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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第3章

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灰色地帯(グレイゾーン)を否定した男


それは計画ではなかった。

綿密に練った罠でも、誰かが仕掛けた工作でもない。

ただ、流れの中で、自然に起きた。


だからこそ――

誰も止められなかった。


---


灰色地帯グレイゾーン派が掲げていた約束の一つに、「夜間保護」があった。


行き場のない者を、夜の間だけでも中に入れる。

外敵や夜盗から守る。

滞在は一晩だけ。

理由も、過去も、問わない。


それは、灰色地帯グレイゾーン派が「自分たちは善意だ」と示すための、分かりやすい形だった。

思想ではなく、行動。

言葉ではなく、実例。


そして――

最も壊れやすい部分でもあった。


---


「そこよ」


ミレイアが言った。


俺は、すでに分かっていた。


「守れなかった瞬間、思想は自分を疑う」


「疑えなかったら?」


「暴力に変わる」


エリスが苦い顔をする。


「最悪だな」


「ええ」


ミレイアは淡々と頷いた。


「だから、あなたが見ている必要がある」


介入するためじゃない。

責任を背負うためでもない。


ただ――

何が起きるのかを、見届けるためだ。


---


その夜。


俺たちは、灰色地帯グレイゾーン派の拠点から少し離れた場所にいた。

直接は関わらない。

声もかけない。

手も出さない。


ただ、起きることを確認する。


それだけのはずだった。


---


夜半。


拠点の裏口が開く。

若い男が二人、外に出てきた。

見張り役だ。


以前の灰色地帯グレイゾーンにはなかった役割。

今の灰色地帯グレイゾーン派には、ある。


「来る」


セラが低く言う。


影が二つ、ゆっくり近づいてくる。

年寄りと、少年。


年寄りは足を引きずっている。

少年は不安そうに周囲を見回している。


「夜間保護を求めてきた」


セラは事実だけを伝える。


---


見張りの一人が声を上げた。


「名前は?」


年寄りは少し考え、かすれた声で答える。


「言えない」


「理由は?」


「忘れた」


沈黙。


少年が年寄りの袖を強く掴む。


「おじいちゃん」


見張りの顔が険しくなる。


「説明できない者は危険だ」


もう一人が続ける。


「基準に合わない」


基準。


その言葉が、夜の空気を冷たくした。


---


ミレイアが小さく息を呑む。


「来るわ」


俺は、動かなかった。


動けなかった。


---


見張りは小声で話し合う。


怒鳴らない。

殴らない。

丁寧に、理屈で結論を出す。


「今夜は満員だ」


それは嘘だった。


だが、誰もそれを指摘しない。


「他を当たれ」


年寄りは何か言おうとする。

だが、言葉が出ない。


少年の目が潤む。


---


その瞬間、俺は一歩踏み出しかけた。


エリスが腕を掴む。


「待て」


「でも」


「今出たら」


エリスの声は震えていた。


「全部が、お前の責任になる」


正しい。


だからこそ――

動けなかった。


---


年寄りと少年は、静かに去った。


背中が、闇に溶けていく。


その姿を見ながら、俺は理解した。


これが――

壊す準備の正体だ。


刃を振るうことじゃない。

叫ぶことでもない。


何もしないという選択が、誰かを切る。


---


翌朝。


知らせは早かった。


年寄りは、夜盗に襲われた。

命は助かったが、重傷。

少年は逃げ延びた。


死者はいない。


だが。


「守られなかった」という事実は残った。


---


灰色地帯グレイゾーン派は混乱した。


「なぜ入れなかった」


「基準に従っただけだ」


「その基準が間違っているんじゃないのか」


その問いは、すぐに別の声でかき消される。


「内部に裏切り者がいる」


「基準を緩めようとした者がいたはずだ」


思想は、自分を守るために、犯人を作り始めた。


---


倉庫。


ミレイアが静かに言う。


「壊れた」


俺は頷くしかなかった。


否定できない。


「俺が」


声がかすれる。


「止められた」


「ええ」


ミレイアは目を逸らさない。


「でも止めたら、次は別の誰かが切られた」


エリスが低く言う。


「それでも」


「選ばせてしまった」


俺は拳を握る。


---


その時、セラが静かに言った。


「来る」


「何が」


灰色地帯グレイゾーン派が、“敵”を決める」


「誰を」


セラは、迷いなく俺を見る。


「あなた」


沈黙。


それは避けられない帰結だった。


---


その夜。


灰色地帯グレイゾーン派の集会で、俺の話が出た。


灰色地帯グレイゾーンを否定した男」


「沈黙を装って壊そうとしている者」


噂は歪み、正義は簡単に塗り替えられる。


だが、勢いは止まらない。


---


俺は理解した。


もう「準備」ではない。


もう「様子見」でもない。


ここから先は――


壊しに行くしかない。


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