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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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8/90

王都への道中と、騎士の格付け

馬の蹄が、一定のリズムで地面を叩いている。


森を抜けると、景色が一変した。

道が整えられている。

土は踏み固められ、轍がはっきり残っている。

ところどころに石も敷かれている。


(…ちゃんとした街道だ)


それだけで、少し安心した。


さっきまでいた山は、一歩踏み間違えれば命を落とす場所だった。

人の気配はなく、助けも期待できない世界。


でもここは違う。

人が通る。

荷馬車が行き交う。

秩序がある。


(異世界でも、ちゃんと国があるんだな)


「王都までは、半日ほどだ」


前に座るエリスが、振り返らずに言う。


「思ったより近いですね」


「この街道は定期的に整備されている。近衛が巡回するからな」


なるほど、と納得する。

治安維持のための主要ルートというわけだ。


「じゃあ、さっきの山は?」


「人が住むには危険すぎる。だから夜盗が溜まる」


淡々とした説明。


(つまり俺、転移していきなり最悪クラスの場所に落ちたってことか)


「運が悪かったな」


エリスがさらりと言う。


「…否定できません」


しばらく無言で進む。


馬の揺れはあるが、エリスの体幹が安定しているせいか、不思議と安心感がある。

落ちる心配をしなくていい。


(…俺、慣れてきてるな)


それが少し悔しい。

異世界に順応している自分がいる。


「王都に着いたら」


エリスが続ける。


「君の素性を調べる」


「やっぱりですか」


「魔力反応、出身、身体能力。すべてだ」


「全部ですか」


「全部だ」


迷いがない。


「拒否権は?」


「ない」


即答。


「…ちょっと怖いですね」


本音だった。


「何がだ」


「自分が何者か、はっきりさせられるのが」


もし自分が、人間じゃなかったら。

もし何かの実験体だったら。

もし危険指定されたら。


エリスは少し考えてから言った。


「それは違う」


「…?」


「君はすでに“分からない存在”だ」


胸に刺さる。


「分からないまま放置する方が危険だ」


(保護という名の管理だな)


「王都は」


エリスの声が少しだけ柔らぐ。


「危険だが、安全でもある」


「矛盾してません?」


「権力が集中している場所は常に危険だ。だが力の所在が明確な分、無法よりはましだ」


確かに。


山の夜盗よりは、制度がある分ましだ。


やがて、遠くに城壁が見えた。


白い石造りの高い壁。

塔。

大きな門。


――王都。


(でかいな)


想像していたよりずっと大きい。


人の数も増えていく。

商人、旅人、護衛。


自然と視線がエリスに集まる。


銀の鎧。

剣。

白馬。


近衛騎士という立場の重さが、周囲の反応から分かる。


(俺、完全に保護対象だな)


その自覚が、少しだけ胸を刺す。


「エリス」


「何だ」


「俺、王都では問題になる存在ですよね」


エリスは否定しなかった。


「可能性は高い」


やっぱり。


「だから格付けが必要だ」


「格付け?」


「君を危険人物として扱うか、管理可能な協力者として扱うか」


重い言葉だ。


「今の評価は?」


恐る恐る聞く。


エリスは少し考えてから言った。


「暫定評価だ」


「戦闘力は高い」


「判断力は不安定」


「倫理観は未成熟」


(辛辣だな…)


「総合評価は要監視」


やっぱり。


だが、続きがあった。


「ただし」


エリスの声がはっきりする。


「矯正可能」


胸の奥が、少しだけ軽くなる。


「矯正って…」


「言い換えれば教育だ」


「誰がやるんですか」


「私が」


迷いのない即答。


「…責任重大ですね」


「引き受けた」


その言葉に嘘はない。


(この人、本気だ)


王都の門が目の前に迫る。


門番たちがエリスを見ると、すぐに道を開けた。


俺はその背中を見ながら思う。


(ハーレムどころじゃないな)


でも。


この人が「要監視」と言うなら。

「矯正可能」と言うなら。


(少なくとも、怪物にはならずに済むかもしれない)


馬は門をくぐる。


高い石壁の影が、一瞬、俺たちを包んだ。


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