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018準備万全なダンジョン攻略2

「すっご!……宇宙じゃん、ダンジョンってマジどうなってんの?」



 階段を降りていくと信じられない世界が広がっていた。

 スペースシャトルから見るような景色に、四人の心が奪われる。


「おい、あんな下の方で雲が流れてんぞ」


 遠くの夜光雲(やこううん)を見下ろしながら四人が降り立った。

 近くには敵が居ない。


「この床って空中に浮いてんの?」

「ふむ、空に浮かぶ石畳か。奇妙な場所だが適温で呼吸の問題もなさそうだな」


 設置された転落防止の手摺(てすり)に駆け寄った喜世川有栖が(はしゃ)いでいる。

 笑顔で周囲を指差す横で、三人も新たな階層の視察。


「もしかして……落ちたら助からないやつ?」



 ここは宇宙の近くに揺蕩(たゆた)う場所。

 空中に浮かんで点在する正方形や長方形の土地を水平に伸びた石橋の道が繋ぐ。

 遠方ではホブゴブリンが(たむろ)していたり、石橋を渡る集団も居た。


 壁は無く、手摺だけ───落下の不安が付き(まと)う危険な階層だ。



「おまっ、そういうのは思っても言うんじゃねぇ!」

「想像しちゃったじゃん!」

「……来たぞ。東の石橋からだ!」


 足音を立てながら集団がやって来る。

 この階層は壁が無いので、周囲を眺めていた四人は敵からも丸見えだった。

 落ちたら死ぬ! 動揺する中でホブゴブリン達と交戦だ。


「と、とにかく頑張るぞー!」


 喜世川有栖の口上でバフを得た四人。

 初手グロック17とMk23の二丁拳銃で今回も戦闘を始めたが───

 サプレッサーを装着したMk23は、まだマシだった。


 グロック17の発砲音が辺りに響き渡る。


「あれ、この空間って銃声が割と反響する……」

「何かヤベえ感じだ。さっさと倒すぞ!」

「うわっ、遠くのホブゴブリンと目が合っちゃったんですけど‼」


「……これは不味いかもしれんな」



 銃声を聞いた遠くの敵が次々と走り出す。

 戦闘のスパンがあれば逐次殲滅(ちくじせんめつ)も可能だが、無尽蔵に増援がポップしかねない。

 この階層では大きな音を出さない戦い方が求められる。



「早く階段探さないとヤバくない? あっ、向こうのやつって宝箱?」

「この階って、宝箱も階段も壁が無いから丸見えのボーナスステージだぁ!」

「おい、お前らガチで宝箱も取んのか?」


 秋里涼真の発言に、兎洞雄之助が驚く。


「俺の指輪みたいなアイテムとか、ポーション類は重宝するから取った方がいい」

「今レベルアップしてスキルを得た。私が道を切り開く!」


 気配が薄くなった城ヶ崎一夏が敵陣に突っ込んだ。

 誰もが見失ってしまう新スキルの力は、乱戦でこそ猛威を振るう。


「秋里君、この袋に魔石拾い集めといた。走りながら銃に喰わせてね」







 そこから先は地獄のような行軍だった。

 隠れる場所も無く敵に発見され易い上に、戦闘音が敵を呼び寄せてしまう。

 少し前も【ファイヤーボール】の使用でヤバかった。


「だああ、もう。■uck!(クソッ!)


 そうなればグロック17も使って殲滅速度を上げるしかない。

 そして、更に敵が駆け付ける負のループだ。

 だが悪循環(この状況)が本当にヤバい理由は───



「居た! また来た‼ 秋里君、頑張ぇー!」



 レベルアップで新たに幸運スキルを手に入れた喜世川有栖の絶叫。

 そいつは宇宙の闇に紛れて現れる。


「あれか、また運良く発見してくれて助かる」


 それなりの道のりを進み、頭上から鳥型の魔物が襲ってくるようになった。

 ()(かく)デカい、羽を広げれば三メートル以上はある怪鳥だ。

 だから怖い!


(少し前に掴まれた時は、頭が千切れるかと思った)


 混戦時に意識し(づら)い空からの刺客!

 喜世川有栖が運良く拾った魔石をぶつけて秋里涼真は連れ去られずに済んだ。


「またホブゴブリンが攫われてる」

「今は味方、こっち来たら敵!」


 恐竜のような鉤爪(かぎづめ)で空中に連れ去って、宇宙にポイ捨て───


 コイツは何故かゴブリンも標的にする。

 崖に住む動物が鳥に掴み上げられ谷底へと落とされるシーンそのもの。


(銃が無いと魔石を投げつけたりやらなきゃ死ぬって難易度おかしいだろ‼)


 上からは鳥。

 落ちれば死。

 そんな中でもトレジャーハントを諦めず戦い、走り回って、宝箱は全てゲット!







 階段では敵が出ない。ようやく四人は休憩に入れた。


「流石に連続戦闘はキツイぜ……どんだけ湧きやがるんだ」

「うち、遠くでポップする瞬間ハッキリ見たよ。チカっと光って現れるやつ」

「無限に湧くのか⁉ それで戦い通しになったのだな───」


 この階層でスキルを獲得したのは二人。

 喜世川有栖が手に入れた幸運スキルは〈聖女〉のスキル【幸運の加護】だ。


「運が良くなるの。日常生活でも御利益(ごりやく)あるかも?……今度ロト6買お」

「いいなー」


 食品関連の特典や懸賞を応募する秋里涼真には羨ましいスキル。


「次は私だな〈狩人〉のスキル、気配を消す移動【ハンターウォーク】だ」

「「おお~!」」

「一人で突撃する時のやつか。足音も減ってねーか?」


 目の前に居ても見失いそうになる。しかも自然環境内で使えば更に効果は上昇!

 スキル情報の共有は済んだので、次は宝箱から入手した三つの品。


「これは両方とも回復ポーションに違いないよ」


 かつて秋里涼真が入手した瓶と同じ物。

 今は聖女の回復魔法がある。だからこれは回復役に何かあった時用の切り札だ。

 喜世川有栖が大怪我した場合の保険としてリュックに入れた。


「ほう、飲んでも身体に(かぶ)っても効果があるのか……」


 最後に、鍵マークの指輪。

 色々と試すとピッキングツールなどの道具を呼び出せると分かった。

 これからは、この鍵開けの指輪で罠の解除が出来る。


「道具が無いし、毒針の罠解除を放棄して宝箱を横から開けたもんね」

「襲って来てたホブゴブリンに刺さったの怖かった」

「真正面から宝箱を開けるのは素人だから───」


 秋里涼真が(しゃべ)る横で、城ヶ崎一夏が鍵開けの指輪を(いじり)り続けていた。

 指輪の鍵マークから道具類がニョキッと出ては引っ込む。


「城ヶ崎生徒会長、まだ指輪試してるん?」

「うむ、鍵を開ける為に道具を出すのだと考えていたが、正確には───」


 ニョキッと小さめのプラスドライバーが出てきた。

 鍵マークの部分から伸びた紐と繋がっており、ブラブラと揺れている。


「装着者の思い描いた物を鍵マークから出す際に、体積の限界がある」


 基本的なピッキングツール。

 猫じゃらし。

 洗濯バサミ。

 河童のキーホルダー。

 全てイメージ通り、柔軟性やバネの仕組みも再現されていた。

 河童のデザインは(うな)るほど精巧に作られている。


「スゲェな。宝箱の鍵開け以外にも使い道あるんじゃねーか?」

「河童のクオリティすっご……」







「今度はこう来たか~」


 階段を降りた先には草原が広がっていた。

 崖内部の小部屋から外へ出たら、膝まで伸びた草が辺り一面を覆っている。

 場所によっては一メートル以上の草も茂って視界が悪い。


「うっわ、毒蛇とか居そう。マジ最悪」

「上とは別方向で性質(たち)が悪いぜ……」


 まばらに生えた地球では見かけない木。

 明らかに近づいちゃ駄目なタイプだと、四人は確信する。


「あの木、絶対ヤバいやつじゃん! 木の実の色も無理、毒持ってそう」

「うむ、近くに敵が潜んでいるし近付かぬ方がいいだろう……秋里、あの遠くの山の絶景を撮るのだ!」


 どうやら城ヶ崎一夏は、自然の景観に関心があるようだ。

 指差す先を見たら山と一緒に黒い物体を発見。



「げ⁉ あの鳥ここも棲息圏なのか広いな。ゴブリンも宇宙(そら)に居るくらいだしな」



 この青空の下では黒い姿がよく目立つ。

 急降下して背の高い草むらへ飛び込むと、ゴブリンを捕まえて飛翔していく。


「ギャッ、グギャギャ⁉」


 必死に藻掻(もが)いたが抵抗(むな)しく空へと(さら)われた。


「あの邪悪な鳥のポイ捨て性癖は、(とど)まる所を知らないのか?」


 前の階層でも恐れられた紐無しバンジージャンプ。

 攫われたゴブリンは、空が飛べないのでどうしようもなかった。


「なんとも(むご)い……」

「うわ、なんでゴブリンが全部こっち来んの⁉」


 草むらから飛び出して四人の方へ逃げるゴブリンとホブゴブリン。

 それを追う黒い怪鳥───


 前の階をくぐり抜けた四人は、危なげなく全て殲滅した。


「鳥の魔石は初めて手に取れたかも」

「またノーマルなゴブリンが出だしたが、強さに違いは無いようだぜ?」

「ほれ秋里、魔石だ」


 喜世川有栖が、紐無しバンジージャンプしたゴブリンの魔石を探している。

 成長した雑草が目障りだ。


「草が邪魔過ぎ、この! この!」


 剣を勢い良く振り回して茂った草を刈り取っていく。

 これはホブゴブリンから入手した剣の割に、とても切れ味が良い。

 流石はダンジョンボスのドロップだ。



「あー! 何か階段あったんですけど⁉ はい、みんな集合~」



 階段が地面に設置されていた。

 草が伸び放題な地形で巧妙に隠されれば見つけるのは困難だ。

 悪意を疑わざるを得ない。


「目と鼻の先に、もう次の階層への階段だと?」

「こいつを見逃したら、きっと向こうの山で遭難してただろうな」

「喜世川さんの幸運に感謝だよ!」


 四人で話し合った結果、ここは階段の先へ進むで一致。


 茂みに隠れる敵。

 ドロップ品の拾い難さ。

 道に迷う可能性と階段を見失う危険性もある。



「ダンジョンの中で登山するよりも次の階層へ出発だ!」

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