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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第1章

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王女介入 疑念は、政治になる

呼び出しは、本当に突然だった。


学院の廊下で待機していると、騎士団の伝令が早足でやってきた。


「王城より通達。“件の被観測者”を即時、謁見の間へ」


被観測者。


自分のことだと分かるまで、一瞬かかった。


(…ああ)


背中を、冷たいものがゆっくり這い上がる。


エリスの表情が、ほんのわずかに固くなる。


「私も同行する」


「当然です」


伝令は形式的に頭を下げた。


「王女殿下の、直々のご要望です」


――王女。


その言葉で、空気が変わった。


学院内の噂や隔離は、まだ“内部処理”だった。

だが王城が動いたということは、国が俺を認識したということだ。


(政治、か)


逃げ場のない種類の話だと、直感で分かった。


---


王城は、魔法学院とはまったく違う緊張感を持っていた。


白い石の壁。

高い天井。

無駄のない装飾。


どれも静かだが、はっきりと主張している。


――ここで決まったことは、覆らない。


謁見の間に通される。


赤い絨毯の先に、一人の少女が座っていた。


年は俺と大きく変わらない。

だが、姿勢と視線が違う。


「初めまして」


澄んだ声。


「私は、王女アリシア」


微笑みは柔らかい。

だが目は、完全に冷静だった。


(この人、エリスより危険だ)


感情で動かない。

判断で動く人間の目だ。


「楽にして」


と言われても、できるわけがない。


「あなたのことは、報告で把握しています」


王女アリシアは、淡々と続ける。


「魔力を持たず、魔法を拒否し、それでいて世界に“適合している”存在」


(全部知られてるな)


「まず一つ確認します」


視線が、真っ直ぐ刺さる。


「あなたは、この国に敵意を持っていますか」


遠回しな言い方は一切ない。


「…ありません」


迷わず答える。


「あるなら、ここに来ていません」


一瞬、沈黙。


エリスの視線を感じる。


(言い過ぎたか?)


だが王女は、小さく頷いた。


「良い答えです」


次の質問が来る。


「あなたは、自分が“特別”だと思っていますか」


少しだけ考える。


「…思いたくはありません」


正直に言う。


「でも、普通ではない扱いを受けている自覚はあります」


王女の目が細くなる。


「誠実ですね」


そして、話題が変わった。


「この世界では、一般的に女性の方が男性より魔力適性が高く、戦闘能力も上です」


それは、すでに実感していた。


エリス。

リリア。

騎士団の面々。


前に立っているのは、ほとんど女性だ。


「加えて」


王女は、わずかに声を落とした。


「男性の出生率は、女性の約三分の一です」


思わず、目を瞬く。


(三分の一?)


「数百年前から続く、世界的傾向です。原因は不明」


つまり、この国だけの事情ではない。


「結果として」


王女は結論を出す。


「男性は希少です」


「特に、魔力を持たない男性は」


胸の奥が、重くなる。


「あなたのような存在は、国家にとって“資源”になり得ます」


エリスの空気が、わずかに張り詰める。


「ですが」


王女は続ける。


「同時に、国家を揺るがす不安定要素でもある」


逃げ道のない整理。


「だからこそ」


王女アリシアは、はっきり言った。


「あなたを、王国の管理下に置きます」


「拒否権はありません」


それは宣告だった。


脅しでも、怒りでもない。

ただの決定。


謁見の間が静まり返る。


俺は、一歩だけ前に出た。


「一つ、条件があります」


エリスが息を呑む。


王女は、わずかに口角を上げた。


「聞きましょう」


「俺を」


言葉を慎重に選ぶ。


「“モノ”として扱わないでください」


「希少だから、便利だから、危険だから――そういう理由だけで判断しないでほしい」


「一人の人間として見てほしい」


沈黙。


長い沈黙。


王女はゆっくり目を閉じ、そして小さく笑った。


「難しいことを言いますね」


だが、その笑みは嘲笑ではない。


「ですが、嫌いではありません」


エリスが、わずかに安堵したように見えた。


「では、こちらも条件を」


王女は静かに言う。


「あなたは、この国で生きる限り、常に“選ばれる側”です」


「利用も、保護も、監視も、すべてその延長線上にある」


「それを忘れないこと」


それは脅しではない。


現実の説明だ。


「…理解しました」


そう答えるしかなかった。


---


謁見が終わり、廊下に出る。


エリスが、低く言った。


「…すまない」


「謝らないでください」


俺は正直に言う。


「むしろ、はっきりしてよかったです」


曖昧な善意より、明確な立場の方が楽だ。


「これで俺は――」


少し考えてから続ける。


「学院の“問題児”から、王国の“案件”になりましたね」


エリスが苦い顔をする。


後ろから、足音。


「…聞いた」


リリアが追いついてくる。


いつもの軽さはない。


「ごめん。私、甘く見てた」


三人で、しばらく立ち止まる。


王都の空気が、重く感じる。


でも、俺の中では一つだけ整理がついた。


(何と戦っているかは、分かった)


個人じゃない。


騎士でも、学院でも、王女でもない。


――世界の構造そのものだ。


男が少ない世界。

魔力が女性に偏った世界。

そして、そこに“例外”として落とされた俺。


俺は、どう扱われるかを選べない。


でも。


(どう在るかは、選べるはずだ)


利用される存在になるのか。

守られる存在になるのか。

それとも、自分で立つのか。


王都の空の下で、俺はようやく理解した。


これは俺の目指すべきハーレムじゃない。


少なくとも、今は。


これは――

自分が“何者になるか”を決めさせられる物語だ。


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