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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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幕間 騎士団内部評価会議 ――エリス vs 上層部

近衛騎士団本部・第三会議室。


石造りの壁に囲まれた円卓の部屋は、昼間だというのに薄暗かった。

窓はあるが、あえて光を落としている。

圧をかけるための空間だ。


(…試されるな)


エリスは円卓の端に立っていた。

鎧は外しているが、姿勢は崩さない。

向かいには、騎士団上層部の七名。


団長、副団長、参謀、監察官。

どの顔も穏やかだが、目だけは鋭い。


「では始めよう」


団長が静かに口を開く。


「件の転移者についてだ」


机の上の書類を指で叩く。


「魔力反応ゼロ。だが夜盗十数名を単独で制圧」

「魔道具の攻撃を回避、一部は無効化」

「――常識外だな」


「常識外です」


エリスは迷わず答えた。


「だが、現時点で敵対行動は確認されていません」


「“現時点では”だろう」


副団長が低く言う。


「力を持つ者は、いずれ制御を失う可能性がある」


「だからこそ」


エリスは一歩前に出た。


「管理が必要です」


「管理、か」


監察官が眉を上げる。


「君は彼を守ろうとしているように見えるが」


「私は」


エリスは言葉を選びながら答える。


「彼を“危険因子”と判断しています」


一瞬、空気が止まる。


「ほう」


団長が目を細める。


「ならば、なぜ排除を主張しない?」


核心だった。


排除という言葉は、処刑を意味する。


「排除は最も単純な解決です」


エリスははっきり言った。


「ですが、最も愚かな選択でもあります」


ざわ、と空気が揺れる。


「理由を述べろ」


「彼は、世界に拒絶されていません」


団長の視線が鋭くなる。


「魔法学院の報告か」


「はい」


「それがなぜ問題だ?」


「問題なのは、彼の力ではありません」


エリスは息を整える。


「彼の“存在の在り方”です」


全員の視線が集まる。


「彼は転移者でありながら、異物判定を受けていない」

「この世界の住人として認識されています」


「…それが何を意味する」


「可能性の話ですが」


エリスは続ける。


「彼は、この世界の構造に組み込まれているかもしれない」


沈黙。


団長が椅子に深く腰掛ける。


「排除すれば、世界側に予測不能な影響が出る、と?」


「否定できません」


副団長が苛立つ。


「仮説に過ぎん」


「ですが」


エリスは視線を逸らさない。


「彼は昨夜、選択しました」


「逃げることもできた」

「しかし追い、捕らえ、殺さず制圧した」


「それが何だ」


「彼は制御を学べる存在です」


参謀が言う。


「では、学べなかった場合は?」


「怪物になります」


即答。


室内が冷える。


「だからこそ」


エリスは拳を握る。


「彼を、私の管理下に置いてください」


ざわめきが広がる。


「エリス」


団長の声が低くなる。


「それは特別扱いだ」


「承知しています」


「感情は混ざっていないな?」


ほんの一瞬、心臓が強く打つ。


だが表情は崩さない。


「混ざっていません」


断言する。


「私は騎士です」

「感情で王国を危険に晒すことはありません」


団長はしばらく黙った。


やがて、息を吐く。


「結論を出す」


全員の視線が中央に落ちる。


「彼は処分対象としない」


空気がわずかに緩む。


「ただし」


再び緊張が戻る。


「近衛騎士団と魔法学院の共同管理下に置く」

「単独行動は禁止」

「違反時は即時拘束」

「最悪の場合――」


団長はエリスを見る。


「君が止める役だ」


エリスは静かに頷いた。


「承知しました」


団長は最後に言う。


「君は彼を“人”として見ている」

「それは長所だ」

「だが同時に、最大の弱点にもなる」


エリスは一瞬だけ目を伏せる。


「理解しています」


会議はそれで終わった。


廊下に出た瞬間、エリスは小さく息を吐いた。


(…通った)


だが背中に汗が滲んでいる。


彼を守ったわけではない。

管理責任を引き受けただけだ。


そう自分に言い聞かせる。


それでも、考えてしまう。


もしあの男が、本当に怪物に近づいたとき。


自分は、迷わず剣を振れるのか。


その答えを、エリスはまだ持っていなかった。


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