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ゴルフのそのき  作者: 園木まさ


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9/21

第9話 いざ!河川敷へ!

マサ(父) 34歳

カズ(息子) 3歳11か月


「最近の課題は何ですか?」

「うーん、ウッドが当たらないんですよね。ウッド持った時に変なとこにいったり曲がったりしてスコアを崩しているような気がします」

 苦手意識のある3番ウッドを持ちながら、いつも通り、インストラクターのカミシロさんのレッスンを受けている。

「右にいくことと、左にいくこと、どっちが多いですか」

「ああ、前は右ばっかりでしたけど、最近左にもいきますね」

「そうですね。じゃあ、ユーティリティを練習しましょう」

「え、ユーティリティですか?ウッドは?」

「3番ユーティリティがちゃんと打てたら、だいたいどれくらい飛びますか?」

「うーん、いいときで、200いくかいかないくらいですかね」

「それがしっかり打てていれば、ウッドいらなくないですか?」

「ええ!?そ、そうですかね?」

「5番ウッドで飛距離どれくらいですか?」

「まあ、210くらい?」

「その10ヤードの差って、そんなに必要です?仮にパー5の2打目でユーティリティを使ったとして、3打目で使う番手がひとつ変わるくらいじゃないですか」

「うーん、確かに…」

 理屈で考えると、確かにそうだ。どこにいくかわからない3番と5番のウッドを使うくらいなら、比較的安定性のある3番ユーティリティを使った方が「事故」の確率は低い。スコアには直結するだろう。

「ユーティリティが使えるようになってくると、ウッドも使えるようになってきますから、練習では、まずユーティリティを中心にしていきましょう」

「はい。わかりました」


 カシュッ!


 我ながら、ウッドに比べてユーティリティはそれなりにちゃんと打てる。形はちょっと似ているのに、なぜだろう。長さが違うからだろうか。

「はい。『さかなつり』ね」 

 ユーティリティの練習に勤しむ横で、カズも一緒に練習している。カズのセッティングにはユーティリティもないしウッドもない。ドライバーの次は7番アイアンなのだが、いずれも結構ちゃんと当たっている。ドライバーの飛距離も40~50ヤードくらいになってきただろうか。7番アイアンで30ヤードといったところか。それに一切曲がることもない。飛距離がないのだから当然といえば当然なのだが、持ち上げたクラブを重さに任せて「落としている」だけのようにも見える。もうすぐ4歳になるとはいえ、当然腕力なんてないから、身体全体を使っている。いわゆる「手打ち」なんていうのは、やりたくてもできない。

「やっぱり空振りしませんね。すごいですよ」

 相変わらずカミシロさんはカズの才能に惚れてくれている。

「ここのショートコースも何回か回りましたから」

「3歳でコース回っているなんて、信じられないですよ!」

「実は次のステップアップとして、河川敷デビューを考えているんですよ」

「ええ!そうなんですか?」

「はい。コースに電話で確認したら一応オッケーだったので、週末に行ってこようかと」

「すごいですね!」

 そう。一応空振りもせず、しかもボールはまっすぐしか飛ばない。そうであれば、ほとんど真っ平な河川敷のコースであれば、ちゃんとラウンドできるのではないか。春になってきて、週末は天気も良く、暖かそうなので「河川敷デビュー」をしてみようと考えたのだ。

「じゃあ、その時は、一回ウッド使う場面ではあえてユーティリティだけ使ってみてはどうですか?」

「え、あー、うん。考えてみます」 

 アマチュアゴルファーあるあるだと思うが、何となく「持っているのに使わない」という選択をすることに抵抗感があった。「もったいない」と思ってしまったり「それじゃあ気持ち良くないじゃん」なんて思ってしまっている自分がいる。「自分の実力を見極めて、やれることとやれないことをはっきりして確率の高い選択をする」というのも上手なゴルファーの考え方だと頭では何となく理解してはいるのだが……


 週末となり、カズと一緒に河川敷のゴルフ場を訪れた。知人と一緒に何度も来ている場所だが、カズにとっては、初めての「広い」ゴルフコースだ。さすがに3歳児の行動はまだまだ読めないところもある。最悪、「今日はもうやめる」という可能性もある。誰か一緒にラウンドすると迷惑がかかるかもしれないので、今回はふたりだけでハーフの9ホールとしていた。

「よーし、パパから打つよ。見ててね」

 同じティーから打つのはさすがに大変そうだったので、1打目を自分が打ち、2打目地点からカズもティーショットしてスタートする、というやり方にした。ここの河川敷コースはそんなに距離もない。このやり方なら、(自分のティーショットがうまくいった前提で)だいたいパー4は残り100~150ヤード、パー5は200~250ヤードくらいになるはずだから、カズの飛距離でも、ボギーオンかダボオンくらいは狙えるはずだ。何せ「一切曲がらない」のだから。


 カンッ!


「お、まあまあ上手くいった」 

 しっかりと真っすぐとんだボールを追いかけて、カートに乗る。フェアウェイ乗り入れ可能な河川敷のコースを進んでいく。

「おお!!」

 カズにとっては、カートで風を切って進むのもまた、面白かったらしい。とても楽しそうだ。


 2打目地点にやってきた。

「さあ、ここからカズも打つよ。だいたい100ヤードくらいかな」

 ティーアップしてドライバーで打たせてみる。


 カンッ


「おお!ナイスショット」

 練習場のとおり、真っすぐ飛んだボール。飛距離はだいたい50ヤードか60ヤードくらいだろうか。使い古したブリヂストンのボールだったけれど、練習ボールではなく、本球な分、ちょっと飛ぶようだ。

 残り100ヤードくらい。自分はピッチングで打つ。ミドルアイアン以上は苦手だが、ピッチングくらいだとそれなりに自信がある。


 カシュッ!


「お、乗ったかな」

 これくらいの距離なら、やっぱりそこそこグリーンを狙える。

 カズの2打目。


 カッ!


 7番アイアンで打ったボールは、30ヤードくらい飛んだだろうか。グリーンまでは届かなかったけど、やっぱり真っすぐ飛ぶ。思ったよりいいペースでグリーン周りまでやってきた。カズは悩みがないので打つのも早い。

 グリーンまで約10ヤード。今度はウェッジだ。


 カシュッ


 ちょうどいい具合に飛んで、無事にボギーオン。

「おお、やるじゃん!」

 ふたりともパットを2回で決め、父はパー、カズはボギースタートとなった。


 その後も、カズは真っすぐ真っすぐ飛ばして、予想通りだいたいボギーオンかダボオンで進んだ。パットは3パット以上することもあったけれど、2人しかいないし、ラウンドの時間的なペースとしては、全く問題なく進んでいた。

 というか、コースに来て初めて気が付いたが、自分が変なところに打ってしまうと、カズの面倒を見ながら進むのが難しくなる…なるべく自分が先にある程度ちゃんとしたところに打って、カズの面倒をみながら真っすぐ進まなければならない。自然と安全に安全にを心がけている自分がいた。

 さて、6番ホール。少々短いパー5がやってきた。ティーショットはまずまず。2打目残り260ヤード。風がフォローなので、うまくいけばグリーン手前30~50ヤードくらいまでいける可能性もあり、3番ウッドを持ちたくなるところだ。でも、今日は違う。カズがいることもあり、安全に安全にを心がけなければならない。

「ユーティリティでいってみるか」

 無難に打った一打は、自分の中では会心の当たりで、真っすぐキレイに飛んだ。

「今のナイスショットじゃない?」

 そうやって、いつもと違う心理状態でとにかく「安全に真っすぐ」を心がけて進んだラウンドは、気づけばハーフ9ホールだけのラウンドとはいえ、43で上がっていた。この河川敷コースはパー35の設定なので、8オーバーということになる。18ホールでパー72に換算すると16オーバー。つまり、88だ。目標の90切り達成!といきたいところだが、さすがにほとんど真っ平で距離的にも短い河川敷のパー35のコースで、これを実績とするわけにはいかない。 カズのスコアも数えてみると、62で上がっていた。普通62も叩いていると、色々トラブルもあるはずだが、ほとんどトラブルもなく、真っすぐ真っすぐ進んでいた。時間的にも、誰にも迷惑をかけることもないと胸を張れるラウンドだった。

「これだけ真っすぐ打てるなら、もしかして……」

 真っすぐ打てない人には不要かもしれないフェアウェイウッド。真っすぐ真っすぐ打てるなら…?

 帰ってから、また、新しいクラブを探す情報の海への冒険を始める自分がいた。

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