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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

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幕間 騎士としての最終選択

追うと決めた瞬間から、

エリスはもう“騎士”ではなかった。


それでも、剣は持ってきた。


理由は単純だ。


――剣を手放すなら、自分の意思で手放したかった。


命令でなく。

処分でなく。

逃げでもなく。


自分で決めたかった。


---


王都を出る。


正規の門は通らない。

通行記録も残さない。

上司への報告もない。


それだけで十分な規定違反だ。


(分かっている)

(戻れない)


だが足は止まらなかった。


迷いはあった。

後悔も、少しはある。


それでも、立ち止まる理由にはならなかった。


---


街道に出る。


足跡は残っていた。


隠していない。

だが、わざと目立たせてもいない。


(あいつらしい)


二人分。


一つは歩幅が少し広い。

もう一つは軽い。


だが、歩調は揃っている。


(同行か)


胸の奥がわずかにざわつく。

その理由は、考えない。


---


二日後。


小さな村の外れ。

納屋の前。

焚き火の匂い。


エリスは剣を抜かなかった。


代わりに、静かに声をかけた。


「追いついた」


二人が同時に振り返る。


彼と、セラ。


どちらも、驚いていない。


「エリスさん」


彼が言う。


「来ると思ってました」


「だろうな」


短い返事。


「王城は?」


「出た」


「騎士団は?」


「置いてきた」


その一言で空気が変わる。


セラが低く言う。


「それは裏切りだ」


「違う」


エリスは即答した。


「選択だ」


---


焚き火の前。


三人で座る。

夜の風が冷たい。


エリスは剣を膝に置いた。


「私は騎士としてやるべきことをやった」


静かに言う。


「命令に従い、責任を負い、守るべき者を守ろうとした」


「だが――」


声が少し低くなる。


「守れなかった」


「エリスさん」


彼が口を開く。


「遮るな」


ぴたりと止める。


「これは私の話だ」


焚き火がぱち、と鳴る。


「騎士は制度の中で剣を振るう」


「命令の下で動く」


「感情は持ち込まない」


「それが正しいと信じていた」


剣を見る。


「だが正しさが、人を切り捨てる瞬間を何度も見た」


「私は、それを止められなかった」


沈黙。


誰も否定しない。


---


「だから――」


エリスは、剣を地面に置いた。


金属が土に触れる音が、やけに大きく響く。


「私は騎士をやめる」


空気が変わった。


確実に、何かが終わった。


セラが淡々と聞く。


「後悔は?」


「ある」


即答。


「だが、選ばなかった後悔よりはマシだ」


彼がゆっくり息を吐く。


「俺のせいで」


「違う」


きっぱりと言う。


「君は私に選ばせただけだ」


「それが私の限界だった」


---


夜が深まる。


「これからどうするんですか」


彼が聞く。


エリスは少し考える。


「守る」


「何を?」


「人を」


「制度の外で」


「剣を使わずに」


セラが眉をひそめる。


「非効率だ」


「分かっている」


「だが、もう命令で剣は振るわない」


焚き火を見つめたまま言う。


---


その夜。


エリスは鎧を外した。

胸の階級章を外し、地面に置く。


「軽いな」


ぽつりと漏らす。


彼が言う。


「俺は守られる価値のある人間じゃない」


エリスはまっすぐ彼を見る。


「価値で守らない」


「選んだから守る」


それだけだ。


セラが静かにうなずく。


「合理性はない」


「だろうな」


「だが安定している」


その評価に、エリスは小さく笑った。


---


翌朝。


三人は並んで歩き出す。


元騎士。

元暗殺者。

制度から外された男。


肩書きは、もういらない。


ここから先は、誰の命令でもない。


エリスは振り返らなかった。


剣を置いた場所を。


それが、彼女の最後の決断だった。


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