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20話 片鱗

⚪︎前回のあらすじ

ネクスの元にクロ、センが参戦し、魔物と3対3の状況になり、戦いを有利に持っていく。

しかし、圧倒的な力をもつ、魔王に従う幹部の1人エニュートが現れ、形勢逆転されてしまった。

戦いの中で気絶してしまったネクスだったが---

魔王幹部の1人、エニュートによってネクスが気絶したすぐのこと、


(クロ.....セン、村のみんなが...危ない......俺はまた...救えないのか...)

気が遠くなる瞬間、静かな声で誰にも聞かれることの無い言葉を発する。


(俺が...弱いせいで...)

悔しいのに、涙すら出ない。そんなことが出来る状態ではない。文字通りなにも出来ない状況に怒りすら覚えていた。


「回答。個体名ネクスの意思の低下を報告。意識を呼び起こします......失敗しました。」


「なんで...管理スキルが...発動するんだ」

俺の意思とは別で、スキルが発動していた。


奇想天外な出来事を深く考えることが出来ないネクスはただ、淡々と、管理スキルの声を聞いていた。


「報告。解決策の分析を行います......完了しました。」


「質問。1つ解決策を提示。体の主導権を移行し、自動戦闘モードに接続することを推奨。移行しますか?」

(体の主導権?自動戦闘モード?ってなんなんだ)


体はボロボロな中、魔力も無い。

しかし、ネクスの中には1つ強く思っていることがあった。


「何でもいい...俺の..仲間を...頼む。」

意識が途切れそうになるのを踏ん張り伝える。


「承諾。個体名ネクスの記憶、情報を解析......完了。」


「個体名ネクスからの申請を受諾、体の主導権を一時的に移行し、目的を遂行します。」


その声を聞いたネクスはプツッと意識が途切れる。

そして、体の主導権、スキルの把握、敵の情報から味方の有無、全てを理解した時、


「報告。スキルの一部を犠牲に、進化の条件を満たしました。」


「報告。Rスキル(管理)が、Sスキル(法則改変)へと進化しました。」


「進化を得たことにより、既存の能力の制限を緩和、さらに新規能力を取得......成功しました。」


体の主導権を変えた瞬間から、ネクスの意思は無かった。

様々な変化が起こり、落ち着いていく中、


「目覚めなさい」


その一言、女性のような機械的な声が響いていた。


---クロとエニュートの戦闘に戻る。


エニュートに倒されたはずのネクスが、動いていた。

本来、有り得ない光景に、センは不気味に感じていた。


「体の損傷を確認。傷の修復を始めます。」

小さな声で淡々と独り言のように話す。

その声は、センにも、ましてや戦っている最中のエニュートとクロには聞こえていない。


「完了。自身の管理データを元に傷の修復を100%完治。」

傷だらけ、血だらけだった体は一瞬軽く光ったかと思うと、元通りになっていた。


「な、なんですか、今の、傷が治ったんですか?」

それを直視していたセンはスライムの回復能力の比にならない速さで傷を癒したネクスの状態を理解出来ないでいた。


「残存魔力の不足を確認。補うための方法を実行...完了。」


「これより、空気中に漂う魔力を持続的に吸収し戦闘を行います。」

すると、微動だにしていなかったネクスがゆっくりと歩く。

その姿はまるで、決められた行動を実行するために動くロボットのような、不気味な雰囲気を醸し出していた。


なにより、センの“右目”が捉えたのは、

(あれは、ネクスじゃない何か。異様な雰囲気。だけど、自然と一体化しているような、そこにいて、そこにはいない。そんな感じがする。)


クロも近付いてきたネクスに気付き、そのネクスはエニュートに話しかける。何を話していたのか現状の理解が追いついていないセンは聞こえていなかった。


話を終えるとエニュートは戦闘態勢に入っていた。


刹那、センが1度瞬きをする。


その瞬間、その場は一転していた。


---???視点


「戦闘を行います。」

その言葉を発し、ゆっくりと前へと歩み行動に出る。


その時、クロは気付いた。地面に押しつぶされそうになりながらも、エニュートを見ていたため、背後にいるネクスが近付いている事に、


目の前にいるエニュートは、気付いていなかった。それもそのはずだ。

感知能力は高い部類だと、冒険者との会話で聞いていたクロ本人は、自分の感知は突出していると自負していた。


そのクロでさえ、感知に引っかからなかった。後ろにいるネクスを“見ていなければ”分からなかった。

完全に視認しないと分からないレベルで、自然と一体化していた。


クロは押しつぶされながら、この光景に唖然としており、声が出せなかった。


「おい、どうした?もう、降参か、ネクスよりは楽しめると思ったんだがな、やはり、相手になりませんね。あなた達も驚異ではありません。」


後ろから徐々に近付いてくるネクスを他所に、そう話すエニュート。


「警告。今からこの場を去ることを進めます。」

ネクスは口を開く。

普段とは異なる、ネクスではない機械的な高い声で。

しかし、どこか心地よい、頭に残るような鮮明な声だった。


センとクロは、明らかに別人と化したネクスに釘付けになっていた。


エニュートも声をかけられるまで、ネクスを認識しておらず、振り向く。


「ん?ネクス、いつから背後に?戦闘中で、つい油断してしまいましたか。私としたことが、失敬。」

笑いながらも背後に取られた所を軽く反省していた。


「それと、なぜ?あなたは立っているのですか?それに傷も無くなってますね。答えてもらっても?」

ネクスの異常性に気付いたエニュートは質問をする。


しかし、それとは別にネクスは淡々と別の話を切り出していた。


「質問。個体名ネクスの根本は話し合い。もし、応じなければ対応します。」

無表情のまま、話すその様子をエニュートも不気味に思いつつ、返事をする。


「先の戦いで身に染みただろう?君じゃ私には絶対に勝てない。それなのに、話し合いが出来なければ応じる?意味がわからないな。」

ネクスの発言に苛立ちを覚えたのか、少し強い口調で話していた。


表情1つ変えないネクスは続ける。


「回答。個体名エニュート、戦う場合、次に勝つのは83%で私です。なので、戦闘は避けるべきだと推奨します。」

それを聞いたエニュートは「面白い、先程とは違う姿を見せてもらおうか」と、戦闘態勢に入る。


「報告。戦闘に入らなくても大丈夫です。すでに終わりました。」

エニュートが戦闘態勢に入り視点を前にいるネクスに向けた瞬間、その声は背後から聞こえていた。


「あ、あなた、いつの間に私の背後に!?」

と、振り向いた瞬間、糸が切れたようにエニュートは倒れる。


「回答。スキルの制限が“緩和された”私に勝てる見込みはイレギュラーが無い限り、10%未満です。」

クロやセンの目には何も見えていなかった。


その中である程度近距離にいたクロはかろうじてギリギリ見えていた。


(ネクス様の、あの速さ、なに?変化を見過ごさないように見てたのに、ネクスが“消えた”。そして気付けばエニュートの背後にいた。音も風も無かった。)


「なんか、ネクス様、怖い。」


AO(アビリティオーラ)も無ければ表情も無い。そんな様子にクロは恐怖を感じる。

しかし、そんな中、安心感も覚えており、言葉にできない感情によって支配されていた。


「回答。大丈夫。危害は加えません。」


「報告。個体名クロとセンの状態を確認しました。傷の修復を施します。」

そう言うと、片手をクロに、もう片方をセンに手のひらを開いて向ける。


向けられて数秒、クロとセンの傷は何も無かったかのように完全に消えた。


「えっと、ありがとう。ネクス様...でいいんだよね?」

クロが率直な質問を投げかける。


「回答。その質問には答えられないです。」


「なら、私から質問いいでしょうか?」

センがネクスに少しずつ近付きながら問いかける。

その質問に頷く。


「あなたの目的はなに?私たちの味方として認識して大丈夫ですか?」

センは試したかった。この人がネクスじゃない別の“ネクス”なら、味方なのか敵なのかそれを確認しなければと。


「回答。」


「今は味方と伝えておきます。」

曖昧な答えが返ってきたが、“今は味方”これが聞けてとりあえず受け入れることにした。


「報告。効力の低下。体への負担増加。を確認。」

ネクスはそう伝えると直ぐにエニュートと倒された狼型の魔物の元へと向かい。触れる。


「......完了。目的を達しました。体の主導権を個体名ネクスへと変わります。」

金色の瞳孔が揺らぎ、瞼を閉じる。そしてその場でばたりとネクスは倒れる。


「ネクス様!!」


クロとセンが倒れるネクスに声をかけながら近寄り、すぐに村へと運び込むのであった。

最後まで見ていただきありがとうございます!

前作から続けて見ていただいてる方、今回初の方、いろんな方に見ていただき嬉しい限りです!


よろしければ評価・ブックマーク等していただけると励みになります。

次回21話もよろしくお願いします!

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