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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第4章

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「成功は、裁かれる」


代替試験の結果は

その日のうちに数字へとまとめられた。


紙の上に並ぶのは感情のない文字列だ。


死者:ゼロ

重傷者:ゼロ

被害区域:想定比三割減

指揮混乱指数:過去最低


誰が見ても成功と呼ぶしかない数字だった。


完璧に近い。


だが。


この国は

「正しい結果」がそのまま評価になるほど単純ではない。


数字は冷たい。

そして冷たいものほど政治の場では嫌われる。


---


裁定の場は王城の大会議室だった。


天井が高い。

壁は硬い石。

声がよく響く。


ここでは

理屈よりも声量が支配力を持つ。


感情が膨らみやすい構造だ。


俺は中央に立たされていた。


椅子はない。


座れないというだけで

立場の違いがはっきりする。


評価される側。

裁かれる側。


---


最初に口を開いたのは

騎士団の中堅幹部だった。


「結果は認めます」


前置き。


それだけで

次に来る言葉が予測できる。


「しかし」


やはり来た。


「あなたの判断は」


「我々の原則を踏み越えている」


踏み越えた。


その言葉には

怒りよりも恐れが混じっていた。


原則は守るためのものだ。

だが原則は同時に

責任を分散させる装置でもある。


俺はそれを外した。


---


魔法学院側も続く。


眼鏡をかけた教授が静かに言う。


「学生を」


「指揮に組み込んだ」


「訓練不足の者を」


「前線に近づけた」


事実だ。


だが微妙に角度がついている。


学生は前線には立っていない。

情報整理と拡声魔法の担当だった。


それでも

“危険に晒した”という印象は残る。


言い方ひとつで

評価は変わる。


---


エリスが歯を食いしばる。


「前線じゃない」


「誘導と情報整理だ」


声は低いがはっきりしている。


だが別の声がすぐに被せた。


「男が判断する必要があったのか?」


その瞬間。


空気が一段冷えた。


問題の核心が

やっと言語化されたからだ。


---


アリシアはまだ口を出さない。


彼女は知っている。


裁定は

一度荒れなければならない。


不満が表に出ないまま終われば

後で爆発する。


だから

まずは自然に荒れさせる。


それが統治だ。


---


騎士団の女性幹部が立ち上がる。


「この世界では」


「男性は守られる側です」


「それは差別ではない」


「統計です」


声は落ち着いている。

感情的ではない。


だからこそ強い。


拍手が少し起きた。


統計という言葉は

正しさの鎧になる。


---


「彼が成功したからといって」


「前提を崩していい理由にはならない」


「例外は制度を壊す」


その言葉は

ヴァレリアの思想と近い。


例外は希望になる。

だが同時に秩序の穴にもなる。


穴は広がる。


それを彼女たちは恐れている。


---


俺は黙って聞いていた。


弁明はしない。


ここで言葉を重ねれば

“感情的な男”という枠に収まる。


それは

彼女たちにとって都合がいい。


だから黙る。


黙ることも選択だ。


---


やがて。


アリシアがゆっくりと口を開いた。


「質問します」


場が静まる。


「あなた方は」


「彼の試験を」


「失敗だと思いますか」


誰も即答できない。


数字がある。


事実がある。


それを無視する勇気は誰も持っていない。


---


「数字上成功です」


ようやく誰かが答える。


「では」


アリシアは淡々と続ける。


「なぜ裁く必要があるのですか」


沈黙。


それが答えだった。


裁きたいのは失敗ではない。


“意味”だ。


---


そこでヴァレリアが動く。


「王女」


「裁くのは成功そのものではありません」


「成功の“意味”です」


声は冷静。


「彼のやり方が前例になれば」


「同じことを真似する男が出る」


「結果犠牲が出る」


理屈は通っている。


能力のない者が真似すれば

確かに失敗は増える。


成功は模倣を生む。


模倣は事故を生む。


---


アリシアは頷いた。


「ええ」


「だからこそ」




「制限を設けます」


ざわめきが広がる。


処罰ではない。


だが自由でもない。


---


具体案が読み上げられる。


・独断行動の禁止

・常時監督官の同席

・指揮権の剥奪

・訓練参加の制限


一見すれば保護だ。


暴走を防ぐ。

誤解を防ぐ。


だが実態は違う。


封じ込めだ。


力を削り

影響を薄める。


---


エリスが一歩前に出かける。


だが俺は首を振った。


今は黙る時だ。


反発すれば

「扱いづらい男」の印象が強まる。


それも向こうの思惑だ。


---


アリシアが最後に言った。


「あなたは失敗していない」


「だが」


「成功しすぎた」


それが公式見解だった。


成功が罪になる。


それが政治だ。


---


裁定は下る。


「試験は有効と認める」


「だが彼の方法は」


「制度の外でのみ例外的に許容する」


矛盾している。


制度の外で許容する。


つまり――


成功は認めるが

広げはしない。


政治としては完璧だ。


誰も完全には勝たず

誰も完全には負けない。


---


会議後。


廊下の石床がやけに冷たい。


ミレイアが小さく呟く。


「これ実質飼い殺しね」


「ええ」


俺は頷く。


「予想通りです」


力を与えず

責任だけを背負わせる。


上手いやり方だ。


---


セラが静かに言う。


「反発派は満足していません」


「ええ」


分かっている。


彼女たちは

“例外が存在する”こと自体を嫌う。


「次は“事故”を待つ」


失敗を待つ。


一度でも失敗すれば

すべてを否定できる。


---


その夜。


王都では噂が走った。


「男が都市を動かしたらしい」


「危険だ」


「甘やかすな」


言葉はゆっくりと刃になる。


正面からは斬らない。


だが背中を削る。


---


ヴァレリアは私室で独り言を言った。


「王女は逃がした」


「なら」




「私が止める」


それは宣言ではない。


決意だ。


---


同じ夜。


アリシアは私的記録に書く。


《彼を守れなかった》

《だが切ることもできなかった》


ペンを置き

小さく呟く。


「これが政治なのね」


守ることも

切ることも

どちらも完全にはできない。


だから

中途半端を選ぶ。


その選択の重さを

彼女は一人で引き受けていた。


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