27話 双星!!
⚪︎前回のあらすじ
突如として現れた魔王ポルによって、場が混乱する中、ネクスは冷静でいた。
仲間たちが危険を承知でポルに戦いを挑む中、ネクスはゲームを持ちかける。
様々な条件の元、準備を終えたネクスは動き出すのであった。
ビリビリッ!!
雷のエフェクトや音が鳴るフィールドの中、ネクスとポルのゲームは始まろうとしていた。
(このフィールドを覆う雷は、俺の足りない加速を補う補助の役割、そして、相手の視覚や体の感覚を麻痺させるためのもの。後半部分は役に立たないけど、本命である前半が機能したらそれでいい)
息を整える。
負荷によって流れる汗。
震える手足。
それすら忘れるほどネクスは集中力を高めていた。
(ん〜、ネクスのやつ、凄い集中力なのだ。これは、すごいものが見れるかも知れぬな。楽しみにしているぞ)
ネクスの異常なまでの集中力を感じ取ったポルは期待に胸を膨らませる。
「報告。個体名ポルは集中しているネクスに深く関心を持っています。条件が整いました。」
その返事を聞いた瞬間、技を発動させる。
「雷速・一閃」
ネクスの体からさらにビリビリという音が大きくなる。
(この技は、安定させた雷の質量を一時的に上げることで、成り立つ。ただ俺だけではその質量に限界があるから、フィールドを利用する)
「注意。ギア3(ドライ)の維持時間残り9秒。」
技を発動と同時に、残りの維持時間を伝えられる。しかし、ネクスは45秒という短い時間でギリギリできる範囲だな。と確信していた。
雷のフィールドと化している状態で、ネクスはビリビリ、バチバチという音をたてながら、移動する。
その一瞬とも言える移動は、仲間である魔物たちでは視認できず、模擬戦したラピスにですら視認がほぼ出来ない状態であった。
「ふむ。ネクスよ、確かに速い。速さだけならそこら辺にいる魔物たちより1歩、、いや2歩先にいるだろう。」
素直にネクスの強さを評価しているポルだったが、立て続けに話を進める。
「しかしな、私にはその姿、よく見えるぞ?」
両手を組み、むふん!とドヤ顔になる。
(あぁ、だろうな。なにせ、お前が自己紹介で最古の魔王であることは分かってるんだ。俺が何をしようと意味が無いに近いだろう。だが、)
高速で移動する中、自慢げに微笑むポルの表情を見て、ネクスもまた微笑む。
ポルの背後に回った瞬間、咄嗟にネクスは目の前に極薄の穴を生成する。ポルから見た場合、見にくいように、細い縦状の物があるように仕向けつつ。
そして、その穴にネクスはその勢いで入る。
「限界突破、解除。」
雷のフィールドだけを維持しながら、発動させていた身体強化を全て解除させる。
そうして、穴に飛び込んだ後、
「ぐへぇ...」
魔王ポルは倒れていた。
ーーーネクスが穴に入ったすぐのこと、
(人型であれば、後ろに目が付いていないことにかけるが、上手くいくかどうか)
穴に入ったと同時に一時的に魔力の残留だけを残し、自身のAOを極限まで抑える。
ポルの真上に別の穴を接続する。
穴から出てきたネクスはポルにぶつかる。
---そして、今に至る。
(上手くいったな。なんか申し訳ないな)
落ちて直ぐに立ち上がり、ぶつかったポルを見つめる。
一連の流れを見ていた魔物たちは、なぜポルの頭上からネクスが降ってきたのか、ゲーム自体はどうなったのか、分からないでいた。
だが、センとラピスだけはその一連の流れを理解していた。
「流石です。ネクス様」
センがポロッと口に出すと、横で聞いていたクロが「センさん、今のわかったの?」と追求する。
「はい、全部ではありませんが、、、」
質問に答えるように話を続ける。
雷のフィールドは加護を受ける目的の他に、自身のAOを感知させない為のカモフラージュに使っていたこと、
限界突破・ギア3(ドライ)を使ったのも、そちらに意識を向けさせるためであること、
何より、驚かせる方法を絞っていないため、ぶつかって、あっと言わせるという方法もあること、
それらの説明をセンが話し、皆が口を揃えて「なるほど」と感心していた。
そんな話をしていると、ポルが起き上がる。
「なんだったのだ、なにかぶつかったのだ、びっくりしたぞ〜」
自分の頭を撫でながらブツブツと呟く。
「なぁ、ポル様?今、びっくりした。って言ったよな?」
「あ、、、」
ネクスの声掛けにより、ポルは目を大きく見開き、しまった、という表情が分かりやすく出ていた。
「い、いーやいやいや、今のは無しなのだ!まさか、上からネクスが降ってくるなんて思わなかったのだ!」
慌てて話を進めようとしているところを見ていると、ポルが魔王だと言うことをすっかり忘れそうになる。
「うん。だけど、驚いたり、面白いと感じたら俺の勝ちだったよな?」
ネクスは勝ち誇った様子で、話を進めるが、それを聞いてもなお、「でも、それはだな〜」となかなか飲み込もうとしない。
「はぁ...ポル?やり方はアレだけど、結果としてびっくりしたんだから、負けを認めないとダメだよ」
聞き覚えのない声が場に響く。その声は落ち着いていた。
声の方に視線を向けると、
そこにはいなかったはずの人影がそこにあった。
背丈はポルより少し大きく、
青い髪や目が特徴の少年がそこにいた。
(いつからいた?まるで、そこに“最初からいた”ような)
考え事をする、ネクスに、少年は気付いて声をかける。
「あぁ、急に悪いね、」
姿勢をただし、「改めて、」と話し始める。
「僕の名前はカル。ここにいるポルと同じ双星の魔王でね。兄でもある。よろしく頼むよ。」
ネクスは想像していた魔王像とはかけ離れた対応をされてしまい、内心、驚いていた。
直ぐに切り替え、異世界だからと、飲み込むことにする。
「ネクス君がゲームを仕掛けてからの流れを見ていたけど、結果は結果。ポル、素直に負けを認めることだ。」
話終えると、ポルに向き直り、先の話の続きを進める。
(にしても、こうして話しているってことは魔王なんだろうけど...魔王って、兄妹いるんだな、)
前世での知識で、魔王は1人いるものだと考えが偏っていたネクスにとって、兄妹で魔王をしているということに、改めて考えさせられていた。
その間にも、カルはポルに負けを認めるように話を進めていた。
「ポル、ゲームのルールを聞いて、その上で承諾し進めたのはお前なんだから、諦めな。」
「い、いや、しかしだな?カルよ、」
話という名の言い訳を続けようとするが、カルが被さって言葉を遮る。
「そもそも、雷のフィールドにしたことや、自己強化のスキルを使ったこと、所々自分の力を過信し過ぎて油断したこと、最後にネクス君の策略が読めなかった時点でお前の負けなんだって。」
確信を付くようなことを話すカルに対し、ぐうの音も出ないポルがそこにいた。
その間に、ネクスは思っていた、妹のポルより兄であるカルの方が強いのかどうか、
2人が話をしている間に鑑定を行う。
「否定。個体名カルの解析結果は測定不能です」
(あ〜まぁ、ポルを鑑定した時と同じだよなぁ、想像してた通りだわ)
「個体名ポルと同じく解析鑑定が弾かれます。個体名ネクスの10倍以上の力を持つと推測されます。」
(まぁ、妹が力を抜いて10倍以上強いなら、兄も強いはずだよな)
ネクスはやっても意味の無いことをしたな。と少し反省をしていると、続けて話しかける。
「報告。個体名カルのAOは個体名ポルのAOとほぼ同じです。」
村の魔物たちを解析鑑定した時には言わなかったことを、続けて話すことに疑問に思う。
(ん?AOがほぼ同じ?それに何か問題でもあるのか?単に兄妹だから...とかじゃないのか?)
返答は無かった。
(一体何かあるんだろうか、見てても普通の兄妹っぽいけど、)
それについては一旦保留にするネクスであった。
スキルとのやり取りを終えたあと、未だに話合っている2人に「よし!」と気合を入れて話しかけに行く。
「なぁ、話し合ってるところ悪いけど、無かったことにしてもいいよ。それなら、勝ち負け関係ないだろ?」
ネクスが提案する。
それを聞いて直ぐにポルが反応する。
「よいのか!?」
さっきまでカルに言い寄られてしょぼくれていたポルは無邪気にも目を輝かせながら話しかける。
「う〜ん。君がそう言うなら、有難く受け取ることにするよ。ポルのわがままも聞いてもらってすまない。」
軽く謝罪をカルはしていた。
続けてカルは提案をする。
「まぁ、ポルが迷惑をかけたのもまた事実だし、ネクス君、君の村や仲間に手を出さないという件だけど、飲むことにするよ。」
カルが申し訳なさそうに話しかける。その内容を聞いたネクスは、「よろしく頼む」と言って、その場をやり切ろうとする。
「なぁなぁ、ネクスよ」
服を少し引っ張ってポルが呼びかける。
「ネクスの村に行ってみたい!色んな魔物がいて面白そうなのだ!」
「えっ?」
先程、村や仲間に危害を加えない話をしていた上に、ポルから村に行きたいという要件を聞き、手のひらを返された状態に驚きを隠せないでいた。
「まぁ、その〜なんだ、僕も止めたいのは山々なんだけど、ポルの方が力が強くてね...ネクス君、危害は加えないように見張ってるから、見学程度に行かせてやってくれないか?」
カルは再び申し訳ないように話しかける。
会話の中に、力関係ではポルの方が強いと聞き、スキルの反動で身体中が痛いのに、幾度となく驚かされ痛みを感じないでいた。
この後、ネクスはクロたちと一緒に、双星の魔王を引き連れて、村に戻ることとなった。
最後まで見ていただきありがとうございます!
前作から続けて見ていただいてる方、今回初の方、いろんな方に見ていただき嬉しい限りです!
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次回28話もよろしくお願いします!




