39話 手を差し伸べる者
○前回のあらすじ
2回目のクエストを受けたネクスたちは、新たにクロとイサキも加わり、無事にクエストを達成する。
その後、街で不審な気配を感じ取ったネクスは、スキルを使ってその気配を辿っていく。
相手に気付かれないように、角を曲がった瞬間に、気配を消し、視線の先へと近寄る。
索敵スキルをそのままに、近付くネクスに対し、視線を送っていたその存在は角を曲がったネクスの後を静かに追いかけていた。
もう少しでネクスの曲がったところに着こうとした瞬間、後ろから声をかけられる。
「なあ、さっきから俺たちのこと見てたみたいだけど誰だ?」
その声の主はネクスであり、追いかけていた自分たちを、追いかけ返してくるとは思っておらず、「ひゃっ!」と声を出す。
そして、ネクスの方へとゆっくり振り向く影は全部で3つ、全員ローブを被っており、顔などは確認できないが、警戒はしている。しかし、敵対はしていない。
そんな雰囲気をネクスは感じていた。
「えっと...その、この前はありがとうございます!!」
振り返ったかと思うと、突然お礼を伝えるそのローブ姿の1人に対して、なんの事か分からないネクスは問いかけていた。
「ありがとう?って、なんの事?俺が君たちに何かしたかな?ごめん、身に覚えがなくてな」
ローブの3人組に問いかけると、真ん中にいた1人が、ハッとなり被っていたローブを取って、ネクスに改めて話しかける。
「すみません。ローブを付けてない時に会ってたので分からないですよね。改めて、この前はありがとうございます。」
ローブを取ったその人?は、
耳と尻尾が生えており、髪は長く、手足も犬や猫の様な見た目だが人間と同じく指もある。
身長も人間台であり、見た目は真ん中が高校生くらい、後ろの2人が小学生くらいであった。
(ん〜、前世で見たアニメや漫画であった獣人ってやつかな)
「あ、思い出した。あの時の」
その顔を見たネクスは、思い出していた。都市へ来た時食べ歩いていた際に食べ物を分けた子たちであった。
「はい!その通りです!」
「それで、どうした?俺の事追いかけてたってことは何か話したいことあるんじゃないのか?」
腕を組み、獣人らしき3人組に話しかける。
「はい。お察しの通りで、実は、貴方様の実力、人望を見込んで頼みがあるんです。」
再び頭を深く提げてネクスにお願いを申し出る。
何か事情があることを察し、ネクスはしっかり聞く体勢になるため座り直す。
「実は、ここ中立都市は、名前の通り、種族問わず中立に接するというルールの元で成り立っているのですが、」
真剣な眼差しで、ネクスを見つめながら説明をする。
途中まで話していた口元が悔しさを噛み締めるような表情に切り替わる。
「平等ということを聞き、私たちは獣人の村から仕事を探しに来ました。ですが、平等というのはあくまでも表向き、実際は甘い条件で話しかけ、裏で様々な獣人たちを捕らえているのです。」
事情を聞いたネクスは真剣な表情で話している獣人の子たちにしっかり受け答えしようと問いかける。
「もしかしてその獣人の子たちを助けて欲しいってことかな?」
「はい。私たちも元々は捕まっていたのですが、同じように捕まっている仲間が何日もかけて逃げ道を作ってくれたのです。そこから逃げて助けてくれる人を探していたのです。」
その目には薄く涙を浮かべており、すがりたい思いで助けを求めていたのが伝わっていた。
「だけど、なんで俺なんだ?評価してくれるのは嬉しいけど、俺より強い人、優秀な人もいると思うけど?」
最もな意見を伝えると、断られる。そう感じたのか獣人の3人は少し戸惑うような仕草をするが、直ぐに話に戻る。
「実は、都市に入る貴方様を見かけていて、その後、魔物2匹を連れていたので、魔物に対して悪い印象を持っていなさそうだったので、もしかしたらと、」
少し話しずらそうにそのことを伝えると、ネクスは思い出していた。それは2回目のクエストを始める前のガイとの勉強会のことであった。
(確か、中立都市は種族に対して偏見を持たないというのは表向き、人と異種族の間では苦手意識があり、中には敵対している存在もいると聞いたな。魔物ならもってのほかだろう。って言ってたな。)
手を顎に考えを巡らせる。
「うん。とりあえず君たちの言いたいことは分かった。けど、その獣人たちが捕まってるっていう所は分かるのか?」
そのことを聞くと、獣人の子たち、主に後ろの2人は目を輝かせていた。
「はい!ただ、私たちが捕まっていた所しか分からないので、もしかしたら別のところでも...ですが、そこまでして頂く訳にも...」
更なる迷惑や危険に晒してしまうのには抵抗があるようだった。
「ああ、そこは大丈夫。俺の索敵スキルで探し出せる。だけど、解決にはならない。あくまでも助ける。それ以降は自分で考えて行動すること。あと、無闇に人を信用しないことだ。一応、俺も人間だからな。」
そう言うと、ネクスはまた、前世の記憶を思い出しながら話していた。
暗い表情になったネクスに気付いた獣人3人のうち1人が、近付いて話しかける。
「苦しい思いをさせてしまってごめんね。」
手をネクスの肩に置いてそう話しかける。
(そうだ、あの時とは違う。俺は生まれ変わって新たな人生を歩んでいるんだから、いつまでも引きずっちゃだめだな)
両の頬を手で叩き、頭をリセットさせる。
その行為に獣人たちはビクッとしつつ、「大丈夫?」と声をかける。
「ああ、大丈夫。気合いを入れ直した。」
「とりあえず、短期間でやることを意識しよう。長引かせれば裏で繋がってるなら別日に分けた時に横繋がりで警戒される。実行は今すぐに、かつ短期間で行う。」
即実行することを口にすると、獣人の子たちは「もうするの?」と、実行の速さに驚いていた。
そして、ネクスは獣人の子たちに誘導され捕まっているであろう所まで向かう。
その間、ネクスは道中、スキルの入れ替えを行いながら移動していた。
ネクスが自身に付与できるスキルは3つまでと決まっており、変更する場合、1日経たないといけない条件などがあった。
スキルの入れ替えを3つすべてのスキルを入れ替えると、クロ、イサキに対して念話で話しかける。
視線の正体について、また、その子たちに協力を申し込まれたこと、それに対して、自分が対応すること。
これまでの経緯を簡単に伝えた。
この時、ネクスはクロとイサキそれぞれに頼みを2つしていた。また、これは後に獣人たちにも共有することとなる。
やがて、獣人たちが捕まっていそうなボロボロの小屋を見つける。都市のかなり端の方に建っているところだった。
(ん〜見た感じただの小屋だな。だけど、聞いた話では小屋には隠し階段があって地下に行ける。すると、色んな子たちが捕まっていて、かつ、その出入りする経路も色々あるらしいな)
目的地に着くまでにある程度の情報を聞いていたネクスは、着くまでにある程度整理、クロとイサキに都度共有していた。
「よし、じゃあ俺だけで行くから君たちは出てきた“獣人の子たち”を誘導して、ここで待っててくれ。もしバレそうになったらさっき伝えた場所に行ってくれ。」
「うん。分かった。けど本当に大丈夫なの?」
決行しようと動き出す瞬間、心配になり声をかける。
ネクスはそれに答えようと笑顔で答えた。
「大丈夫。強力な助っ人に頼みをしてある。俺の想定通りならなんとかなると思う。」
そう言い残し、ネクスは動き出す。
(夜になったばかりだ、警戒のレベルは下がるはず、もしもの時はあの子たちだけ逃がす。)
ネクスは常に索敵スキルを行い、相手にバレないよう動き始めた。
また、そのネクスの行動を合図に、クロ、イサキもネクスの居ないところで動き出していた。
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