36話 亜種、知識の改善
〇前回のあらすじ
初クエストに向けて即席パーティーで挑戦するネクスたち。
討伐と採取のふたつをこなしていく中、
ネクスは微かな声を耳にする。
そこにいたのは、本来の色とは異なる魔物の姿であり、ネクスはその存在を癒すのであった。
倒れている異色の一角ウサギを癒すネクスは、考えていた。
(色が薄紫ってだけで他は同じ見た目だな。俺の相手を癒す能力も、元の姿を分かっていなければ治せない。だから、試して成功したらありがたいけど...)
すると、ネクスの頭の中に声が響く。
「合意。個体名一角ウサギ亜種の体を治します.....完了。」
「よし、成功したな。ありがとう。」
(ん?亜種?)
スキルの声に反応して、感謝を伝える。
ついでに聞こえた“亜種”という言葉に引っかかり、問いかけるが、返事がなかった。
何も返ってこないのはいつも通りだなと逆にほっとする自分もいた。
すると、目の前にいる一角ウサギは少しずつ動き出し、体を起こす。
そして、一角ウサギが顔を上げると、ネクスと目が合った。
瞬間、近くにある草木に飛んで逃げてこちらを様子見していた。
(それだけ元気なら、大丈夫そうだな。)
「今度は気をつけろよ。元気でな!」
ネクスは草木に隠れた一角ウサギに向かって軽く手を振ると、その場を後にする。
その様子を見ていた一角ウサギは、この場を去るネクスの後ろ姿をじっと見つめていた。
---少し経ち
「よし、これだけあれば依頼は達成になるかな?」
袋の中にはかなりの量の癒し草が入っていた。
「にしても、難しかったなあ、ネクスの解析に、レイの知識がなければ癒し草の区別なんて出来ねえよ」
ガイがそっと不満を漏らす。
一角ウサギの角6つ。袋いっぱいに入った癒し草。
間違いがないかレイは確認し、合っていることが分かると、ネクスとガイに「戻りましょう」と声をかける。
「よし、クエストクリアだな」
「どうだった?初クエストの感想は」
戻りながらもネクスの初クエストの感想を聞こうとするレイに、ネクスは答える。
「正直、仲間と一緒に協力して達成するのが1番満足したし楽しかったかな。」
ガイとレイがその答えを聞くとニコニコと笑顔になり、良かったと答える。
「あ、そういえば、聞きたいことがあるんだけどさ、」
ネクスはある存在のことを思い出し、ガイとレイに聞こうとする。
「一角ウサギってさ、毛並み白いじゃん?薄紫色の毛並みをした一角ウサギっているの?」
先程助けた一角ウサギのことを聞き出していた。
癒す際にスキルが言い残した“亜種”となにか関係があるかもしれないと思っての行動だ。
「悪い、俺は分からないな。冒険者になってまだそこまで長い訳じゃないんだ。」
ガイは分からずだったが、レイの反応は違っていた。
「それ、一角ウサギの亜種じゃないですかね?」
「それって何が違うの?」
レイに聞いてみると、凄く考え、悩んだ末に口を開く。
「私も正直詳しくは分からないけど、産まれてくる一角ウサギの中でもほんの稀に生まれてくる存在。で、確か薄紫色の一角ウサギは、通常種に比べて力は無い代わりに俊敏だって確かあったような...」
「うーん」と悩みながら過去の知識を遡ってくれていた。
「うん。ありがとう、大体分かったよ。さっきその薄紫色の一角ウサギを助けたんだけど、見たこと無かったから聞こうと思って」
すると、レイが目を輝かせていた。
「え!見たんですか?亜種の存在に遭遇なんて、滅多にないのに!」
すごい食いつきだった。
すると、ガイが突如、ネクスとレイに声をかける。
「なあ、その一角ウサギの亜種って、薄紫色なんだよな?」
「そうだけど、どうしたの?」
不思議そうに問いかけるガイが、そのままネクスの後ろに指さす。
「ってことは、あれが亜種ってことで合ってるか?」
「え?」
ネクスとレイが2人とも振り向く。
すると、ネクスから少し距離を置いた所で、1匹の一角ウサギが着いてきていた。
毛並みは薄紫色で、その小さな足で音も気配も無い状態でトコトコ着いてきていた。
(おかしいな、俺の警戒網を掻い潜って来たってことか?だとしたら、足が早いだけじゃないな)
ネクスは時と場合によって、スキルで周辺を警戒するようにしていた。しかし、その反応すら無い状態でネクスたちの歩くスピードに着いてきていた魔物に驚いていた。
「ひょっとしたら」
レイが一角ウサギを目の前にして、こちらから距離をとるでもなく、威嚇する訳でもない。じっと“ネクス”を見ていた。
「この子、ネクスについて行きたいんじゃないかな?ほら、さっき助けたって言ってたじゃない?恩返ししたいとかで、」
そう言われ、ネクスは少しずつ一角ウサギに近付く、しかし、逃げはせず、じっとネクスを見つめ続ける。
「お前、俺と一緒に来るか?」
「キュッ!!」
返事のように鳴いたかと思うと、一瞬にして、ネクスの両腕の中に入るようにしてすっぽりと収まるように動く。
「ネクス、お前テイマーだったのか?」
ガイはネクスに問いかけるが、「違う」と返す。
一方レイは、珍しい一角ウサギの亜種を撫でたいのか、ジリジリと近寄ってくる。
しかし、触られまいと、一角ウサギは触ろうとしてくる手を角を使って振り払う。
「ん〜、少しくらい触らせてくれてもいいんじゃない?」
色々不満を漏らしながら、都市の門前まで向かうのであった。
中に入る時は、ネクスがテイマーした魔物だということで話を通して入れるようにしてもらっていた。
そのままギルドに着くと、事情を説明し、テイマーという肩書きで冒険者の再登録を行うこととなった。
発行してもらってる間に、クエストの報告を行う。
その日は金貨5枚の報酬を受け取った。
「なあ、レイ、お金のこと聞きたいんだけどさ、金貨1枚ってどんだけの価値?」
ネクスは初めてこの世界のお金に触れることとなったため、近くにいたレイに問いかける。
「そうですね。・・・」
レイが説明を始める。
話をまとめると、以下の内容だと分かった。
銅貨10円、大銅貨50円
銀貨100円、大銀貨500円
金貨1,000円、大金貨5,000円
(1円の価値としての通貨は無い感じか、なるほど、からくりはそこまで難しくないな)
通貨についてはある程度理解する。
ふと、レイがネクスに聞こうとしていたことを思い出す。
「そういえば、一緒に来てたシャドウウルフの、えっと、クロさんって今はどこにいるんですか?」
最初都市の門へ来た時は共に行動していたが、いつの間にか居なくなっていたことに違和感を感じていた。
「ん、クロなら、都市の中に入ってからずっと俺の影で休んでいるぞ?」
と、呼び出そうか?と聞くが、今はギルド内にいることもあって断る。
冒険者のプレートの再発行を終えた受付は、ネクスの名前を呼び渡す。
「ありがとうございました。また何かございましたら遠慮なくお申し付けください。」
ネクスも「ありがとう」と一言伝えると、レイとガイの2人の元へと戻る。
「さてと、今日は初日で色々あって疲れただろうし、報酬を山分けしたら、宿に帰るか!」
そうガイが提案すると、ネクスたちは承諾した。
2人の言い分もあって、金貨5枚は、ネクスが2枚、ガイとレイは1.5枚として分け合った。
「にしても、宿なんてあるんだなあ、どこにあるんだ?」
ネクスがガイに問いかけると、「外に出てすぐ隣にある」と伝える。
なんでも、その宿は冒険者が寝床にしていることがほとんどで、多くの冒険者がお世話になっているらしい。
「じゃあ、今日はここまでということで、3人で宿まで行ったら、そこで解散にしましょう」
3人が話を終えると、その場を離れて宿へと向かう。
一角ウサギはと言うと...
ギルドへ報告へ行く間に、すっぽり入るバッグをレイが購入してくれたおかげで、その中に入りネクスに背負われている。
なお、支払いに関しては後日利子付きで返す流れとなった。
(宿の前って言っても、出てすぐなんだけどね)
レイが心の中で呟く。
この日は、ガイとネクスは宿へ泊まり、
レイは研究所があるためそこへ帰っていった。
宿にいる担当者とやり取りをして、部屋を借りる。
「ふうー、疲れたなあ」
ベッドに手を付きながら息を大きく吐く。
(一人の時間なんて久しぶりだな...いや、正確には一人と二匹?か)
そう考え込んでいると、ネクスは名前を呼ぶ。
「おーい、クロ?まだ起きてるなら出てきていいぞ」
名前を呼びかけられたクロは、少し不機嫌そうな顔つきで、ネクスの前に現れるのであった。
最後まで見ていただきありがとうございます!
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