第6話 定め
戦争は終わった。
世界は救われた。
---
英雄達は笑っていた。
泣いていた。
抱き合っていた。
---
神代だけが笑わない。
---
英雄本部。
---
神代と天照。
二人だけ。
---
神代が口を開く。
---
「答えろ。」
---
「何故リディアだった。」
---
天照は静かに答える。
---
「彼女だったからだ。」
---
「世界を救えた。」
---
沈黙。
---
「一人の犠牲で世界は救われた。」
---
「それの何が不服なのか。」
---
神代の拳が震える。
---
「不服?」
---
「当たり前だろ。」
---
「あいつは生きていた。」
---
「帰る場所があった。」
---
「約束もあった。」
---
天照。
---
「それでも彼女は選んだ。」
---
「私は尊重した。」
---
「それが定めだった。」
---
神代。
---
「定め?」
---
「ふざけるな。」
---
「救えないなら諦めるのか。」
---
「選ぶしかないなら選ぶのか。」
---
天照。
---
「世界を守るためなら。」
---
沈黙。
---
神代は目を閉じる。
---
「もし。」
---
「あれがリディアじゃなかったら。」
---
「俺は受け入れたのか。」
---
「仕方なかったって。」
---
「世界のためだったって。」
---
神代は笑う。
---
自嘲するように。
---
「多分。」
---
「受け入れてた。」
---
長い沈黙。
---
「結局俺は。」
---
「リディアだったから許せないだけかもしれない。」
---
神代は空を見る。
---
思い出す。
---
「全部救いたい。」
---
「手を離さないでね?」
---
「全部お願い。」
---
神代は目を閉じる。
---
「いや。」
---
「あいつなら戦った。」
---
「別の道を探した。」
---
「最後まで諦めなかった。」
---
「俺は。」
---
「見ていることしか出来なかった。」
---
沈黙。
---
神代は白い槍を見る。
---
思い出す。
---
泣いていた還れなかった者。
---
叫んでいた還れなかった者。
---
終われなかった者達。
---
神代が呟く。
---
「お前達は怪異と呼ぶ。」
---
「敵と呼ぶ。」
---
「俺には違って見える。」
---
「帰れなかっただけだ。」
---
「終われなかっただけだ。」
---
「被害者だ。」
---
天照。
---
「それでも人を殺す。」
---
神代。
---
「分かってる。」
---
「だから俺が終わらせる。」
---
「俺以外にやらせない。」
---
「俺が背負う。」
---
神代は槍を握る。
---
「俺は探す。」
---
「誰も犠牲にしない方法を。」
---
「見つからなくても探し続ける。」
---
「あいつならそうした。」
---
神代は背を向ける。
---
天照。
---
「神代。」
---
神代は止まらない。
---
「もう英雄じゃない。」
---
風が吹く。
---
白い髪が揺れる。
---
茨が軋む。
---
赤い雫が地面へ落ちる。
---
英雄 神代はこの日死んだ。
---
そして。
---
還れなかった者達の王。
---
茨の王が歩き始める。




