表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GATEKeePer−世界にその価値はあるのか−  作者: 大福


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/32

第14話 覚醒



山を越えた先。

そこに、探していた封印はあった。


────


巨大な岩壁。

その中央にびっしりと刻まれた、無数の神聖な紋様。

空間そのものを力尽くで縫い止めているような、巨大な結界だった。


────


悠真

「これが・・・封印。」


────


エレナ

「凄い・・・。」


────


しかし。

並んで見上げる大蛇の表情が、にわかに曇った。


────


大蛇

「・・・おかしい。」


────


悠真

「どうしたんだ?」


────


大蛇は吸い寄せられるように歩み寄り、封印の表面へとそっと手を触れる。

そして、その瞳を驚愕に見開いた。


────


大蛇

「ひび・・・?」


────


頑強なはずの封印の表面に、無数の亀裂が走っていた。

まるで、限界を迎えたガラスの器のように。


────


エレナ

「これって・・・。」


────


大蛇

「ありえません。封印は自然に壊れるものじゃない。外から、壊されるものです。」


────


大気が一瞬で張り詰める。

大蛇は鋭い目で周囲の鬱蒼とした森を見回した。


────


大蛇

「原因を探ります。二人はここで、封印の維持を。」


────


悠真

「俺達だけで出来るのか?」


────


大蛇

「触れているだけで構いません。封印は、人の想いへ反応します。お願いします。」


────


そう言い残し、大蛇は音もなく森の暗がりへと消えた。


────


耳が痛くなるほどの静寂。


────


エレナ

「・・・緊張するね。」


────


悠真

「俺は何も分かってないんだけどね。」


────


パーカーのフードの奥で、エレナが少しだけ、緊張をほぐすように笑う。


「私も。」


────


二人は、恐る恐る冷たい封印の岩壁へと手を触れた。

暖かい。

伝わってくるのは、まるで誰かの確かな鼓動のようだった。


────


その瞬間。


────


空間が不自然に歪む。

大気がぴたりと止まり、世界の音がすべて消え去った。


────


悠真

「・・・なんだ?」


────


目の前の空間が、生き物のように歪み、裂けた。

そこから、這い出てくる。


────


上位種。


────


三メートルを超える異形の巨体。

生命の通わない灰色の皮膚。全体の輪郭は、不気味なほどに人の形を模している。


────


だが、人ではない。

顔の中央で不規則に明滅する、冷酷な瞳。

それを見ただけで、魂が理解した。


死ぬ、と。


────


悠真は、自らの呼吸を忘れて立ち尽くす。

身体が指先一つ動かない。

隣のエレナも全く同じだった。


────


浴びせかけられるのは、濃密な殺意の津波。

存在そのものが、逃れられぬ恐怖の塊だった。


────


上位種の明滅する視線が、ゆっくりと動く。

そして、止まった。


エレナのところで。


衣服が擦れる音すらなく、上位種の長い腕が静かに振り上げられる。

エレナは、恐怖のあまり完全に金縛りになっていた。


逃げろ、と。

脳髄が必死に叫ぶ。だが、肉体が言うことを聞かない。


次の瞬間。


誰よりも、エレナの思考よりも速く、悠真が地面を蹴って飛び出していた。

不器用なほど真っ直ぐに、エレナの身体の前へと滑り込む。


そして。


黒い硬質な爪が、容赦なく振り下ろされた。


鮮烈な血飛沫。

エレナの白い頬へ、赤い雫が激しく飛び散る。

悠真の右腕が、凄惨な軌跡を描いて宙を舞った。


────


エレナ

「・・・え?」


────


悠真が、声もなく地面へと崩れ落ちる。

上位種が、獲物を仕留めるために再びその巨体を動かそうとした。


その瞬間。


衝撃的な轟音。

空間そのものを叩き潰すような、圧倒的な圧力が山を鳴らした。

世界が、激しく軋む。


大蛇だった。


最古の母は、森の境界に立ち、冷徹な目で上位種を見た。

血を流して倒れた悠真を見る。

草むらに転がった、失われた彼の右腕を見る。


大蛇の顔から、すべての表情が完全に消え失せた。


「・・・。」


上位種が、その圧倒的な重圧に抗うようにして身構える。

大蛇は武器すら抜かない。ただ、静かに一歩。

それだけだった。


次の瞬間、目に見えぬ暴力的な質量が上空から叩きつけられ、上位種の巨体が地面へとしがみつくように叩きつけられた。

凄惨なまでに骨が砕ける音。

彼らの足元の頑強な地面が、蜘蛛の巣のように爆ぜて割れる。


大蛇の漆黒の瞳が、神聖なまでの怒りで赤く染まった。


「あなたは・・・私の子供に、何をしたんですか?」


空間が、引き裂かれるような悲鳴を上げる。

数秒の蹂調の後、そこには塵一つ、何も残っていなかった。

都市を滅ぼす怪異が、存在ごと消滅していた。


大蛇は、倒れた悠真のもとへ駆け寄り、その身体を優しく抱き上げる。

その横で、エレナは自分の無力さに涙を流していた。


「ごめん・・・。ごめんなさい・・・。私のせいで、悠真が・・・。」


大蛇は何も答えない。

ただ、その時だった。


どく、と悠真の断面の肉が、生き物のように不気味に蠢いた。

骨が音を立てて伸び、神経が瞬時に繋がり直していく。

失われたはずの右腕が、眩いほどの速度で再生していく。

文字通り、一瞬で元通りに繋がる。戻る。


────


エレナ

「・・・え?」


────


悠真

「・・・は?」


────


悠真自身が、自分の右腕を握りしめて唖然としていた。

だが、隣にいる大蛇だけが、その奇跡の光を前にして、言葉を失っていた。


嬉しくない訳じゃない。

我が子の無事に、安心していない訳じゃない。

だが。

それ以上に、最古の母は知っていた。

この異常な力が、この世界において何を意味するのかを。


大蛇は静かに、悲痛な面持ちで目を伏せる。


「・・・始まってしまいましたね。」


冷たい風が、二人の頭上を吹き抜けていく。

遠く、空の向こう。

割れた雲の隙間から、誰かがこの地獄の始まりを、冷徹に見つめているような気配だけがあった。


手違いで更新が明け方になってしまいました。

お待ちしていた皆様には大変失礼しました。

本日19時頃間違いなく投稿致しますのでブックマークお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ