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035異世界の大地に降り立つ3

「この(いそが)しい時に何の騒ぎじゃ?」



 受付の奥にあるドアが開く。

 白い髭を伸ばした上司っぽい雰囲気の筋肉ムキムキ(魔法使いっぽい服装で)な爺さんが現れた。

 その老人はドローンに気付いて驚愕(きょうがく)する。


「ワシのギルドが未知の魔物に侵略されておるじゃと⁉」


 過労気味の受付女性達は恐怖で動けずに悲鳴を上げるばかり。

 この騒ぎを聞き付け、確認に来た冒険者達が柱の陰から(のぞ)いてる。

 野次馬は増える一方だが誰も剣を抜かずにいた。


 半泣きの受付女性達を見守る冒険者が新たな性癖の扉を開いたようだ。



「これは未知の魔物じゃなくて、偵察用(ていさつよう)の道具で無害ですから。この通り」



 誤解(ごかい)を解こうと秋里涼真は必死だ。

 (たく)みなコントローラー(さば)きでドローンを(あやつ)り、制御下(せいぎょか)にあるとアピールする。

 理解した受付の女性達は涙を(ぬぐ)いキリッとした。少しジト目だ。



「……魔物ではないのならゴーレムかね?」

「「「ギルドマスター!」」」

「ほれ、大量発生の警戒解除を(たの)む」



 いつの間にか受付に来ている白い髭のお爺さん。

 ギルドマスターは、女性達にマジックアイテムで周辺の町へ連絡するように指示すると秋里涼真の取り調べを再開。三人が見守る中、質問に答え続けた秋里涼真は最後にドローンを売って欲しいと交渉を持ちかけられるが───



「これは借り物なので、売る気はありません」



 秋里涼真は拒否(きょひ)する。

 断られたギルドマスターはとても残念がった。これがあれば森への警戒は楽になったに違いない。

 こうして未知の魔物騒動は解決となり、周辺地域には平穏が戻った。


 覗いていた冒険者達も歓声を上げる。


「そこの四名は新人登録を希望だそうじゃ。手続きしてあげなさい」


 それだけ言って奥の部屋に戻るギルドマスター。

 秋里涼真は、登録手続きを体験したい喜世川有栖に後を任せた。


「ようこそ当ギルドへ。新人登録ですね、こちらの用紙へ記入をお願いします」


 名前と出身地にジョブやスキルを書く(らん)がある。

 立ち直った受付から説明を聞く喜世川有栖は【異世界言語[ダンジョンコア]】の力を借りて記入していく。出身地がニホンでも特に質問はされなかった。


(いよいよジョブの欄じゃん!)


 喜世川有栖はアレコレ(興味本位で)質問を繰り返すと、受付の女性が(たな)の分厚いジョブ辞典を取り出して調べながら対応する。この辞典はギルドの備品で、職員しか(さわ)れない。



「んで、うちは回復魔法が使えるんですけど───」



 女性で回復魔法が使えるのは〈聖女〉と〈修道女〉になる。

 辞典を片手に、受付の女性は説明していく。


「うわー、だから面倒なんですね〈聖女〉って、うち〈修道女〉で良かった!」

「宗教国家であるクレディット教国は常に<聖女>を探してますから。多忙(たぼう)な毎日だそうですよ、広告塔の役割も(にな)いますので」

「お(むか)えは〈戦乙女〉の方も来ちゃうし、これ二つともハズレじゃね?」

「良い暮らしに(あこが)れる女性に人気なんですよ? 滅多(めった)に持つ人が現れないですし、羨望(せんぼう)(まと)ですから」


 所持するジョブを(いつわ)った喜世川有栖を、三人は信じて見守る。

 ゴブリンに詳しかったりと喜世川有栖はこの手の事で心強い。黙ってやり取りを聞き続けた三人も色々と(さっ)した。ジョブによっては面倒事に巻き込まれるのだ。



(これを喜世川は予見が出来たのか……その危機意識は頼もしい限りだ)



 言葉巧みな喜世川有栖の質問で自分達のジョブの事も知る。


 聖女と戦乙女は、持っているのがバレると宗教国家が勧誘(かんゆう)に来るレアジョブ。

 狩人は、斥候(せっこう)と弓術士の特徴を持つどっちつかずな性能。肉の補給(ほきゅう)で町から重宝される珍しいジョブ。

 魔法使いは、魔法国家の中に魔法学校があって塔出身者(学校卒)と野良魔法使いでは別物らしい。

 格闘家は、パッシブスキル(各ステータス上昇)で生存率が高くジョブの人数も多い。大抵(たいてい)は剣などで武装したパワフルゴリラ(ギルドの賑やかし)

 求道者は、格闘家が真面目に鍛錬(たんれん)していれば自然と変化(クラスチェンジ)。スピードタイプなので変化直後は死亡率が高い。覚えた分の格闘家スキルは持越(もちこ)す。



 城ヶ崎一夏と兎洞雄之助は、ギルドに〈狩人〉と〈格闘家〉で登録。

 喜世川有栖も〈修道女〉にしていた。ジョブを二つ書かないのにも理由はある。



『二つ持ちの人───ですか?……例えば〈聖女〉だらけの町があったとしても、一人居るかどうかって確立だし。あ、それとダブルの人は単純にジョブが二つ分の強さなので、どこの国も戦力として欲しがります。冒険者で大成したい方なら隠すでしょうけどね~』



 残るは秋里涼真だけ。

 分厚いジョブ辞典は、分厚いだけあってジョブが網羅(もうら)されている。

 だが〈ガンナー〉は()っていない。


「がんなあ? ん~……無い、ですね。もしや、そちらの偵察(ていさつ)使いの方が?」


 喜世川有栖も秋里涼真の方を振り返る。

 困惑(こんわく)するドローン使いの青年と、ある答えが浮かんで(ふる)えだした受付の女性。


「ユニークジョブ……実在するんだ」

「俺のジョブってユニークで何か凄いとか、強いとか?」

「いえ、ユニークジョブは、その、人それぞれと言いますか……スキルも一貫性(いっかんせい)がないので分類が出来ないんです。おとぎ話でしか情報も残ってませんし」


 もう(のぞ)いていた冒険者達も居ない。知っているのは四人と受付だけだ。

 受付の女性が報告して、四人はギルドマスターが引っ込んだ部屋へと通される。

 入室したら、先程の老人が頭を(かか)えていた。


「お主、ユニークジョブなのは本当か?」

「俺にはよくわからないですけど……まあ、はい」



 四人は椅子(いす)に座りギルドマスターから話を聞かされる。

 彼らは戦闘に優れていたり、戦いに不向きだが便利なスキルで巨万の富を(きず)く者も居た。それだけならば凄い奴の一言で片付くが、彼等はそれだけで終わらない。だから御伽(おとぎ)話になって今も残るのだ───

 後世(こうせい)の人への注意勧告(ちゅういかんこく)として!



「強い力を持つからか、騒動(そうどう)を起こす。もうギルドランクの説明は受けたかの?」


 ギルトランクには、まず()()()の三枠がある。

 だが実質は()()だけ。この中と下にも上中下の三枠がある。つまりは六種類、アルファベットに直すとAからFまで。古い方のギルトランクも実は六種類である。

 上の上、上の中、上の下は、必要の無い余計なランクではないのか?


「最高ランクの我々が国の頂点に立つと言い出してな。大昔にユニークジョブ持ちによる革命で、国が乗っ取られたそうじゃ」

「アホじゃないですか」


 何とも言えない表情の三人と、思わず突っ込みを入れた秋里涼真。

 それを見たギルドマスターのお爺さんは、白い髭を撫でながら嬉しそうに笑う。


「そうじゃろう、そうじゃろう。当時は国と国とで戦争に明け暮れる戦乱の時代。にも関わらず、殺し合う周辺の国々が一致団結して数日で滅ぼした、そう記録に残っとる。力だけの者など(もろ)いもんじゃ……面白いのは、これがきっかけで戦乱の時代は終わった」

「何やってんだろ俺達って、冷静になれたんじゃないですかね?」

「───ふむ、そうじゃな……話を戻すがギルトランクが現在ものに変わったのは調子に乗らせない為の(いまし)めでしかない」



 中の上ランクは上澄(うわず)みの一握り。

 中ランクになれば一人前(ベテラン)だ、大体の冒険者が中の下で終わる。



「ワシ等が警戒(けいかい)する理由も分かってくれたじゃろ?」

「俺は平和を望みます。悲しみの無い(おだ)やかな平穏(へいおん)を求めます。弱者が強者に蹂躙(じゅうりん)されない、そんな……世の中であって欲しい!」


 (くも)りなき(まなこ)(いつわ)らずに言った。

 故にギルドマスターのマジックアイテムは、秋里涼真の言葉に反応しない。



(うそ)は言っとらんか、人格にも問題は特に無さそうじゃな。う~む)



「そう言えば、お主のユニークジョブは何が出来る?」

「俺のは戦闘向きです。今、手に出したこれはグロック17って名前の小さな(かたまり)を飛ばす武器です」

「んん? 持ち物を取り出したのではなく、それ自体がスキルなのか?」


 他人は触れられないなど、特性を一通り説明した。


「これがあったから俺は、ゴブリンと戦えたんです。ホブゴブリンとだってです」



 なお、ショットガンだけは見せない秋里涼真。

 それほど強くない〈ガンナー〉(ユニークジョブ)に安堵したのか、四人は退室を許可された。

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