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024ダンジョン事件の終息と黒服集団4

「あっちの増援は片付けてきたよ」



 合流した秋里涼真。三人はオーガと互角以上に戦い、勝負は決していた。

 兎洞雄之助が正面から格闘戦でプレッシャーをかけて、喜世川有栖は牽制(けんせい)と回復役を臨機応変(りんきおうへん)にやりながら、意識の()れたオーガに体重を乗せた斬撃を叩き込む。

 二対一で五分の戦い。


 そして気配を消した城ヶ崎一夏が、高威力化ファイヤーボールを狙う。


 呼吸の苦しさと激痛のハンデを背負ったオーガが(たの)しむこの死闘、均衡(きんこう)(かたむ)けたのは、喜世川有栖の機転が切っ掛けだった。


 三人の中だとオーガの警戒対象は巨大ファイヤーボールを狙う城ヶ崎一夏が一番になり、次点に格闘相手の兎洞雄之助となる。

 そこで考えた。


(うちが【破邪(はじゃ)(いの)り】で光弾を飛ばしたら、意外と当てれるんじゃね?)


 オーガは喜世川有栖を(あなど)った。

 痛くはあるが致命傷にならない攻撃、それもヒットアンドアウェイ。他二人より(おと)り、一番危険な存在は別行動。

 だから次第に意識を向けなくなった。


 ───所詮(しょせん)(みずか)ら足を負傷する無様な戦士だ。


 ()しくも(ひらめ)きと侮蔑(ぶべつ)は両者同時、こうして運命の歯車が()み合う。

 (まばゆ)い光に振り返ったが避けようにも肉体が言うことを聞かない。光弾がオーガに直撃したのは必然、心臓を三度も銃撃された時点で避けられない運命の流れ。

 今、オーガの頭の中から城ヶ崎一夏の存在が消えていた。



 そこに死角から【精神統一】された【ファイヤーボール】が放たれる。



「俺も見たかったな動画とか……あ、撮影、いや駄目か自分目線だコレ。そういや頭に装着してるこのスマホは無事?」


 自分では見えないから指を差す。


「え? あっ! うん無事無事。傷も無いし大丈夫だから付けてて」


 城ヶ崎一夏がドヤ顔で微笑(ほほえ)んでいる。

 普段は中々見せない年相応(としそうおう)な表情でレアリティが高い。

 その横で兎洞雄之助が肩で息をしてお疲れモードだ。


 みんな緊張感が抜けていた。

 瀕死(ひんし)のオーガは、()つん()いになって口から絶えず血を垂れさせた状態。


「なんて強大(きょうだい)な敵だったんだろうか」


 秋里涼真はオーガが途轍(とてつ)もない戦士なのだと納得した。

 それと比べて、青白いホブゴブリンには何の感情も()いて来ない。


(何らかの根拠(こんきょ)が自分の中で有るんだろうな……言語化は出来ないけど)


 ともかく今必要なのは───


「喜世川さん、オーガに介錯(かいしゃく)してあげて」


 放置しても変わらないが……戦士なら、戦士として死ぬべきなのだ。

 自分の首の後ろをチョップでトントンと叩く。スパッと一思(ひとおも)いに、と。


「へ?───ぁ……うん! 任せて」


 少ない言葉で気持ちは通じ合う。

 総魔力が半分以下でも元気いっぱいの喜世川有栖は、(こうべ)()れた態勢(たいせい)で虫の息のオーガに駆け寄ると、高く跳び上がる。


往生(おうじょう)せいやぁ~っ‼」


 ただただ介錯する事だけを考えた一振りの斬撃は、空を切るようにオーガの首を断つ。首は床へ到達する前に光に溶けて消え去った。

 静謐(せいひつ)な表情をしていたと思う───そう思いたい。



 オーガの肉体が消えて四人の心臓が強く脈動(みゃくどう)した。



 ダンジョンのボスを撃破してレベルの上がった四人が叫ぶ。

 第二のダンジョン……正しく言い換えれば、世界を(また)いだ異常ダンジョン。

 異世界側のボス撃破は今回が初となる。


 地球側ダンジョンを攻略した者はそれなりの数が居たが、誰も大元(おおもと)異世界側(二つ目)をクリア出来ていない。オーガの部屋まで辿(たど)()けた者達は両手で数え切れる程度。記憶の持越しを選択しても有効的に活用しなければ、生存には直結しない。

 様々な巡り合わせが絡み合い、世界間問題の解決という偉業の達成に結実(けつじつ)した。



「はは、叫び疲れ……宝箱!!!!!」



 大きな宝箱である。

 全員の目が、クワッと開かれた。

 オーガが消え去った地点に、今まで見た事が無い豪華な宝箱が出現している。


「任せろ! 私がやる!」


 城ヶ崎一夏が【鍵開けの指輪】を()でながら宝箱に向かう。

 仲間に見守られながら、十数秒が経過した。


「うむ、爆弾だな」

「ば、マジ⁉」

「ボス倒したのに罠付きなんだ……」


 なので、ダンジョン探索を生業とするパーティには斥候系ジョブが必須となる。


「───大丈夫なんだな?」

「当然だ!」


 二度目となる【鍵開けの指輪】を使った罠解除。

 (きわ)どい姿勢で楽しそうに作業する城ヶ崎一夏、見ている三人までドキドキする。


「フフ……ふぅ〜、では開けるぞ」


 音を立てて宝箱が開かれた。


「何度聞いても良い音だ。これは(くせ)になりそうだ」

「生徒会長って、むっつりスケベなんだと思う」

「な、何ィ! どういう意味だ、秋里⁉」


 振り返った城ヶ崎一夏に目を合わさない喜世川有栖と兎洞雄之助。

 振り向く動作に合わせて回り込んだ秋里涼真が中身を物色している。入っていた中身は、色とりどり十人十色(じゅうにんといろ)の魔石と四個のアイテム。

 抜け駆けはズルい、と三人も豪華な宝箱を覗く───


「……何なん? 小さいゴルフバッグ?」

「恐らく矢筒(やづつ)であろう。このサイズなら十二本は入るな!」

「木を信仰するエキゾチックな文化的デザインだね、うんうん」


 弓関係の品なので城ヶ崎一夏に渡す。

 次に取り出されたのは赤黒い両刃のショートソード。ユニーク個体だった青白いホブゴブリンの持ち物で、不吉な気配を発していたが今は()りを(ひそ)めている。


「ふむ、喜世川はどうだ?」

「うちにはこのロングソードがあるんで」

「城ヶ崎は(なた)よりこっちの方がいいんじゃねーか?」


 二つも貰うのは気が引ける。

 そう訴えるが、他の三人が使わないのだからと説得。ダンジョンがこれで終わりと言い切れないので、戦力の底上げも(かね)ねて城ヶ崎一夏の新サブウェポンに。

 ホブゴブリンを狩りまくった(なた)さんは勇退(ゆうたい)となる。


 次は謎の丸い円盤。


「……(なべ)(ふた)?」

「盾ではないか? 古い映画で似たような物を見たぞ」

「危なっかしい喜世川に丁度いいだろ───妙に軽いな⁉」


 腕に固定して手をフリーに出来るので、両手でロングソードを(にぎ)れる。

 喜世川有栖の装備に向いている便利な丸盾だ。


 そして最後にメンズ用の(いか)ついオラオラ系ネックレスが残っていた。


「魔石は俺が全部(もら)うね。鳥狩用の弾(バードショット)でホブゴブリンが倒せるんだ、銃に魔石を喰わせて更にパワーアップさせたい!」

「……この手のチャラチャラしたのは好きじゃねーんだがな」


 兎洞雄之助には似合っていたので女子二人が素直に称賛(しょうさん)する。

 そうして気が付く。


「なんか威圧感が出てね?」

「威圧感だぁ?……体の内側から、力は湧いて来てるが」

「ほう、有用で良いではないか」


 黙々(もくもく)と銃に魔石を喰わせていた秋里涼真が、最後の魔石を(つか)み取った。

 すると宝箱は消滅、代わりに光り輝く魔法陣が出現する。そこに重なって透けた外の世界の景色。第三のダンジョンは無さそうだ。


 盛り上がる中、喜世川有栖が力説しだした。



「それじゃダンジョン残り続けるし、脱出(だっしゅつ)の前にダンジョンコア探さない?」



 見つけて出して引っこ抜く!

 本当に最後の戦い、それはコア探しだったのだ。

 四人が思い思いの場所を探す。


「コアか~どんなだろ?……お?」


 秋里涼真が調べていた壁の表面が、パラパラと(くず)れだす。

 ガラス玉のような光沢(こうたく)の物体が(あら)わとなった。不思議と手が惹き寄せられる。

 カポッと音を立てて簡単に引っこ抜けた。


「これってコア~?」


 掴み上げた手をフンブン振ってアピール。

 それを見て、三人が大声で反応する。


「「「手! 手! 手!」」」

「手って……うぉァ⁉」


 手の平に潜り込んで行くダンジョンコア。

 痛みは全然感じない。反対側から突き破りもせず沈み込んで腕を登って来る。


「ちょっ! このっ、まっ───」


 取り出そうとすると、あっという間に腕の中へ消えた。

 同時にダンジョンが(ゆれ)れて立っていられない。全員パニック状態。



「やべー、倒壊すンぞ‼」

「あっ、外へ脱出する魔法陣が───」



 転移陣が床と一緒に崩れ落ちた。

 ダンジョンが崩壊する。崩れた壁の向こう側は、光の無い空間。

 四人は瓦礫と共に真っ逆さま……暗闇へと落ちていく。


 それぞれ恐怖や絶望の声の中、秋里涼真は怒りの声を出す。



「ちゃんとボスだって倒したんだぞ! こんなの認められるかよ‼」



 共鳴するかのようにダンジョンコアが潜り込んだ右腕が輝きだす。

 その光は、空間全体へと広がり全てを包み込んでいく───







「ぐぇっ」


 光に目が(くら)んだかと思えば、地面に叩き付けられた秋里涼真。

 他の三人も痛がりながら立ち上がる。どうやら夜の山の中に居るようだ。

 月明かりが眩しい。


「外? 外! イエェーイやった!……あ、月が三つあるんですけど?」

「「「は?」」」



 周囲を警戒していた三人が夜空を見上げる。

 満月だった。勿論(もちろん)一つだけ。



「三つだと? 見事な満月しか見当たらないが?」

「え? あれ? だってさっき……」


 ヘリの飛ぶ音が(ひびいて)いていた。

 木々の隙間(すきま)から遠くに夜景が広がっている。


「……なんか景色が変化してねーか?」


 注意力が散漫(さんまん)で騒がしい四人。

 ふと気配を感じ、秋里涼真はグロック17とMk23を両手に背後の(しげ)みへ向ける。


「んー、怪しい者じゃないですよ。少しあなた達の様子を見てただけですって」


 山に場違いなバリキャリ女子が姿を現した。

 SPのような男達を何人も引き連れての登場に、四人は固まってしまう。



「こんな場所を夜中に子供が出歩くなんて……話を聞かせて貰いましょうか?」

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