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ゴルフのそのき  作者: 園木まさ


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2/21

第2話 人生初打ち??

マサ(父) 33歳

カズ(息子) 2歳9か月


「お、だんだん当たる確率上がってきてるんじゃない?」

「いや、練習では当たるんよ。コースで当たらんのよ」

 生まれて2度目のマイクラブを手に入れて「1年以内に100切り」という目標に向かってその気になってから、随分と練習に行く頻度も増えてきた。多いときは週に3~4回くらい練習場にいるのではないだろうか。今日は同僚のクマダと一緒に練習に来ている。自分で言うのも何だが、練習場では随分とちゃんとクラブがボールに当たるようになってきたし、そこそこ飛ばせるようになってきた。「空振りはしない」という意味で言えば、今日は打率10割じゃないか?

 打率は確かにいいのだが、ナイキのドライバーを手に、フルスイングすると、ボールはキレイに練習場の右側のネットへ飛んでいく。初心者にありがちのいわゆる「スライス」だ。

「突っ込みスイングになってますね。それでスライスします」

と、よくレッスンで注意されるのだが、自分では突っ込んでいるつもりはない。左肩の開きがいけないそうだけれど…

 あれやこれや悩みながらドライバーを振っていると、隣で同僚のクマダが小気味よくドライバーを飛ばしている。ちゃんとしたドローボールで、250ヤードくらいは飛ばしているだろうか。

「お前やっぱ飛ぶよな。野球やってたからかな」

「うーん。そうかも」

「ゴルフではサッカー経験何も役に立たないよ。良くて230くらいしか飛ばんもん」

「今何意識して練習してるん?」

「左肩開かないようにって言われてるね」

「ああ、それ、野球でもよく言われたわ」

「サッカーじゃそんなこと言われたこと1回もないわ」

サッカーではそもそも身体を捻ったりねじったりする動きはないし、棒も使わない。道具を使うスポーツとそうでないスポーツとで、どうやら動きの違いがあるようだ。

「そういや、左肩開かないようにするドリルみたいのがあって、左足一本で打つと直るかもよ?おれもまだたまにやるもん」

「うん? なにそれ」

クマダが肩の開きを抑えるという「左足一本打法ドリル」を教えてくれた。ボールなしで何となく真似してみると、なるほど、確かに左足一本で打とうとすると左肩は開かない。

「試しにそのまま打ってみ?」

「いや、無理やろ」

「いや、結構このままでも打てるんよ」

 そう言うと、クマダはキレイに左足一本でボールを打って見せた。

「おお!マジか?それじゃあ」

 

 ドンッ!!!


 ドライバーは、見事にティーアップされたボールのだいぶ手前のマットを叩いた……

「無理やろ、これ(笑)」

 今日は10割をキープしていた打率が、ついに9割台になってしまった!その後もしばらく二人で練習して、帰路につくこととなった。結局空振りしたのはその1回だけだったので、打率10割を達成できなかったのが少々悔やまれる練習だった。


 家に帰ると、カズが車のおもちゃで遊んでいる。相変わらず車や電車が好きだ。そういえば自分も車や電車が好きだった時期があったような気がするが、今は全くそこへの興味はない。「車が趣味」という大人もいるが、自分はどちらかと言えば「車は移動用の手段」であって、動いてくれれば特に問題ないし、それ以上は望まない。むしろ運転はあまり好きではないので、早く完全自動運転の車が登場しないかと待ち望んでいる。「三つ子の魂百まで」という言葉や、我が家で行った「選び取り」という儀式が示すとおり、幼少期から変わらない興味関心もあれば、年を重ねるとともに移り変わる興味関心もあるというのが人間というものだろうか。 

「パパが帰ってきたから、お外で遊んで来たら」

 妻は夕食の支度があるのであろう。その間忙しいので外へ行くよう促してくる。

「よし、じゃあ、外で遊ぼうか」

「いくー!!」

 我が子ながら、素直でよろしい!ふと部屋を見ると、「選び取り」を行う際に買ったプラスチックのゴルフセットが転がっていた。相変わらずプラスチックのキャディバックを転がして遊ぶことはしていたが「ボールを打つ」という本来の使い方はほとんどしていないようだ。

「これも持っていくか」

 サッカーボールと一緒にこれも持っていくことにした。


 いつもの公園に行くと、今日はほとんど人もいなかった。未だにサッカー少年となってもらうことを夢見る父は、サッカーボールを転がして蹴って遊ばせようとしてみたが、すぐに飽きてしまった。その名に反して、サッカーへの興味関心はそうでもないようだ。せっかく持ってきたので、ゴルフクラブを振らせてみることにした。 

「こうやって打つんだよ」

 手本という手本にもならないが、一応最近練習しているスイングを見せてみる。

「やってごらん」

 ティーアップしたプラスチックのボールにアドレスするカズ。クラブの持ち方は…左右が逆で、右打ちなのに左手が下になっている。バックスイングでクラブを持ち上げて…随分トップでの間が長い。


 パコンッ!!


「おお!いった!すげぇ」 

見事にボールをヒット!音が気持ちよかったのか、本人もご満悦だ。 

その後も何度かティーアップして打たせてみると…


パコンッ!

パコンッ!!

パコンッ!!!


 空振りをしない!飛ぶ方向はさておき、一応全部当たるじゃないか。

飛距離は…5ヤードくらいかな。


「やるな!カズ!」

「『パパもちょっと打たせて』って言ってぇ」

「パパもちょっと打たせて!」

「いいよ!」

こうして、思いがけず始まった本日2回目の練習は息子と二人での時間となった。

「当たると楽しい!」

 それがゴルフの楽しさの原点なのだろう。楽しさよりも先に「100切り」という目標が先にあった自分は、そのことを忘れていたのかもしれない。その昔プラスチックのクラブを振り回していた自分も、スコアや飛距離なんかの数字は気にせず、こんな感じだったのだろうか。思いがけずゴルフの原点を見た気がした。

 後に、まだまだその気になるにはほど遠いものの、カズが発した「『パパもちょっと打たせて』って言ってぇ」という言葉が、この子の個性を見る上で大事なことであると気が付くのだが、それはもう少し後のことだ。

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