034異世界の大地に降り立つ2
「秋里、本当に異世界の言葉の壁は解決が出来るのか?」
どんな方法か見当もつかない城ヶ崎一夏は懐疑的だ。
その疑問の答えは、秋里涼真が手に持つ小さな小瓶にある!
「この小さなポーションを飲めば、異世界言語スキルを得られるっぽくて」
「それをいつ手に入れた?……それに何故そう言い切れるのだ?」
城ヶ崎一夏が指摘する。
ダンジョン内で入手したポーションもだが、日本語でラベル表記されていない。どんな効果があるのか試しに使った経験でしか分からない。
それに見た事の無いポーションをいつの間に入手したのか───
「さっきですよ、ポーションも。凄い頭痛で立っていられなかった時にですけど、その後から目視で色んな情報が分かるようになって」
「それ鑑定スキルじゃん‼ うちを見て、どう?」
「ん~??? 936291って何の数字……口座番号?」
喜世川有栖が固まった。
「喜世川のスリーサイズなんじゃねえのか?」
「そんな、まさか───」
赤面した喜世川有栖が俯いていた。目も合わせてくれない。
兎洞雄之助の指摘は正解だった。F70のFカップになる。
「……ごめん、六桁表示だったから何なのか気付けなくて」
「鑑定とはどのように見えているのだ?」
「あ。……その人を見ると情報の羅列が展開されて、表示されるというか。ああ、選択して非表示にも出来るのか」
生徒会長はD75のDカップである。
「貴様ぁー、私のスリーサイズも知ったなッ⁉」
ご立腹の城ヶ崎一夏が顔を羞恥で赤くしながらキリッと睨む。
女の子二人からジト目で非難されるので、秋里涼真は全員の明らかになった情報を伝えて話題を変えた。
「うちのジョブとスキルの情報それで合ってるけど、情報ってそういう風なん?」
鑑定で得た自分達の情報はレベルがみんな同じで、十三。
後の表記はジョブとスキル、そして現在の強さはレベル×ジョブの上昇値だ。
ステータスの伸び方はジョブによって違うと説明する秋里涼真。
「STRだの数字だの、項目での詳細は無しか。まあ、大体はゲームと一緒だろ?」
レベルが高ければ強い!
所持するジョブによって身体能力やスキルに差が出来る。
「ジョブが二つならその分強くなれて有利か。話を戻すが秋里の持つポーションを飲めば門番と会話が可能になるのだな?」
「はい、飲むと異世界言語スキルを得られて町に入れる───と記述されてます」
「何か……鑑定の情報、うちらにピンポイント過ぎる内容じゃね⁉」
三人には突如生えた鑑定スキルの胡散臭さが気になった。
一先ず秋里涼真だけが【異世界言語ポーション】を飲む。味はブルーハワイ。
(これでいけるはず)
スキル【異世界言語[ダンジョンコア]】を獲得していた。
再び門番の所へと四人が移動する。
「すいませーん、俺達は中に入りたいんですけどー」
「お前……ちゃんと話せたのか。珍しい見た目だし、別の大陸からでも来たのかと肝を冷やしたぞ。一人、銅貨二枚だ」
手を出して催促する門番。
(金取るのかよ。通行税とかかな? 異世界のお金は……十円玉じゃ駄目だよな)
困っている秋里涼真の手の中に八枚の銅貨が現れた。
【山に放棄された銅貨:雨風に晒され多少痛んでいるが銅貨の価値を保っている】
(魔力の消耗は無い……作ったんじゃなくて、落し物を回収した?)
ダンジョン自体は崩壊したが二つの世界に根を張ったまま。
秋里涼真という魔力の供給源があり、自我を取り戻した今のダンジョンコアには自由な行動が取れる。根を新しく作ったり操作も可能で、周辺を探索して入手した銅貨をバケツリレーのように転移して秋里涼真へ届けた。
「これでいいですか?」
「丁度あるな。プロペシルワムにようこそ!」
料金を払い暇そうな門番と少し世間話をしてから門を通る。
十メートルくらいの通路を進むと、ついに四人は町の中に入れた。
「さっきの秋里君、ちゃんと門番の人と会話してて凄かった」
「はい【異世界言語ポーション】三人分。みんなも言語スキルはあった方がいい、副作用も無いからさ」
この世界で活動するなら必須と言える。
回収した瓶は、ダンジョンコアに吸収させて処分。
「町へと入れたが何をするべきか……」
「まずはギルドに行こう。登録証があれば次回から入場が無料になるって」
「やるじゃねーか。それを門番と話してたのか」
門番に聞いた大通りを進んで行く。
壁の中の町には活気があった。道の両端で露店や屋台が並ぶが、今はスルー。
それなりに歩くと大きな建物が見えて来た。
「もう喋れるんだし、うちがギルドで手続きやりたい!」
やる気に満ちた喜世川有栖を先頭に、いざ突入。
まずはこの場所で身分証や依頼の受注に必要なギルド登録証を作る。
食堂と併設されており、明るいうちから酔っ払いも居た。
四人が場の空気に圧倒されていると次第に集まる目線───
(見慣れん鎧だな、どこ産だ?)
(あれは最奥のホブゴブリンのだな)
異世界でも斬新な見た目のリキッドアーマー。
見る人が見れば一目でダンジョン産と気付く武器。
そこに初心者丸出しというチグハグさは、やはり目立つ。
「へっへっへ───」
ニヤニヤしながら中年の男が近寄って来た。
後ろ姿からでも分かるくらい強張る喜世川有栖。この状況で最初に動けたのは、日常でヤンキーに絡まれ慣れている兎洞雄之助だ。
堂々とした歩みで喜世川有栖の前に出て庇う。
「何だ、オッサン」
「おうおう勇ましいじゃねーか……この町は初めてか?」
更にニヤニヤする相手に兎洞雄之助は神経を尖らせた。
「へっへっへ、あそこに見える柱を曲がれば受付だ。ちょっと分かり辛いよな?」
それだけ言うと、男はニヤニヤと満足気に去って行く。
何が何だか理解が追い付かず固った兎洞雄之助。
(装備が上等。ありゃあ魂の格も高いなぁ───ダンジョンに潜って、実力で入手したに違いねぇ……)
「優秀な初心者には親切にして、町に居着いて貰わねぇとなぁ!」
思わず小声が漏れる。
この町で伊達に長く生き残っていないオッサン。自分達の生存率を上げる為ならやれる事は全部しておく。
プロペシルワムは、定期的に山から魔物が大量発生する大海嘯のある町だ。
今、その町は奇妙な空飛ぶ魔物の目撃情報でギルド内が緊張状態にある‼
「あのオッサン、親切なオッサンだったん⁉」
再起動した喜世川有栖を先頭に、受付を目指す。
もう注目はされていない。柱を曲がると確かに職員が仕事に励んでいた。
「すいませーん。うちら登録証が欲しいんですけど!」
喜世川有栖が一人で受付に向かう。
「登録証ですね。少し待ってて下さい、緊急張り出し用の書類が今完成したので」
「……これドローンじゃね?」
書類の絵を見て喜世川有栖が言った。
「何か知ってるんですか! 森で未知の魔物が発見されたと周辺の町にも知らせを送って、今は厳戒態勢中なんです!」
「どうしてそのような大事になっているのでしょうか?」
城ヶ崎一夏が受付の職員に質問する。
騒動の当事者である四人は受付に横並び、まずは話を聞く事にした。
「この周辺は、定期的に山から魔物が大量発生して大変な場所なんです。そろそろ時期なので警戒をしていたところ……見回り依頼を受けた者が、見たこと無い魔物の目撃情報を慌てた様子で持ち帰りまして、この緊急張り出し用の書類はその証言を纏めて作ったものなんです」
空飛ぶドローンを江戸時代の人が見たら、こんな説明をしそうだなという内容。
「虫タイプの魔物か。あの飛行は確かに蜂やトンボのようではあるな」
「俺等にとってのUFOみてぇなもんか?」
「今はUFOって呼ばないらしいよ」
「あ゛あ゛?」
兎洞雄之助は、秋里涼真の発言にイラッとした。
慌てる秋里涼真は空気を変えたい。
「もしかして未知の魔物ってコレ?」
リュックから借りたドローンを取り出す。
「もしや既に討伐を⁉」
「いや……討伐とかじゃなくって───」
コントローラーを得意げに握った秋里涼真。
大きなモーターが唸りだし、受付の女性達が驚愕する。
『ブイイイイイイイイイイイイイイイイイン』
「「「イヤぁーーーーーーーーーーーーーーーー」」」




