29話 足りない者
〇前回のあらすじ
双星の魔王兄妹の来訪により、村は一日中大騒ぎとなる。
村の魔物たちは歓迎し、豪華な食事を囲んだ宴が開かれた。
そうして一日を通し、ネクスは「魔王」という存在への認識を大きく改める。
そして、今後について新たな考えを巡らせるのだった。
魔王たちが来て、数日が経ったある日。
それまでの間、双星の魔王という存在にも慣れてきて、周りの魔物たちも落ち着いた頃。
「ネクス君、急ですまないが、僕たちは1度帰ることにするよ。」
村の中、たまたま出会った双星の1人、兄カルがネクスにそう告げる。
「分かった。この村はいつでも歓迎するよ。永遠の別れって訳じゃないし、気軽にまた来たらいいさ。」
(カル様、前に、また来させてもらう。と、遠回しに言ったこと忘れてないからね?)
カルの言葉に対し、ネクスは即答する。
止めようと止めまいと、次来ることが約束されている以上、意味が無いと悟っていた。
「うん。ポルにも説明して納得してもらいやすいから助かるよ。」
そう言うと、カルは、もう1人の双星の魔王であるポルの所へと向かい、自分たちの拠点に戻るように話をした。
「んむ〜分かったのだ。ネクスの村は居心地が良くて離れたくなが、仕方ないな...」
あからさまに寂しいという表情を露わにする。
(なんか、数日前と比べて、この魔王たちにも慣れてきたせいか、ちょっと、可哀想にも思えてきたな。)
そうして、ポルの近くにネクスが近づくと、話しかける。
「ポル様?また、来れるんだし、悲しむことないよ。暇な時にでも遊びに来たらいいさ。」
「なに!!それは本当なのだろうな!」
さっきまでの暗い表情から一変し、明るい表情に変わる。
「よし!じゃあ、用事を終わらせたらまた来るのだ!」
やる気を出したポルに対して、カルが小声で聞かれないようにボソッと言葉をこぼす。
「はぁ、いつもこれくらいやる気になってくれたら苦労はしないのに」
その言葉は、周りには聞こえないくらい小声だったが、ネクスは隣にいたこともあり、聞こえていた。
(いやぁ、本当、ご愁傷さまです。カルさん)
心の中でそう寄り添うのであった。
そうして、急遽、自分たちの拠点に戻る準備を終え、村から離れる際、ネクスの所へ駆け足で近付く者がいた。
「なぁなぁ、ネクスよ。」
その存在はポルであり、帰る前に何か言いたげであった。
「せっかくの仲なのだ、私のことはポル。兄のことはカルと呼ぶことを許すのだ!」
ネクスの顔に向けて指をさし、自分たちのことをそう呼ぶように話す。
「え?あぁ、分かった。なら、俺のこともネクスって呼んでくれ。その方がお互いに呼びやすいだろうし。」
魔王だけを呼び捨てにするのは、流石に失礼に当たると感じたネクスは自分のことも呼び捨てにして呼び合おうと提案する。
「うむ!分かったのだネクスよ!じゃあ、また会った時は頼むな!」
「ネクス。そういう事だから、また暇ができた時にでも...いや、ポルの機嫌次第では遠くない内にまた会いに来るね。」
そして、双星の魔王である2人は、何も無いところから裂け目を作り、その中に入って消えていった。
「嵐のような魔王様だったね。」
隣に来たクロがそう呟く。
「確かに、嵐のようで性格も正反対な兄弟だった。けど、俺の知ってる魔王像とは違い、優しい魔王だったな。」
そう返事を聞いた、クロ含め、近くにいたセンに、ソンウ、ラピスは共感を持つよう頷いていた。
---次の日
ネクスはあることを思い出し、考えていた。
(ネクスの村は居心地が良くて離れたくない...か)
昨日、双星の魔王の妹ポルが話した言葉だった。
(俺の前世に比べたら、不便な所は多いと思うけど、不自由は無いし、住みやすいと言えばそうだけど、)
ネクスの村は基本、藁や木材などを中心に、ネクスが来てからしばらく経った後、前世での知識を参考に建て直したものになっている。
しばらく考え込み、ネクスはあることを思いつく。
「よし、とりあえず、みんなに相談だな。」
ネクスは重たかった腰をすぐに上げて、ある魔物の元へと向かうのであった。
「お〜い、ソンウ。ちょっと話したいことがあるんだけど」
その者の存在とはゴブリンの元村長である、ソンウであった。出会った頃に比べて、凄く若々しい見た目に変わっており、その頃の面影は無くなっていた。
「ん?どうかされましたか?ネクス様。」
呼びかけに反応するソンウの側へと近寄り、1つ提案を持ちかける。
「あのさ、今のままでも十分過ごしやすい村だとは思うんだけど、ここに一手間加えないか?」
それを聞いたソンウは顔をしかめて問いかける。
「はて?一手間加える。と言いますと?」
「あぁ、それはだな...村の開拓をしていく関係で、家とかしっかり建てていきたいと思ってな」
住まいの家についてソンウに持ちかける。
「ん〜、なるほど、確かに住まいがしっかりできれば皆も安心するでしょう。ですが、」
賛同するかと思ったが、続けざまに話を続ける。
「建築に詳しい者はゴブリン族にも、ましてやスライム族やウルフ族にはいないかと思われます。」
(あ、しまった。確かに、思いついたところで、建築するための技術や知識を持つ存在がいないなら意味が無いじゃん)
ソンウの言葉に対し深く共感を覚えてしまうネクス。
「はぁ、いい提案だと思ったけど、根本的な部分で抜けてたかぁ。」
ガッカリするネクスの元へ、クロが近付いていた。
「ねぇ、ネクス様はここにいるかな」
「ん〜?どうしたんだ、クロさん。今ちょうど、目標を作った瞬間に壊れたところだよ。」
なんの事かさっぱり分からないクロは、「そうなんだね。」と軽くいなして、ネクスに要件を伝える。
「でね。ネクス様、お客さんが来たよ?」
「え?俺に客?」
(誰だろう。自慢ではないが、この村に来てからはここにいる魔物たちが主な関わりだし、他にあった存在なんていたかな)
お客さんが来たということを耳にして、誰と関係性を持ったか、思い出そうとする。
「よし。分かった、すぐに会いに行く。」
考えるより、実際に見た方が早いと考えたネクスは、村の門の前に向かうことにした。
「お〜い、ネクス〜」
門の前で大きな声で手を振る大柄の男がいた。
「ん?あれは、」
門の前には人影が4つあった。
「ネクスさーん、約束通り来ましたよ〜」
「あ〜君たちか。」
ネクスはすぐに駆け寄って、門の前へと到着する。
「久しぶりだな、ザック、シルア、」
そこにいたのは、大柄の男で背中に大きな大剣を装備した“ザック”に、短剣を装備し髪の毛が長い女性のシルア。
この2人は以前、ネクスが村へと案内し、関係値を持った冒険者だ。
「おうよ。あれから無事にクエスト達成してな。俺たち以外にも仲間がいて、そいつら連れてくるのにちょい時間かかっちまった。」
「すまねぇ」と言って、手で謝罪する。
「で、前に都市へ連れて行って欲しいって、話してたでしょ?だから、その案内も兼ねて来たって訳よ」
その隣で補足のように付け足してシルアが話してくれる。
ふと、後ろにはその仲間と言われていた2つの影があった。
「へぇ、本当に魔物の村なんですね。ゴブリンだけならよく見ますけど、異種族でいるなんて初めて見ました。」
フードを被った男性が村に関心を持っていた。
「あ、申し遅れました。はじめまして。僕はセキと言います。探究家でもあります。」
軽くお辞儀をして、ネクスに挨拶をする。
「あぁ、丁寧にありがとう。俺はネクス。この村のリーダー?かな。」
簡単にやり取りをする。
「ほら、あなたも隠れてないで出てきて挨拶しなさいな。」
シルアに連れてこられたもう1人は、物静かで大人しい雰囲気で、黒髪が特徴の女性だった。
「はじめまして。俺はネクスっていいます。よろしくね。」
自分から声をかけた方がいいと思ったネクスは、進んで自己紹介をする。
「うん。よろしく。私はレイです。」
表立って会話をしないレイを見たシルアがサポートをする。
「この子は採掘家でね。珍しい薬草なんかを調合することができるのよ。物静かで良い子なんだけど、初対面の相手にはいつもこんな感じでね、悪く思わないであげてね。」
「大丈夫大丈夫。俺にだってその気持ちは分からないでもないからさ、気にしないで」
こうして自己紹介を終えた辺りで、ザックが本題を持ってくる。
「で、自己紹介終えたところでよ、実際どうだ?俺たちの都市に来る気はあるか?」
急な事だったため、準備も未だできてない状態のため、軽く考えてしまう。
そして、ネクスは1つの考えに出る。
「今日は来たばかりで疲れてるだろうし、向かうのは明日でもいいか?」
その言葉を聞いたザックたちは了承し、
今日は魔物の村で泊まることとなった。
「ネクス様、また何か考えてるの?」
ホワイトウルフのツキがネクスと同じ部屋で話し合っていた。
「うん。ちょっとね。可能性にかけてみようかなって。あとは、俺もそろそろ冒険しないとなってね。」
ツキが返答を聞くも、首を傾ける。
しかし、
ネクスはまた、新たな可能性に向けて歩みだそうとしていた。
最後まで見ていただきありがとうございます!
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