028全地球守護協会AEDG超常対策室4
「話を聞いてりゃ、余りにも勝手過ぎやしねぇか?」
兎洞雄之助は不機嫌だ。
ダンジョンを生き延びて元の生活に戻れるはずが、今度は妙な組織に入るか他国に身柄確保されるの二択を迫られる。しかし、面倒事などもう御免だ。
それに脅迫同然のスカウトというのが気に食わない。
「外国だとか、法律はどうなってんだよ? 俺等は事件の被害者で面倒はもう沢山なんだ。後は警察なり組織のあんた等の仕事じゃねーのか」
他の三人も頷く、兎洞雄之助と考えは同じ。
日常に戻る為に頑張ったのだから。
「確かに、もっともな意見だ。しかし君達がやってのけた事は余りに大き過ぎる。全地球守護協会としても、絶対に手に入れたい人材だと考えるのは無理も無いし、最悪はどこの国なんて気にしないぞ?……超常対策室を断れば、独裁色の強い国にでも確保させて、いざという時に協会からの命令で海外派遣だろうよ。断言する」
「そんなん悪の組織じゃん!」
後藤丈晴は、ため息をつきながら諭す。
「お嬢さん、どんな組織も大なり小なりそんなもんさ。世の中の汚さは、テレビや新聞を見てれば嫌でも分かるだろ? 例えば国連とかさ……UNって言い直した方がいいのかな?」
気になったので秋里涼真は質問する。
「じゃあ、超常対策室もそういうのと同類だったりしますか?」
「君は……秋里君だったかな? うちの部署はクリーンなもんだよ。日本は他国と比べれば平和だし、円盤も頻繁に飛んでりゃせんからな。我々の仕事は、ツチノコ探しなどのオカルト関係や都市伝説の調査とかになる。まあ、正義の活動だよ?」
もしや河童も───
ソワソワしだした城ヶ崎一夏を横目に、三人は別の部分に反応していた。
「いや、正義なのは本当だぞ。例えばヤクザの事務所や迂闊に手の出せない連中の敷地内に、ツチノコが居たという目撃情報を掴んだ我々がだよ? 全地球守護協会の強権でもって立ち入り調査をして、動かぬ悪事の証拠を掴んでしまえば……後は警察に丸投げしてバトンタッチ。どうだ、正義の味方だろ?」
言い終えニッコリ笑った。
「あ、悪辣過ぎっしょ……」
「そうした活動が世間にバレていないのは不思議でなりませんが?」
「普通じゃない犯罪の捜査を、協会の力を使ってするだけだからね。本来なら表に引きずり出せない悪を裁く……そのきっかけ作りでしかないんだ。踏み込む我々を止められる者は居ないし、それを誰も非難は出来ない」
「権力の乱用じゃねぇか⁉」
「悪用しない分には許されてるからね、怖いだろ?」
四人の反応は様々だ。
秋里涼真は、得られた答えに満足する。
「日本の超常対策室がそうであるように、AEDGってのは世界的にそれだけの強い権限を持っている。他国の所の支部も同様だ」
「断っても構わないだとか、うちらを何で無理やりスカウトしないん?」
「どの道、説明したら君等は日本の方に入るだろ? 脅す必要は無いんだ」
「あんたの手のひらの上って訳かよ───チッ」
「うむ、話を聞くに日本の超常対策室に入るのが一番マシだろうな」
全地球守護協会AEDGは、世界的大組織であり途轍もない権限を持っている。
様々な技術やテクノロジーを所持しており、経済や武力にも裏打ちされた権力をAssociation of Earth Defense Guardianの理念の下に行使する。
人の手に余る存在に対抗する、地球と人類を守る為の組織。
「ちなみに昨晩公園のヤンキー乱闘騒ぎだが……その重要参考人である秋里君は、この場で超常対策室に入っとかないと大変だぞ?」
不意に名指しされて固まる青年。
あの後はダンジョン踏破という命懸けの戦いをしたのもあって、公園での些細な出来事は忘れ去っていた。三人は、オーガ戦でのヤンキー達を実験台にした発言を確かに聞いたなぁと思い出す。
視線が集まる中、どう誤魔化そうか思考をフル回転させる秋里涼真。
「ッ───俺がやった証拠でもあるんですか?」
「ダンジョンの撮影データ、大きな鬼と対峙する時に本人の音声で自白があった。そこのお嬢さんを助けに駆け付けた場面だ」
(言ったっけ?……あの時は必死だったし、覚えてないぞ)
「オーガから庇ってくれた時の……だよね」
「お前、解散した後マジで何やったんだ? コンビニで絡まれた時SNSで半昏田へ擦り付け工作してただろ!」
「おい、二人が絡まれた話は聞いたが工作の話は聞いていないぞ⁉」
これは、もはや……ここまでか───
秋里涼真が渋々と語りだす。
きっかけは、校門前で巨乳の女生徒がヤンキーにナンパされてた所から始まる。いつもこの手の悪党は兎洞雄之助が成敗するが、たまたま先に秋里涼真が遭遇した際に咄嗟の反撃で半昏田を倒してしまって根に持たれた。その後で別のヤンキーにコンビニでまた絡まれ返り討ちにした時、半昏田にその罪を押し付ける事を閃く。
ヤンキーにはヤンキーをぶつける作戦!
「いい感じに対消滅しないかなって、思ったんだ」
秋里涼真は無邪気に微笑む。
「その後だ! その後に何をやったのだ!」
「学校から城ヶ崎生徒会長の車で、実家にお邪魔したっしょ?」
「だから道場の後だろ? テメェさっさと話せ」
「うん……家に帰って料理を作ろうとしたけど、買い出しを忘れてたから冷蔵庫に食材が無くてさ。だから外食で済ませたら帰り道に公園でヤンキーのチーム同士が抗争中で、それに巻き込まれちゃって……」
「つまり身から出た錆な訳だ?」
後藤丈晴は切って捨てた。
「抗争を煽った揚げ句に両方のチームを壊滅、この後どうなっちゃうんだろうね。超常対策室に入るなら───揉み消すけど?」
「う、今後ともよろしく……お願いします‼」
話を聞いた三人が呆れている。
秋里涼真は、どっちにしろ面倒な事になるし他国の組織に扱き使われるよりマシだと所属を決断した。
「この後、俺はどうなっちゃいますか?」
「ここに来るまでの間、警察から呼び出し受けなかっただろ? 予め手を回しておいた。他の子はどうする?」
秋里涼真が入ったのもあって、全員が日本の超常対策室への所属を選ぶ。
だが、一番の大きな理由は───
「ほんとに何もしなくてもいいん?」
「何度も言うが、日頃の業務はツチノコ探しとかのオカルト関係や都市伝説の調査なんだよ。君等は学業がお仕事、優秀な人材を他国へ取られない為の勧誘だから」
「給料とかは?」
「それは出来高制だ」
「協会から命令されたら逆らえねーんだろ?」
「今回みたいな大事件は早々起きんさ、だから心配しなくていいぞ。その当事件も新しい被害者の報告は来て無い……無事解決だ。我々は何もやれてないが、事件の全貌は君達からの情報提供で明らかにされた。おかげで全地球守護協会に解決した事件の報告書も提出が出来るだろう。本当に感謝する───」
後藤長官は静かに四人へ頭を下げる。
その一挙手一投足には大人のカッコ良さがあった。
四人を代表して城ヶ崎一夏は言う。
「私達は生き残る為に必至でした。無事に戻って来れたのは運が良かったのと……秋里がダンジョンの記憶を持ち帰って、向こう側の記憶を持たない私達を説得して集め、探索の準備が出来たのが大きいので───」
秋里涼真に再び視線が集まった。
(え、ここで俺に振るの?)
「みんなで力を合わせてなきゃ、こうして今ここに俺は居ません。俺は……ただ、やるべき事をやっただけです。四人みんなの手柄です」
「ほ~う、やるべき事をやっただけ?……そういうチームワークは大事だからね。いいじゃないか」
感情的に一頻り笑うと、後藤丈晴は大事な話を始める。
「事後報告になって済まないが、天之御中高等学校に超常対策室から人員の配置を進めている。常駐させた方が色々と対応も出来て君達のバックアップを兼ねてだ」
「職員室に待機とかするん?」
「君達が在学中の間だけど教員の首をすげ替える。その期間中の転勤先斡旋とか、希望者への退職手続きが大変なもんだから、おじさんが今日は一人で君達に説明をしている訳なんだ。ははは……」




