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036異世界の大地に降り立つ4

「ようやく試せる。爆発する矢など日本では法に触れるからな!」



 弓のフォームは流派が多様、巨乳に優しい撃ち方で戦う城ヶ崎一夏。

 ただ矢を()るよりも【精神統一】と合わせた【魔法付与】は威力が別物である。弓の精度(せいど)()ね上がって必殺の一撃だ。

 コンパウンドボウで放った矢がホブゴブリンを爆殺‼


「すっご! 秋里君の銃より火力あるんじゃね?」


 ギルドマスターの部屋から退室した四人は、講習を受けて登録完了。

 早速ゴブリン種討伐(とうばつ)や薬草採取(さいしゅ)常設(じょうせつ)依頼を受けて、再び森へやって来た。

 なお、ドローンは混乱の元なので使わない。


 死体を埋めるスコップも受付で借りていたが───


「片耳と魔石だけ綺麗(きれい)に落ちてる……」

「爆発でバラバラとかにしちゃ変だな。血や肉片も無ねぇぞ?」


 秋里涼真の右腕の奥が熱くなった。

 ダンジョンコアがアピールしてくる。


「お前が手伝ってくれたから? それでか、ありがとうな」

「ダンジョンで倒した時と似てるけど、何かやってくれたん?」



【ホブゴブリンのドロップ品:討伐(とうばつ)部位と魔石以外は処理済み。穴掘り不要だよ】



「ダンジョンコアが必要なの以外を処理してくれたって鑑定で出た」

「状況を認識して自らの意思で手伝ったのか?……感謝する」


 代わる代わるダンジョンコアに言葉を述べた四人。

 例え会話が出来なくとも気持ちは伝わる。彼女は五人目のパーティーメンバーになったのだ。

 それからの五人は、ゴブリンを探して狩りまくった。







 ダンジョンコアの作った袋にドロップ品がギッシリと入った頃。


「何でゴブリンって絶滅(ぜつめつ)しないんだろ?」

「今日は休業だーって他の冒険者は騒いでたし、うちらだけじゃ無理っしょ!」

「?……」

「どうした兎洞、む⁉」


 遠くから接近する存在に二人が気付く。

 走る複数の人、そしてその向こうには───



「デカい‼ ヤバい奴がこっち来てンぞ!」



 城ヶ崎一夏は【精神統一】で〈狩人〉の索敵能力を上げ【ファイヤーボール】を待機させた。

 高密度な魔力が甲高(かんだか)い音を(あた)りに(ひび)かせる。


「うわあああああああああ、助けてぇええええ!!!!!」


 (しげ)みを()き分けて目の前に若者が現れた。

 次々と飛び出す若者達は涙と恐怖で顔がグチャグチャだ。

 人に出会って気が抜けたのか、へたり込んでしまう。



「何が出ても、うちらは勝つぞぉー!」



 喜世川有栖の声掛(こえが)けで【闘争鼓舞】のバフが四人を(つつ)む。

 瞬間(しゅんかん)、木々を左右に押し倒してデカい魔物が頭だけを(あらわ)す。


『町の周囲に居るのはゴブリン種とボアです。森の中層(ちゅうそう)からは種類も増えますが、ギルドとしては侵入禁止。中層より奥は大型の蛇が生息する危険領域でして、(えさ)を探して(たま)に来ちゃってるんで出会ったら必ず逃げて下さい。移動速度は遅いので』


「ここまでデカいのかよ……大型の蛇」

「軽自動車級じゃん、こんなん無理っしょ⁉」


 爬虫類(はちゅうるい)を見て一瞬怯んだ(蛇は苦手)城ヶ崎一夏が待機させた高威力化【ファイヤーボール】を放った。甲高い音を立てながら飛翔(ひしょう)する大きな火の玉が、軽自動車サイズの蛇の顔に直撃すると、周囲の木も巻き込んで大爆発!


「やったか⁉」

「生徒会長それ言っちゃ駄目です」


 煙の中から巨大な蛇の顔がヌルっと()い出る。

 女性の下半身サイズの舌をチロチロ出して獲物を探る蛇。

 体は汚れどころか傷一つ付いていなかった。


「無傷だと?」


 ダンジョンボスのオーガに大ダメージを与えた一撃を受けても平然とする姿に、四人は開いた口が塞がらない。逃げて来た若者達が肩を寄せ合い(ふる)えている。



「ここは俺達に任せて退却してくれ。こっちも君達を守りながらは危険だからさ」

「「「「「わ、分かった」」」」」



 引け目を感じながらも、それが最善手だと若者達は退却(たいきゃく)を開始。


(これで手の内を隠せる。ショットガンなら殺すチャンスもあるはずだ)


「ゴブリンとボアだけで良かったのにな……生存競争なら仕方ない」



 横合いから兎洞雄之助が渾身の一撃で殴った‼

 ノックバックで蛇の巨体が地を(すべ)る。


「チッ、今まで生きてきて一番のパンチだぜ?」



 直ちにその場を離脱。

 鎌首(かまくび)(もた)げた蛇が遅れて大地を頭で()ぎ払うと、周囲は滅茶苦茶の大惨事(だいさんじ)


「助かったぞ喜世川。この光の盾(【守護の祈り】)が無ければ危なかった」

「どんなインチキだ魔法も物理も効かねぇぞ!」

「単純に耐性があって丈夫(じょうぶ)とか? そりゃ必ず逃げろってなるね」


 三人の言葉に耳を傾けながら喜世川有栖は考える。


(うちも光弾を飛ばしたい……【破邪の祈り】を試さなきゃ───)


 魔力をゴッソリ消費して光弾が飛び、慢心(まんしん)した蛇に直撃!

 ダメージを受けたのか絶叫(ぜっきょう)している。


「いえーい!」

「マジか……」


 蛇は激怒して丸飲みにしようと突っ込んだが、光の盾が大き過ぎた。

 飲み込めないし、()き出せない。



「いーやぁ~~!!!」



 腰を抜かした喜世川有栖が首をブンブン振っている。

 今がその時だ! 秋里涼真は未だ無傷の蛇に駆け上り、ショットガンを蛇の頭に突き入れると(【施条拳】)撃ちまくった。

 蛇が消えて四人の心臓が強く鼓動(こどう)する。



 喜世川有栖が<戦乙女>のパッシブスキル【ヴァルキリーガーブ】を覚えた。

 ダメージを25%軽減。状態異常は50%で無効化して症状も大幅の軽減する。


 兎洞雄之助も<格闘家>【素早さ強化:小】を覚える。

 神経伝達の上昇という意味での素早さ強化だ。



「倒せたのか。む……そこの木の上から覗く貴様を、テイムする!」

「ニャッ⁉」


 城ヶ崎一夏が覚えた【使い魔[狩人]】を早速(さっそく)使う。

 呼ぶと足元にやって来た。小さな動物を従わせ使役する新スキルの力だ。

 イタチ科のテンそっくりな謎生物を秋里涼真が鑑定する。


「草食で木の実が好き、臆病(おくびょう)で気配が消せる珍しい生き物。名称(めいしょう)の無い種類?」



 魔物のせいで流通が発達しないこの世界、生き物は発見されも名称が無い場合がある。水辺に居る丸い奴など、地域で通じればそれで終わりだ。ゴブリンのように広範囲で目撃される魔物なら自然と名称も付いて共有されていく。



「くっ、これは可愛いな」


 呼吸が(あら)い城ヶ崎一夏。


『ちか姉ちゃん!』

『ちか姉ちゃん、えへへ』

『わーい、ちか姉ちゃ~ん!』


「ウウウーッ!」

「生徒会長⁉」


 可愛い(おい)っ子と引き離された過去を持つ城ヶ崎一夏は、可愛い存在に弱かった。

 エッチな小説にハマったのも、その反動なのかもしれない───


「落ちてるじゃん、宝箱‼ 蛇を倒したから?」


 宝箱と聞いて復活した城ヶ崎一夏が【鍵開けの指輪】を使い罠を解除。

 中には、同じ指輪が四つ並んでいる。



【暴君の蛇革鎧の指輪:倒したデスポティック・サーペント(幼)が素材。左手に指輪を()めたら装着状態に。指輪を外す時は注意してね】



「───だそうです。蛇の物理と魔法の耐性を持った鎧で、リキッドアーマーより性能が上。自己修復機能付き(メンテナンスフリー)

「あの蛇が子供なん⁉」

「指輪ではないのか?」


 試しに秋里涼真が指輪を左手に嵌めると、バイク用プロテクターっぽいデザインの蛇革鎧を装着していた。

 リキッドアーマーが足元に脱げ落ちている。


「バイクのやつじゃねーか⁉」


 指輪を外せばシャツとパンツだけになった。

 手で顔を(おお)った喜世川有栖が、指の間からチラチラ見ている。


「荷物が増えるだけだしリキッドアーマーでいいや」


 足元の鎧を再び着た秋里涼真は、指輪を右手に装着。

 その後、ボアを狩って昼食休憩を取ると、薬草や山の恵を採取(さいしゅ)しながらギルドへ帰って来た。


「何かザワついてる……親切なオッサン、これどういう状況?」

「おう、お前ら無事だったか!」


 帰るとギルドマスターの部屋へ行く事に。

 既に帰還したパーティから説明がされて、聞き終わったのは少し前だそうだ。

 その衰弱(すいじゃく)が激しかった若者達は現在ベッドで安静中。


 眼光鋭(がんこうするど)いギルドマスターからの質問に、四人は口裏を合わせて受け流す。


「───という訳で、力を合わせて俺達は蛇から逃げ切りました」

「……本当じゃろうな?」



 ゴブリンの片耳と薬草の袋の山は、予め受付に提出(話が長そうだし)しておいた。

 魔石は納品を拒否(銃に喰わせるから)


 使い魔の登録も申請(しんせい)だけしてある。

 この使い魔はとても臆病で、現在はカバンの中で丸くなってビクビクしている。気配が消せるのも臆病が長所に転じた結果だろう。







「やっと解放されたぜ」

「下の中にランクアップ、おめでとうございます」


 素敵な(ひび)きに達成感を感じる四人。


(ん? 何だろう、この(びん)


 お高そうな瓶が受付に置いてある。

 話を聞くと常備義務のある薬品で、蛇と聞いて出してたらしい。そろそろ期限が切れそうで新品との入れ替え時期が(せま)っていた。



「フフ、今だとポーション三個で交換してもいいですよ?」



 受付の冗談に秋里涼真の右手が反応する。


「その話、乗った!」


 転がる三つの瓶。

 言っといて自分でも驚く秋里涼真と受付。

 そして、受付と表情がリンクする三人の仲間達。


 交換したハイポーションを持ち帰った即日に騒動が起きるなんて、今の四人には想像も出来なかった。



(お前、ギリギリ限界まで頑張ればポーションも作れるの⁉)

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