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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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魔法学院初日――最悪の出会いは、だいたい最初に来る

王立魔法学院に入った瞬間、空気がまるで違った。


近衛騎士団の施設は静かで張り詰めていたが、ここはとにかく騒がしい。


廊下の天井では魔法陣がゆっくり回っている。

本がふわふわと宙に浮いて移動している。

遠くで、ボン、と爆発音が響く。


(…大丈夫なのか、ここ)


「気にするな」


隣を歩くエリスが言う。


「爆発は日常だ」


「安心できる要素が一つもないんですが」


「死者が出なければ問題ない」


基準が騎士すぎる。


建物は白い石造りだが、壁の一部が微妙に色が違う。

補修の跡だろう。


(実験失敗の痕跡だな…)


大きな扉の前でエリスが止まる。


「ここが学院の研究棟だ」


扉が開いた瞬間、空気が変わった。


視線。


学生、教師、研究員らしき人たちが一斉にこちらを見る。


(うわ…)


好奇心、警戒、疑い。

完全に“珍しいもの”を見る目だ。


(俺、展示物扱いだな)


「連れてきたぞ」


エリスが淡々と言うと、ざわめきが広がる。


「本当に魔力ゼロなのか?」


「身体能力だけ異常ってどういう理屈だ?」


「魔法使えないのに?」


全部聞こえる。普通に。


(せめて小声でやれ)


そのときだった。


「えっ!?ほんとに!?」


やたら明るい声が響く。


人混みをかき分けて出てきたのは、ローブ姿の少女だった。


長い髪。

ぱっと見て分かるくらい、目が輝いている。

そして距離が近い。


「ちょ、近っ…!」


顔が目の前にある。


「息してる?ほんとに魔力感じないんだけど!」


「してます!」


「すごいね!逆にすごい!」


(なんだこの子)


「リリア」


エリスが低い声で呼ぶ。


「あ、エリスじゃん!久しぶり!」


「私語は後だ」


「相変わらず堅いなあ」


この態度なのに、周囲の教師たちが止めない。


(…立場強いな、この子)


「紹介する」


エリスが言いかけた瞬間。


「分かってる!」


リリアが即答する。


「例の“異常値”でしょ!」


異常値。

ストレートすぎる。


「名前は?」


また距離が詰まる。


「…まだ、決めてない」


「え?」


「え?」


周囲がざわつく。


「名前ないの?」


「仮名ならある」


「何?」


「…旅人」


「雑!」


即座にツッコまれた。


「じゃあ旅人くんでいいや!」


軽い。軽すぎる。


エリスが睨む。


「リリア。彼は研究対象ではない」


「分かってるってば!」


全然分かっていない顔だ。


「研究対象じゃなくて――」


リリアがにっこり笑う。


「超レアケース!」


(言い換えただけだろ)


教授らしき男が咳払いをする。


「まずは非侵襲検査だ」


「魔力感応、身体反応、世界適応度を測る」


(世界適応度?)


嫌な単語が出てきた。


机の上に水晶が置かれる。


「手を乗せてくれ」


言われるまま、手を置く。


何も起きない。


「…反応ゼロ?」


誰かがつぶやく。


次の瞬間、水晶が突然強く光った。


「え?」


「数値が跳ねた!」


リリアが真顔になる。


「これ…おかしい」


室内が一気に静まる。


エリスが前に出る。


「どういう意味だ」


リリアは、俺をまっすぐ見た。


「簡単に言うとね」


一拍置いて。


「この人、“未転移者”の反応じゃない」


「…どういうことだ」


「転移者特有の“異物判定”が出てない」


周囲がざわつく。


リリアは続ける。


「むしろね」


「この世界の人間と同じ扱いになってる」


背中がぞわっとする。


「転移者なのに?」


誰かが聞く。


「うん」


リリアは、楽しそうでもあり、困惑している顔で言った。


「世界に拒否されてない」


「それどころか――」


「最初から“内側”にいる扱い」


(…は?)


俺は、この世界に来たはずだ。


なのに、世界側からは“外から来た存在”として認識されていない?


リリアが少し声を落とす。


「ねえ、旅人くん」


「君さ」


「この世界に“来た”んじゃなくて」


視線が突き刺さる。


「“組み込まれた”んじゃない?」


言葉の意味が、すぐには理解できなかった。


だが、本能が危険を告げる。


(組み込まれた?)


偶然じゃない。

事故じゃない。

選ばれた、でもない。


“最初から前提に入っていた”みたいな響き。


急に、この場所が怖くなった。


ここは知識の集まる場所だ。

だからこそ、逃げ場がない。


エリスが一歩前に出て、俺の前に立つ。


「今日はここまでだ」


はっきりとした声だった。


「詳細は後日、改めて確認する」


その背中が、やけに頼もしく感じる。


学院のざわめきが、少し遠のいた。


こうして俺は、魔法学院初日にして――


“異世界の異常”として、正式に認識された。


そして同時に。


距離感ゼロの天才魔法使い。

リリア・アークライトという厄介な存在とも、深く関わることになったのだった。


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