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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第4章

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「合法的排除」


排除は音を立てなかった。


告発文もない。

逮捕もない。

裁判もない。


怒鳴り声も血も流れない。


ただ――

書類が整えられただけだった。


整った書類は剣より正確に人を切る。


---


朝。


俺の元に届いたのは一通の通知だった。


封はきちんと閉じられ

王都の紋章が押されている。


中身は短い。


《監督強化措置の適用について》


文面は丁寧だった。

気遣いの言葉が並んでいる。


《あなたの活動が社会的影響を持つことを鑑み》

《一定期間発言および行動に制限を設けます》


期限は書かれていない。


期間が明記されていない制限は

実質的に“無期限”と同じだ。


それが答えだった。


---


ミレイアが紙を手に取り目を細める。


「見事ね」


感心しているようにも呆れているようにも聞こえる。


「剣を抜かずに完全に縛ってきた」


「ええ」


俺は頷く。


「何もしなければ何も起きない」


「でも」


一拍置いて続ける。


「何かすれば即“違反”です」


つまり

動いた瞬間に罪になる。


---


制限は段階的に並んでいた。


・集会への参加制限

・公的発言の事前確認

・移動範囲の限定

・監督官の常駐


どれも理由は同じだ。


“安全のため”。


社会の安定のため。

誤解を避けるため。

過度な影響を防ぐため。


反論しづらい言葉ばかりだ。


---


王都では噂も整えられていった。


「あの男危険だから見られてるらしい」


「まあ念のためよね」


その“念のため”が

人を遠ざける。


誰も敵意を向けない。

誰も擁護もしない。


ただ距離を取る。


それが一番効く。


---


セラが静かに言う。


「これ以上表で動けば捕まります」


「分かってる」


俺は短く答える。


「だから表では動かない」


言葉通りにするしかない。


---


その日から

俺は“何もしない男”になった。


会議に出ない。

意見を言わない。

提案をしない。


呼ばれなければ出ていかない。


記録上は

従順で問題のない市民。


監督官も書類にはこう書くだろう。


《特記事項なし》。


---


だが均衡派は満足しなかった。


「静かすぎる」


「本当に従っているのか?」


疑念は次の段階を呼ぶ。


人は抵抗する相手より

沈黙する相手を怖がる。


---


ヴァレリアは報告を受け眉をひそめた。


「王女は許可したのか」


「はい」


副官が答える。


「“最小限の安全措置”として」


ヴァレリアは目を閉じる。


「これで彼は制度の中で死ぬ」


物理的な意味ではない。


影響力が削られ

言葉が届かなくなり

やがて忘れられる。


それが制度の中での死だ。


---


夜。


俺は小さな部屋で一人座っていた。


監督官が扉の外にいる。

足音が一定の間隔で動く。


逃げられない。


窓はあるが

飛び降りれば怪我をする高さだ。


(ここまでだ)


(俺の番は終わった)


そう思った瞬間。


窓がわずかに揺れた。


セラが音もなく入ってくる。


---


「まだです」


彼女は低く言う。


「あなたは排除されていない」


「何が違う」


「制度の中です」


短くはっきりと。


「本当に切るなら外に出します」


「今は閉じ込めているだけ」


つまり――

管理している。


見せ物にするために。


---


ミレイアも合流する。


「彼らあなたを見せしめにする気よ」


「男はこうなるって」


制度に逆らえば

例外を作れば

最終的にどうなるか。


それを示す教材にするつもりだ。


---


そこで俺は理解した。


均衡派の狙いは

俺を消すことじゃない。


俺を使って

他の男を黙らせること。


「ほら見ろ。

前に出ればこうなる」


そう言うための例。


---


「だから」


俺は静かに言った。


「次は俺が制度の外に出る」


セラが目を細める。


「追われます」


「はい」


「守られません」


「ええ」


「失います」


一拍置いて答える。


「もう失っています」


立場も信用も仲間も。


残っているのは

責任だけだ。


---


その夜。


王女アリシアは私的記録を開いていた。


《合法的排除が始まった》


《正しさはいつも静かだ》


ペン先が止まる。


しばらく考え

小さく息を吐いた。


「間に合わなかった」


守ろうとしたつもりだった。

だが制度は先に動いた。


静かに。

正しく。

そして確実に。


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