁー?」

「指輪の事かな? 身に付けると速く走れるようになるんだよ。行き止まり……」


 爆速で引き返して来た。


「前の分かれ道まで戻ろう。指輪は道のド真ん中にあった宝箱から手に入れた」


 宝箱と聞いた二人が目に見えて反応する。


「マジ? あんの?」

「見た覚えはねぇぞ」

「俺は全ての通路を探索したから、ポーションの入ってる宝箱も見つけたよ」


 兎洞雄之助が借りたいと言うので、渡そうとすると指輪が抜けない。

 急に指輪が外せなくなって焦る秋里涼真を、訝しげに二人が眺めるも無事に指輪は渡された。三人はペースを合わせて走っているので問題は起きないはずだった。

 十分もせずに指輪の力で遊んでいた兎洞雄之助がバテてたのだ───


「この指輪、呪われてねーか?」

「なんでさ⁉」


 秋里涼真は指輪を引ったくり二丁拳銃スタイルで全力疾走。

 あっという間に見えなくなると、遠くから銃声がダンジョンに木霊(こだま)する。

 フル稼働させた指輪の恩恵は誰が見ても別物と言えた。


 めくったジャージの上着に魔石を溜め込んで、一分もせずに舞い戻る。


「兎洞君が下手くそだから悪い。指輪は何も悪くない。さあ、指輪に謝って」


 そよ風が優しく持ち主にまとわりつく。


「へ、下手くそだァ?」

「次は~……うちの番!」


 何とも言えない表情で兎洞雄之助が指輪に謝る中、喜世川有栖が指輪を装着。


「イエーイ! 超早い!」

「兎洞君よりスピード出てるね」

「マジか……」



 三人でするダンジョンの探索は賑やかだった。

 単独でダンジョンボスを討伐した者達である。それがパーティーを組んでいるのだから、この階層に敵は居ない。兎洞雄之助の乱闘性能と秋里涼真による無慈悲な銃撃の前では、ホブゴブリンが集団で現れようと瞬殺だ。

 二人が速攻で片付けるので、その間は単独チアリーディングする喜世川有栖。


「Let’s Go Kings Go Fight Win‼」


 指輪で加速しながらアドリブの即興パフォーマンス。

 芋ジャージ姿でも視線を惹きつける存在感が彼女にはあった。

 チア部キャプテンは伊達じゃない。


「応援されるっていいね。いつまでも見てられる」

「……お前は戦わねぇのか?」

「だって、二人がすぐに倒しちゃうじゃん?」


 その時、遠くの方で爆発音がした。

 かなり大きな爆発のようだが、隣町の花火大会のように微かな音量で聴こえる。

 三人が同時に反応した以上は錯覚の類ではない。


「な、何も聞こえなかったっしょ?」

「聞こえてんじゃねーか……」


 秋里涼真が真剣な表情で耳を澄ませている。


「俺が一人で様子を見て来ようか? 指輪があればサッと見つける事も可能だし、危なくても逃げ切れると思うんだ」

「却下だ却下。三人だから余裕があるんだぞ、喜世川がビクビクしてンだろ?」

「してないから!」


 していた。

 随分マシになって今は虚勢を張れているが、どこか無理をしている。

 優先順位を間違えてはならない。


「ごめん、やっぱり三人で行こう」







「うわっ、今の爆発音でっか! これもう近くない?」


 あれからホブゴブリンと遭遇していない。

 どうやら音のする方に移動したらしく、爆発は戦闘による音なのではないか? という仮説に基づいて三人は急ぎ現場に向かっていた。パーティを組んだ戦闘ではサプレッサー付きのMk23に45ACP弾の組み合わせだけ使う判断は正しかった。

 では、指輪の呪いを無実と証明した単独戦闘で、サッと帰れた訳は───


「そこそこ広いぞ、この部屋」

「めっちゃ居るじゃん、ホブゴブリン」


 既に周辺の敵がこのフロアに大移動していたからだ。



「さあ来い、次ッ!」



 事態を把握しようと中を覗いていた三人は意外な人物を発見する。


「あれは、もしかして生徒会長?」

「「は?」」


 黒髪のポニーテールが、ホブゴブリンを酷い目に遭わせる度に揺れている。

 芋ジャージを着ているが実に綺麗だ、戦闘による破損が無い。関節技や投げ技でホブゴブリンを蹂躙しながら、武器を奪っては周りの敵を切って捨てた。

 明確に格が違う───


「あんな強かったのか、あの女。いや……ジョブの力か?」

「そう言えば聞いた事がある……」

「何か知ってんの? 秋里君」


 兎洞雄之助の時は、喜世川有栖と一緒に居たので助けに入るのを躊躇した。

 だが、目の前の戦いに助けの必要性は感じない。無双している生徒会長が上機嫌な表情でホブゴブリンをしばきまわす姿を見て、秋里涼真はある事を思い出す。

 卵一パック百円のタイムセールを公園のベンチで待つ時に聞いた会話だ。


「女生徒が絡まれてたら、通りすがりの生徒会長がカッコ良く助けたみたい。で、口止めされてるから秘密だよってキャーキャー言ってた」

「盗み聞きじゃん⁉ え、でもそんな噂は知らないけど……」


(一時、他校で包帯だらけな奴が数人居たが……)


 兎洞雄之助は、近隣のヤンキー界隈で謎とされた一件の真相に辿り着く。

 助けられた女生徒と友人、ボコられた者、皆が話を広める行動を取らなかった。秋里涼真も美徳に敬服はしたが、タイムセールの頃には忘却の彼方。

 故に、強さを知る者は殆ど居ない。


 小声で話す三人をよそに、生徒会長が声を上げた。



「そろそろ魔力も回復してきたな、これでもくらえ!【ファイヤーボール】」

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