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ゴルフのそのき  作者: 園木まさ


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14/21

第14話 飛べ!いざフェニックストーナメントへ①

マサ(父) 35歳

カズ(息子) 4歳7か月


「いや、もしかしたらホントに天才かもしれん」

「そうなん?」

「いや、これちょっと見てみてよ」

「んん?」

 少々興奮気味に、珍しく練習場で一緒となったゴルフ熱がそれほどでもない友人のシロタに動画を見せる。今撮影したばかりのカズのスイングスロー動画だ。

「ほら、ここ。ちょっとジャンプして打ってるでしょ?」

「んー、そうだけど。それがどしたのよ?」

「これは『ラビットインパクト』とか言われる打ち方で、世界のトップ選手とかもやってるスゴ技なわけよ。ジャスティン・トーマスとか、ローリー・マキロイとか」

「ふーん」

 やっぱりシロタはあまり関心がなさそうだ。

「ジャンプすると何がすごいわけ?」

「PGAツアー選手とかもやってる『地面反力』を使ったスイングってやつよ。これがあると飛ぶんよ。古くはタイガー・ウッズも足をピーンッてして打ってたでしょ」

「いや、そんなとこ見てないし。なんで上に飛ぶと横に飛んでいくわけよ?」

「『地面反力』を使うことでブレーキをかけると、ヘッドが加速するってわけよ」

「なんかよくわからんけど……」

 アマチュアゴルファーあるあるだと思うが、最近はよく空いた時間でスイング動画を見て研究をしている。イメージトレーニングや、飛距離アップのための豆知識を日々色々なYouTubeチャンネルなどから仕入れているのであるが、その過程で見つけたのが「地面反力」という言葉と「ジャンプしながら打つ」という方法だった。

 昔は「精度が落ちる」ということで敬遠されていた打ち方のようだが、近年のトッププロのスイング研究からすると「飛距離を出す」という意味では理にかなっているとのことだ。自分でもやってみたが、理屈がわかったからできるというものでもなく、素人がやっても全然当たらない。当たり前だが、ジャンプしながら打とうとするとタイミングがずれたり、フェースが変な方へ向いてしまう。ジュニア時代から練習を重ねているトッププロだけが使いこなせる技ということだ。

 そんな世界のトッププロが実践するスイングの兆候が、最近のカズのスイングに現れ始めたのだ。カミシロコーチから「天才」と称されてもいまいち「?」だったが、この兆候を見つけてから、もしかして本当に才能があるのかもしれないと、親である自分も思い始めた。最近は心なしか練習する球数も時間も増えている気がする。

「いや、まあ、しかし確かに4歳でよく打てると思うよ。すごいね、カズ。おれなんかすぐ抜かれちゃいそうだわ」


 カン

 カンッ!

 カンッ!!


 カズは、黙々とティーアップされたボールを打っている。「すごいね」と言われて、ちょっと嬉しそうだ。ドライバーの飛距離も80ヤードくらいにはなってきているだろうか。

「あ、そういや、今度ダンロップフェニックスに松山英樹が凱旋するんじゃなかったっけ?」

「ああ、そういえばそうらしいね」

「松山もそのなんとかってやつなの?」

「いや、松山はそうじゃない。どっちかっていうとジャンプしないで打ってるよね」

「ああ、そうなんだ。それにしたって、世界の選手もちょっと来るでしょ。せっかくだから、行ってみたら?」

「ちょうど行ってみようかなって思ってたんだよね。宮崎って、どうやって行くのよ?電車?」

「いや、車でしょ。何言ってんの」

「え、そうなの?新幹線とかないの?」

「いやー、まだ九州のことがわかってないね。ソノキさん」

 実は、私は九州で暮らしているが、根っからの九州人というわけではない。東京で生まれ育って、学生時代までずっと東京だった。仕事を始めて、結婚してから妻の実家のある九州で暮らしている。未だに九州の言葉や地理やら、よくわかっていないところがある。

「宮崎は車で4時間ってとこよ。新幹線は通ってないよ」

「え、そうなの?4時間運転??」

 話題に上って、行ってみようという気持ちが少し湧いていたのだが、一気に冷める。車の運転は正直あまり好きではない。4時間も運転したことは、今まで一度もない。

「自分で運転するのが嫌だったら、高速バスもあるかな。いずれにせよ、結構遠いし、気合入れないと行けないのよ。宮崎は」

「4時間あったら、博多で新幹線乗れば名古屋くらいまで行けちゃうじゃん。宮崎ってそんな遠かったのか…」

「せっかくだから、『天才』の英才教育のため、行ってみたらいんじゃね?」

「帰って家族会議だな」


 練習を終えて家に帰り、夕食を取りながら宮崎行きの話題を食卓に上げる。

「今年のダンロップフェニックストーナメント、松山英樹も凱旋出場するらしいから、行ってみない?」

「私はいいよ。どうやって行くの?」

 妻はあっさりとOKだった。ゴルフ目的とはいえ、旅行は旅行だ。特に反対する理由はないらしい。

「それが問題でさ。車だと4時間だって」

「私は運転できないよ」

「うん。おれも運転したくない。高速バスがあるらしいから、バスで行こうか」

「カズ。バスに乗れるって。バス!松山英樹に会いに行けるって!」

「おお!」

 カズがどちらに反応しているかは、よくわからないが、おそらく「松山英樹」より「バス」の方であろう。カズは車をはじめ、乗り物が大好きだ。バスにはまだ乗ったことがない。

「よし。それじゃあ早速予約を取ろう」

 パソコンを開き、インターネットで予約を試みる。確かに、改めて調べてみると、宮崎は遠かった。物理的にというより、「交通手段の乏しさ」が由来の遠さだ。高速バスだと、片道4時間以上かかるようだ。大会は4日間なので、最終日を観戦したいところだが、カズがそんなにしっかり観戦できるかどうかもわからない。3日目を観戦することにした。金曜日の夕方に出発して、夜にホテルに到着して、翌日観戦して帰る、というプランだ。4日目をテレビ観戦した時に「実際に行った」という経験があれば、より楽しくテレビ観戦できるかもしれないという思惑もあった。

 それと、ゴルフ場の近くに「フェニックス動物園」というのもあるらしい。 観戦に飽きてしまったら、プランBでそちらに行くことも考えられる。そうはなってほしくないが……

「よし!チケットも買ったし、これで大丈夫。松山英樹のショット、楽しみだね!」

「イェーイ!」

 アマチュアゴルファーとして、「趣味はゴルフです」と言えるくらいまでは上達した気でいる。サッカーや野球観戦は行ったことがあるが、ゴルフ観戦は初めてのことだ。どんな体験ができるのか、今から楽しみだ。それに、世界水準のスイングの「兆候」を見せ始めているカズが世界水準のゴルフを間近に体験したら、ゴルフへの興味ももっと湧いてくるかもしれない。そんな期待も込めて、初めての宮崎行きにその気になり、胸を高鳴らせるのであった。

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