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GATEKeePer−世界にその価値はあるのか−  作者: 大福


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第7話 葬送から始まる


戦争は終わった。

少なくとも、人々はそう思っていた。


空の亀裂は消えた。

境界の崩壊も止まった。


だが。

還れなかった者達は残っていた。

泣いている。叫んでいる。苦しんでいる。

終われない。還れない。


世界は救われた。

だが、彼らだけが救われなかった。


英雄達が武器を向ける。

斬る。倒す。消える。

それでも。また現れる。終わらない。


「何故だ。」

「戦争は終わったはずだろ。」

誰も答えられない。


神代は旅を続けていた。

村。街。廃墟。

行く先々で、還れなかった者達と出会う。


白い槍。白い光。

消滅。終わる。

最初はそれだけだった。


だが、怪物じゃない。人だった。

人生があった。家族がいた。終われなかっただけだった。


神代は槍を握る。

白い光。消滅。

また一つ、茨が増える。

冠から肩へ。肩から腕へ。

忘れないために。背負うために。


その日。

神代は一人の還れなかった者と出会う。

古い鎧。傷だらけの剣。

敵意はない。ただ、神代を見ていた。


どこかで見た顔だった。

違う。知っている。

子供の頃、何度も聞いた英雄譚。

戦場で語られた英雄──その姿は、まるで昔の英雄そのものだった。


男が口を開く。

「お前は何の為に我々を拒絶する?」


神代は答えない。


男は続ける。

「我々は敵か?」

「怪物か?」

「悪か?」

「俺達は戦った。守った。死んだ。それでも終われなかった。」


沈黙。


神代は白い槍を見る。

暖かい。まるで、誰かの手を握っているようだった。

思い出す。


「全部救いたい。」

「手を離さないでね?」


神代が口を開く。

「拒絶しない。」

神代は首を振る。

「違う。」

「拒絶できない。」

「お前達を敵だとは思えない。」

「帰れなかっただけだ。終われなかっただけだ。お前達も被害者だ。」


長い沈黙。

男は笑った。悲しそうに。安心したように。


男は剣を地面へ突き刺す。

そして、跪く。

まるで、英雄が王へ忠誠を誓うように。


「なら導いてくれ。」

「王。」


周囲の還れなかった者達も動かない。

ただ静かに、茨の王を見つめていた。

終わりを求めるように。救いを求めるように。


その時、一人の還れなかった者が、白い布を差し出す。

神代はそれを見る。

「これは。」


英雄が答える。

「葬送の布だ。」

「我々を送る者の証。」

「我々の王の色。」


神代は黙る。

黒い鎧を見る。英雄だった頃の証。守れなかった証。


神代は黒を脱ぐ。

<h3>そして、白い布を羽織る。</h3>


風が吹く。白い布が揺れる。

白い槍。白い外套。白い髪。茨の冠。


誰かが呟く。

「茨の王。」


神代は否定しない。

ただ歩き出す。


終わらせるために。

導くために。

背負うために。


王は歩き続ける。

還れなかった者達に囲まれながら。


誰かが言う。

「王。」


神代は振り返らない。

「導いてくれ。」


王は歩き続ける。


そして。

景色が変わる。


見知らぬ街。

見知らぬ空。

見知らぬ人々。


青年が立っていた。


「……ここは?」


覚えている。

名前。悠真。

年齢。それだけだった。


それ以外は、何も思い出せない。

家族。友人。住んでいた場所。

何をしていたのか。何が好きだったのか。

何も分からない。


「俺は……。」

言葉が続かない。


知らない街を歩く。

人の声。車の音。夕焼け。

初めて見るはずなのに、何故か懐かしい。


その時だった。

歌が聞こえた。


悠真が足を止める。

広場。

一人の少女が歌っていた。


綺麗な声だった。

悲しい歌だった。

なのに、不思議と暖かかった。


悠真は立ち尽くす。

知っている気がした。食べたことがある気がした。大切だった気がした。

でも、思い出せない。


少女は歌い続ける。

悠真はただ、その姿を見つめていた。


少女がふと顔を上げる。

目が合う。ほんの一瞬。

少女は少しだけ微笑んだ。


人混みが横切る。

次の瞬間、そこにはもう、誰もいなかった。


「……誰だったんだ。」


夕焼けの空。

知らない街。知らない世界。


それでも。

物語は始まる。


自分が何者なのか。

それを探す旅が、静かに始まった。


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