4.5話 影から見た主人様
これは、1匹の……いや、1人が救われた話。
暗闇から、手を差し伸べてくれた。
助けてくれた。
―――私の、始まりの物語。
私は夢を見ていた。
長い長い夢。
平凡な村で育った私は、
親の愛情と、村の人たちの優しさに囲まれていた。
そして、それを覆すような絶望が突如として現れる。
いきなり現れた魔物に襲われ命を断つ。
嵐のように“それ”は来て、一瞬にして消えていった。
そして、私は世界の理により、魔物になって村を破壊する。
そんな夢。
ふと目を開け周りを見ても暗い。
声も届かない。
ーーー助けを呼ぶ
そして、目が覚める。
そこには私の意思とは関係なく“私”が目の前にいる人を魔物を襲い、環境を壊す。
これが私の日常。
「こんなの、もぅ嫌だよ、、、」
魔物になってから体が言うことを聞かない。
目の前の惨状に吐き気を覚える。
「だれか、、、助けて。私を止めて。」
振り絞って出すか細い声を誰かが聞いてくれるわけもない。
“私”は村から村へと破壊の限りを尽くす。
そして、ある光景を目の当たりにする。
崖上から敵が居ないか見渡す。
そして1つの倒れそうな家から1人、大人が出てきた。
それを躊躇なく、いつものように無慈悲に倒す。
瞬間、その大人は家に向かって何かを叫ぼうとする。
虚しくもその声は発することなかった。
(私が止めたんだ。叫ぶ前に。)
その後、また同じ家から1人の“少年”が出てくる。
見た目は当時の私と同じくらい。
少年の表情は険しく、不安からか目に涙を浮かべていた。
(また、やってしまうんだね。)
もはや、同じ光景を何度も繰り返し、私の心は壊れかけていた。正常な考えができていない。
その場から消えて、少年の背後をとり、容赦なく前足で攻撃をする。
まともに受けた少年は壁に叩きつけられて血を吐く。
ぐたりと倒れ。そのまま動かなくなった。
(ごめんね。今の私はもぅ、、、)
諦めていた。
そこから数日後、
私は森の中にいた。
魔物になってもお腹が空くみたいで、川魚を食べていた。
ーーー何かに勘づく。
瞬間、私は動き始めていた。
勘づくその先へと、、、
そして、目の当たりにしたその正体に驚いた。
この手にかけてしまった。あの少年にそっくりな人物がそこにはいたのだから。
(あの時の少年?)
だが、明らかな違いもあった。
身長は少し伸びている。
目と髪は黒く染まっている。
だが、面影は同じだった。
(おかしい。確かに“私”がこの手で倒してしまったはず。本来ならスキルが暴走して魔物化してる。なのに、、、)
考えとは裏腹に私は攻撃をしていた。
明らかに少年とは思えないような動き。
罠へとはめようとするその知性。
復讐へと満ちたその表情。しかし、その目には何か、、、
先ほどまでとはまるで“別人”
気付けば私は罠にかかり、倒壊した家の重圧とこの子のスキルで取り押さえられていた。
そして、少年が私に手をかざす。
(私はこれで終わるのかな、、、だとしたら、ありがとう。私を止めてくれて。)
これでやっと終われる。
刹那、私の視界が光に包まれた。
声が聞こえる。
「確認しました…… 改善により安定しました。」
そのまま、光は私全身を包み込んだ。
ーーー目を覚ます
「ここは、、、」
私の視界はクリアになっていた。
体中が痛い。
手足は動く。
私は“私”になっていた。
今までの苦しみから解放された。
それを実感する。
涙が溢れた。
嬉しさのあまり、少年に飛びついていた。
その勢いに圧倒され倒れて気を失ってしまった。
(あ、やっちゃった。)
心の中で謝罪する。
「恨んでいたはずなのに、命懸けで私を止めてくれたんだね。倒すんじゃなく。」
「ありがとう。」
私は心から感謝をした。
しばらく考えた後、、、
「うん。色々考えたけど、助けてくれた君に恩返しがしたいな。」
(これは自己満足かもしれない。だけど、この少年のことが気に入ったのも事実。)
少年を横になれそうなところを見つけて連れて行く。
この子は根が優しい。
だからこそ危ない。
種族問わず優しさを振り撒けばいずれ裏切られた時の反動や失った時の失望感は大きいかもしれない。
(私ができること。この子を、、、ううん、主人様を守る。支える一部としてそばでお使いすること。)
そう決意し主人様の隣で眠りにつく。
これは1人の魔物(人)が主人様と共に歩んでいく。
そんな物語。
最後まで見ていただきありがとうございます!
前作から続けて見ていただいてる方、今回初の方、いろんな方に見ていただき嬉しい限りです!
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また近いうちに物語の間に0.5話を挟むと思いますのでよろしくお願いします。




