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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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王都到着――守られる場所と、見られる場所

王都の中は、とにかく音が多かった。


人の話し声。

荷車の車輪がきしむ音。

鍛冶場から聞こえる金属音。

市場の呼び声が、石造りの建物に反響している。


(…ちゃんと生きてる街だ)


山の静けさとはまるで違う。

あそこは、生き残るための場所だった。

ここは、生活するための場所だ。


道はきれいに整えられていて、建物は規則正しく並んでいる。

清潔というより、「管理されている」という印象が強い。


「馬から降りろ」


エリスの声で我に返る。


城門を抜けてすぐの詰所前。

近衛騎士団の駐屯地らしい。

白と銀を基調にした建物で、装飾は少なく、実用重視の雰囲気だ。


(完全に軍事施設だな)


馬から降りると、兵士たちが一斉に姿勢を正した。


「おかえりなさい、エリス隊長」


隊長?


思わずエリスを見る。


「臨時だ」


小声で返された。


「…臨時でこの扱いですか」


「現場では十分だ」


さらっと言うが、周囲の反応を見る限り、信頼は厚い。


(やっぱり、この人かなり偉い)


建物の中は外より静かだった。

廊下を進むたびに視線を感じる。


(…見られてるな)


敵意ではない。

警戒と、好奇心。


「山で夜盗を壊滅させたっていう男か?」


「魔力反応ゼロらしいぞ」


「それであの戦闘力は危険だ」


小声なのに、はっきり聞こえる。


(情報回るの早すぎだろ…)


エリスが一歩前に出て、さりげなく俺を遮る。


「気にするな」


「無理ですよ」


「慣れろ」


近衛騎士団の洗礼らしい。


通された部屋は簡素だった。

机と椅子、壁には王都周辺の地図。

無駄がない。


「ここで待て」


エリスが言う。


「騎士団長に報告する」


「…一人で?」


「兵が外にいる」


確かに、扉の向こうに気配がある。


(保護という名の監視だな)


でも、反発は湧かなかった。


(信用されてないだけだ。仕方ない)


俺は、自分が何者か説明できない。


エリスが出ていくと、部屋は静かになった。


(…暇だ)


椅子に座り、天井を見上げる。


日本にいた頃なら、こういう時間はスマホをいじっていた。

今は何もない。


(考えるしかないか)


異常な身体能力。

魔力反応ゼロ。

炎を踏み越えた感覚。


(俺、何なんだ)


勇者?

突然変異?

それとも何かの失敗作?


答えは出ない。


ノックの音。


「入るぞ」


入ってきたのは、エリスではなかった。


ローブ姿の年配の男。

眼鏡の奥の目が鋭い。


「初めまして。王立魔法学院の教授、リオネルだ」


(魔法学院…)


やっぱり来たか。


「エリスから話は聞いている。魔力反応はほぼゼロ。しかし身体能力は異常」


「…はい」


事実だ。


リオネルは顎に手を当てた。


「非常に興味深い」


嫌な予感しかしない。


「一度、学院で精密検査を受けてもらいたい」


「解剖はなしでお願いします」


半分冗談のつもりだったが、教授は真顔だった。


「必要であれば——」


「却下だ」


扉が開き、エリスが戻ってきた。


「彼は騎士団の管理下にある」


リオネルは肩をすくめる。


「分かっている。あくまで提案だ。非侵襲検査のみと約束しよう」


「約束できるか」


「学院の名にかけて」


エリスは少し考える。


その間、教授の視線がこちらに向く。


「怖いかね?」


「正直に言うと、怖いです」


即答だった。


教授は少し意外そうな顔をした。


「普通は力を持てば誇るものだ」


「俺は、持たされた感じなので」


教授が小さく笑う。


「ならなおさら、学ぶべきだ。力を知るには知識がいる」


エリスがこちらを見る。


「無理強いはしない」


「だが、避けて通れない」


分かっている。


少し考えてから、俺は言った。


「条件があります」


二人の視線が集まる。


「俺を、物みたいに扱わないこと」


部屋が静まる。


やがて、リオネルがゆっくり頷いた。


「約束しよう。君は研究素材ではない。生徒候補だ」


生徒。


その言葉に、少しだけ安心する。


エリスが静かに言う。


「王都では騎士団が君を守る」


「学院では魔法が君を解明する」


「どっちも怖いですね」


「だろうな」


でも、とエリスは続ける。


「山に一人でいるよりは、安全だ」


それは間違いない。


異世界に来て二日目。


ハーレムの気配はまだない。


代わりにあるのは、騎士団の監視と、魔法学院の検査。


どうやら俺の異世界生活は、チート無双より先に「自己解明」から始まるらしい。


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