5話 希望への確信
⚪︎前回のあらすじ
魔物と相対した俺は、
恐怖と痛みに耐えながらも決して退かなかった。
罠とスキルを駆使し、
ついに魔物を沈めることに成功する。
――はずだった。
「おっふ、、、」
魔物が正気を取り戻したと思い、安堵していた。
だが、現実は――
ーーーべちゃ、べちゃ
音がする。
「うっ、イタタタ、俺はどうしたんだ、確かあの時、」
(確か、魔物と戦って、それから)
寝てしまう前の記憶を思い出す。
「そうだ!俺は確か、あの魔物のスキルを改善して、あるべき姿に戻して、それから――」
魔物に思いっきり倒された。
(ん〜〜?倒された?)
「え?つまり、俺、助けたと思った魔物にやられたの?」
脳が追いつかない。
「ここが天国とか地獄なら、なんでベッドの上に寝てて、しかもここが壊滅した村なんだよ」
目の前の状況が、まるで理解できなかった。
「いや、まず怪我してるところが痛いなら、あの世ではないだろう」
「で、魔物に倒されて気を失った。までは分かった。
けど――」
「なんで、襲ってきた魔物が俺の横にいるんでしょうか、、、」
汗を垂らしながら、現状を飲み込めずにいた。
つい先ほどまで敵対していた相手が、目の前にいるのだから。
「よ〜し!ここは慎重に逃げるべきだな」
俺は物音を立てず、その場から離脱を試みる。
だが、甘かった。
すでに魔物は目を覚まし、こちらをじっと見つめていた。
「あ、、、えっと〜〜、おはようございます?あはは、、」
何も返ってこない。
あれ?これ、もしかしなくても距離近すぎるし、終わったのでは、、、
覚悟したその時、
「ワオ〜ン」
「グルルルルッ」
飛びついてきて、喉を鳴らしてきた。
(あれ?攻撃してこない?むしろ、なんかベチャベチャ舐められて――ーって獣臭っ!!)
俺は、舐められていた。
それはそれは、顔の周りがよだれの大洪水だ。
なにより獣臭い。
「ちょちょちょ、タイムタイム。待って待っ、ヴェェ、、、」
舐めるのを止めない。
息ができない。
もしかして逝く?逝っちゃうのか?
「グフゥ、、、そ、それなら、俺にも考えがあるぞ!」
舐めてくる獣に飛びつき、
毛並みをモフってモフってモフりまくった。
「よーしよしよし、良い子だ。一旦落ち着こうなぁ〜、お〜よしよし」
この毛並み、すげぇ気持ちいいな。獣臭いけど。
ツヤツヤしていて、触り心地がめちゃくちゃ良い。
「なんか、ちょっと高いクッションの中に入ってる綿みたいだなぁ、、、」
「って、ちがーーーう!!」
一旦落ち着いたところで、冷静になった俺は魔物に問いかける。
「コホン!えっと、君はもう大丈夫なんだよね?」
「クゥン」
「もう、攻撃してこないよね?」
「クゥン」
「スキルは安定してるのかな?」
「クゥン?」
なるほどなるほど、、、
(さっっっぱりわかんねぇ〜)
犬語!?犬語なんてわかるわけないじゃん!
(これって例えるなら、飼い主が一方的に話しかけて満足する、あの感じじゃん)
「えぇ〜どうしよう。魔物の時より自我は持ってるし、なんとなく意図は伝わってそうだけど、犬語、こればっかりはどうしようもない、、、」
俺はとりあえず、難しいことは川に流すことにした。
目の前の魔物との戦闘を思い出す。
「あの時は無我夢中だったけど、俺のスキル……“管理”ね」
「正直、最後の最後だったけど、一発勝負。なんとかなってよかったなぁ」
再び、大きなため息をつく。
今は達成感の方が勝っていた。
何より、
「俺でも、誰かを助けることができた」
拳をぎゅっと握る。
それが、今回は繋がった。
手を掴むことができた。
「俺にも、できることはあるんだな」
「今はまだ傷が痛いし、大人しく、傷を癒しますかねぇ」
そうして、俺は再び眠りについた。
ーーーそれから数時間後
「ふぁ〜よく寝た。」
俺は両手を思いっきり伸ばしてあくびをしていた。
ミシミシッ!!
「イタタタ、、、」
(体の調子、まだ治ってないし、怪我も深いところ以外はほぼ治ってきてるな)
傷の状態なども確認し、今後どうするか考えていた。
「ん〜次、どうしようかな。」
俺は横で丸くなって眠る魔物を横目で見た。
(……このまま置いていく、って選択肢はないよな)
このまま置いていくことも考えたが、この調子だ絶対についてくる。そう考えた俺は置いて行くことを諦め、連れていくことにした。
「あ、そうだ、思い出した。確か、シャドウウルフっていうんだっけ?」
「名前を付けるか、ずっとそのままじゃ、話しかけづらいし、、う〜ん、、よし!じゃあ、今からお前は、“クロ”だ。」
黒い毛並みと狼っぽい見た目からつけた名前だった。
安直にも思ったが、名付けのセンスは元々ないから仕方ないと思うことにした。
それに応じたかのように横で眠る一匹の魔物も目を覚ます。
「おはよ。よく眠れたか?あとさ、お前のこと今日からクロって呼ぶから改めてよろしくな。」
「アオーン!」
犬語ならぬオオカミ語が相変わらず何を言ってるのか分からないが喜んでくれてるらしい。なにより尻尾が激しく左右に揺れているのが良い証拠だ。
(そういえば、クロのやつ、なんか、大きさ変わってるよね?一回りくらい小さくなって、今は大型犬くらいの大きさまで小さくなっていた。)
気にしてもしょうがない。大きさが変えられるのなら人前でも安心安全だな!と、自分を納得させていた。
そうして初めてできた仲間と一緒に壊滅した村から出る準備をしていた。
「よーし、ある程度準備できたな!正直ここからどうするか方向が定まってないけど、行きますかね!」
(俺たちの願いのためにもな!)
その声にクロも返事をする。
そうして、村を出ようとした瞬間
ーーーガサッガサッ
草木をかき分けるような音が聞こえた。
その先に目をやる。
(誰だ?もしかして、前に襲ってきた魔物か?)
クロも何かを感じ取ったようで、俺よりも早く臨戦態勢に入っていた。
少しずつ近付いてくる。
この時、足音が重なっていることに気がつく。複数いるみたいだ。
1人だったら相手にするのは難しいだろう。
だけど、今は仲間がいる。
「敵かもしれない、気を引き締めるぞ!」
「ワフッ!」
俺たちが先制して動けるように、クロに合図を送る準備をしていた。
音を出した元凶は姿を表す。
背は俺より少し大きく、肌は髪色は薄緑色。
木を加工した鈍器や槍、盾などを装備していた。
ゴブリン数十体がそこにはいた。
「よし!やるぞクロ!」
手の動きを合図に共に先制攻撃をする。
と、同時に声をかけられた。
「待ってくれないカ?」
確かに聞こえた。
日本語をある程度話せる相手の会話を聞いてるような感覚。
(誰だ?誰が声をかけている!?)
そして、俺は慌ててクロに声をかける。
「クロ戻ってきてくれ」
俺はその相手に聞き返す。
「一体だれなんだ?」
目の前にはゴブリンがいる。
俺とも目が合っているし、お互いに硬直状態。
正直、話をしている場合ではない。いつ襲うか分からない相手が目の前にいる。
だが、近くに俺と同じ“人間”がいるのなら、と期待している自分もいた。
「申し遅れタ。私は、ゴブリンを代表するものダ。」
声の正体は、ゴブリンの集団から前に出てきた。
「え?君が止めたのか。」
敵意はないし、俺たちを罠にかけるつもりもないみたいだ。
近くにいるクロも警戒はしているものの、それに勘づいているようだった。
「いきなりで悪いガ、私たちに敵対する意志はないゾ。」
そう、前に出てきた女のゴブリンが言ってくる。
・・・意図が全く読めないな
とりあえず話を聞いてみることにした。
「敵対をしないのは分かったけど。まず、なんでここにいるんだ?」
少年の知識によると、ゴブリンは集団で村生活をする。
そして、狩りの時にしか滅多に外に出てこない。
「はい。実は、ここ一帯を荒らしている1匹の魔物、見なくなっタ。だから確認にきタ。」
ここら一帯を荒らしていた魔物、、、
(な〜んか、見覚えがある気がするなぁ)
「ちなみに特徴は?」
俺は見覚えのある魔物を横目に聞いていた。
「特徴は、わたしたち、ゴブリンよりも大きイ、」
「黒い毛が生えていタ」
「なによリ、怖い目をしていタ」
(うん。なるほど、やっぱり見たことがあったか、、、、、ねぇ?クロさんや、)
隣で相手から目を離さないクロに目を配る。
それに気付いたクロも首を傾げていた。
「えっと〜、その魔物だけど、俺が助けた?というか、仲間にした?というか〜」
と、説明が難しそうに俺は後頭部を撫でながら答える。
ゴブリンたちも理解していない様子だ。
「つまりね?、、、この子がその魔物だったんだよね〜」
クロの背中を優しくトントンと見せながら伝える。
「や、やっぱりその魔物が、あの魔物だったんだナ!」
焦った様子で返答してきた。
そして、後ろで待機していたゴブリンたちも武器を構える。
「ちょちょちょ、待ってくれる?攻撃する意志ないって言ってたじゃん!クロも俺の仲間になってからは周りを壊したりしてないし、僕らが争う必要はないよ!」
俺は必死に伝えた。
その様子を見ていた女のゴブリンがじっと見て話しかける。
「失礼。取り乱した。信じられないが、今は休戦しよウ」
冷静を取り戻し伝えてくる。
「急で悪いガ、私たちについてきてくレ」
そう後ろへと振り向くと掻き分けた草木の方へと進んでいく。その後をゾロゾロと付いて行くゴブリン達。
俺は振り向きざまにゴブリンの様子を伺っていたが、何かを抱えている。そんな気がした。
俺はゴブリンたちを警戒しながら、ついていくことにした。
最後まで見ていただきありがとうございます!
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