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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

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名前のない仕組み

最初に決めたのは、

大きなことはしない、ということだった。


革命なんてしない。

国を変えるとも言わない。

「これは正しい」と旗も立てない。


そんなことをした瞬間、

また目をつけられる。

また「危険だ」と言われて、

切り捨てられる。


だから俺は言った。


「小さく始めましょう」


焚き火の前で、静かに。

エリスもセラも、何も言わずに聞いていた。


---


「何をするんだ?」

エリスが聞く。


「“救う”って言わないことです」


「それじゃ分からん」


「分かります。ちゃんと説明します」


俺は地面に指で丸を描いた。


「ここは村でもないし、組織でもない」

「国の制度でもない」

「だから、大きな責任も持たない」


「曖昧だな」


「はい。わざとです」


はっきりさせない。

名前をつけない。


「中途半端な場所に、中途半端な人が来る」

「それでいいんです」


セラが短く聞く。


「対象は?」


「“追い出された人”じゃない」


「違うのか」


「追い出される前に、あきらめた人です」


制度に落とされた人じゃない。

最初から、どこにも入れなかった人。


---


最初の一人は、村の農夫の紹介だった。


「この村に、居場所をなくした男がいる」


夜、倉庫で会った。


男はうつむいて座っていた。

服は汚れているが、荒れてはいない。

ただ、目に力がない。


「俺、どこにも入れなかった」


戦えない。

魔力もない。

力も弱い。


だから、どの制度にも合わなかった。


---


「何をすればいい?」

男が聞いた。


「何もしなくていいです」


「は?」


「今日はここにいていい。それだけです」


「働かなくていいのか」


「働きたくなったら、やればいい」


「いつまで?」


「決めてません」


男は戸惑った。


この世界では、

必ず条件がある。

必ず見返りがある。


でも、ここにはない。


---


数日後。


男は自分から言った。


「手伝う」


農具の手入れを始めた。

頼んでいない。

評価もしない。


でも、止めない。


セラが小声で言う。


「変化が出ている」


「そうですね」


「数字は?」


「取ってません」


「非効率だ」


「はい」


「だが、安定している」


セラはそれを認めた。


---


エリスが焚き火を見ながら言う。


「騎士団なら、規則を作る」

「入れる条件を決める」

「報告を義務づける」


「ここではやりません」


「なぜだ」


「ここは制度じゃないからです」


「では何だ」


「休憩所みたいなものです」


戦えなかった人が、

もう一度息を整える場所。


名前もいらない。

登録もいらない。


だから、奪われない。


---


一週間後。


二人目が来た。

三人目も。


誰も宣伝していない。

だが、消えない。


形がないから、

潰しようがない。


---


ある夜。


最初の男が言った。


「明日、村を出る」


「はい」


「ありがとう」


それだけだった。


証明書もない。

記録もない。


だが、確かに何かが変わった。


彼は「何者か」にならなくても、

自分で歩き出せた。


---


俺は思う。


これは革命じゃない。

政治でもない。


ただの《灰色地帯グレイゾーン》だ。


誰かが切られそうになったとき、

一度だけ立ち止まれる場所。


それだけでいい。


大きくしない。

広げすぎない。


ただ、

息ができる場所を、

消えない程度に残す。


今は、それで十分だった。


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