15話 拡大
⚪︎前回のあらすじ
流れで村の代表となったネクスは、仲間たちと共に“争わないためのルール”を定める。
種族を越えた共存という理想のもと、村は新たな一歩を踏み出した。
しかしその裏で、村を遠くから観察する者たちの影があった。
その存在に気付いたネクスは、とある行動に出る―――
「ねぇ、ここまでついて来ちゃったけど、本当に大丈夫なの?」
少年の後ろをついていく2人のうちの1人が、不安そうに大柄な男へと小声で話しかける。
「勘だが、大丈夫だと思う。襲うつもりなら、さっきのシャドウウルフで終わってたはずだ。だがそれをしなかった……何か考えがあるんだろうな。」
不安を振り払うように、そう言って安心させようとする。
出会ってまだ時間は経ってないが、目の前にいる少年には敵対意思がないように感じていた。
少しずつ見えてくる村を前に、2人の間に緊張が走る。
そんな様子に気付いたのか、
「あ、心配しないでいいからね?とって食おうってわけじゃないし、むしろ歓迎されると思うよ。」
ネクスは笑顔でそう答える。
「は、はぁ、なら安心だな。」
それを聞いた冒険者は顔を引きつらせていた。
そうして村へと辿り着く。
俺が門をくぐるとすぐに現れる影が見えた。
「あ!やっとネクス様帰ってきた!遅かったじゃん」
明るい雰囲気で迎えてくれたのはクロだった。
「待っててくれたのか、今戻ったよ。」
やり取りをしている中、後ろでは話し声がする。
「うん。やっぱり話し合ってるよ。どうなってるんだ?」
「いや、もう毎回驚くのも疲れるし、慣れましょうよ。」
(あらら、やっぱりこの様子ってそっちから見たら異形なんだね)
そんな後ろの連中のやり取りを聞いていて、ふと気付いたことがあった。
「ねぇ、お兄さんたち、一つ聞きたいんだけど、ちょっといいかな?」
「お、おぅ、なんだ?なんかあったか?」
男の方はまだ慣れない様子だったため、少しぎこちない。
「森の中や今のやり取りを見るに、魔物と話している内容、分かる感じ?」
(さっきから疑問だったんだよな。クロと話している時、理解しているようだった。俺は翻訳系スキルを自分に付与してるから分かるけど、この人たちはなぜ分かるんだ?)
「あぁ、分かるぞ?むしろ、言葉が分からないやつはそこら辺にいる魔物くらいだな。」
隠す気なくすぐに返事が返ってきた。
「え?ってことは魔物や人間同士で話すことが可能ってことであってる?」
スキル付与しないと聞けなかった言葉をこの人たちは理解している。なぜなのか、よく分からないでいた。
「ネクス様!お帰りなさい。ご馳走用意してますよ!」
その声に、俺は思考を中断させられた。
声のする方を振り向くと、
手を大きく振ってくる人影があった。
バフスライムの“スイ”だ。
その姿は高校生なみの背格好。
青い長髪が特徴的で、天真爛漫な性格をしている。
他の進化先になったスライムたちとは異なり、変幻自在が特化され、完全に人間と同じ見た目になっていた。
「スイか!教えてくれてありがとう。ちなみに今日はどんなご馳走があるんだ?」
「え〜とね、ごめんね!分からないや」
片手を頭の後ろに置き笑いながら答える。
(みんな、進化してから、俺との関わり方がガラリと変わる奴多いよなぁ。まぁそれだけ信頼?してくれてるって思っとこ)
「よし!じゃあご馳走もあるみたいだし、食べながらでも話をしようか」
そうして2人の合意のもと、食事の会場へと向かう。
「え?うそだろ!?」
片方は驚き、
「初めて見たー!」
かたや、もう1人は釘付けになっていた。
進化して狩りのレベルも上がったらしく、
本来なら捕まえるのが困難な“しちめんぎゅう”を狩ってきていた。
「え?そんなに珍しいものなのか?」
2人の驚く姿を見て俺は疑問をぶつけていた。
「いやいや!滅多に目にすることもなく、貴族様の間でもお目にかからないレアな生き物なんだよ!」
目をキラキラと輝かせながら早口でそれを伝える。
「ふぅ〜ん、レアねぇ……」
中々の大きさのものが5頭ほど並んでおり、
ここにいる魔物たちだけでは余るくらいの量だった。
(ある意味、今日がご馳走を作るってみんな張り切ってたし、正解だったかもな)
「ネクス様、みんなここに集まりました。挨拶をお願いします」
そう言ってセンが隣から声をかける。
(え、挨拶って何したらいいんだろうか、前世でもやったことないからよく分からない)
注目が集まる中、皆が今か今かと待っている。
「よし!今日はみんなの進化祝いだ!遠慮せず食べて楽しんでくれ!」
「おぉーー!」
その声とともに勢いよく食べ始める。
丸焼きにしてかじる。
薄切りにして食べる。
岩塩のような物を使って食べる。
など、様々な方法でみんな食べ始める。
そうして落ち着いた頃、
「ふぅ、食った食った〜こんな贅沢しちゃっていいんですかね。部外者の俺たちを、」
森の中で警戒していた自分を振り返り申し訳なさから言葉が漏れていた。
「いいんじゃないか?俺はこの村を大きくして、みんなが安心して暮らせる場所にしたい。そのために共存の道を選んでる。だから、そんなこと気にしなくていいよ」
(警戒するのは当たり前だ。目の前には魔物、それを束ねる子ども。意味がわからないだろうな)
「さて、じゃあ、話をしたいんだけどいいかな?」
落ち着いた様子を見て改めて話を進める。
「ん?あぁ、こんなご馳走してくれたし、歓迎もしてくれたんだ。俺たちで答えられる部分は答えるさ。」
男はご機嫌な様子で答えてくれた。
もう1人も意見に賛成だった。
「じゃあ、まずあんな森で何をしてたんだ?」
(悪いことを考えていたら隠すだろうけど、人間側ならギルドみたいなのがあって、クエストみたいなのを受けた帰りか、向かう途中だった可能性もあるな。)
「あぁ〜そのことなら、単純にクエストの依頼を終えたから町へ戻る途中だったんだ」
「そうそう、で、その帰りにたまたま村を見つけたって流れなのよ」
そのことを聞き、複雑なものではなかったことに安心する。
「そう言えば、クロのことをBランク上位の魔物って言ってたな、あれってどういうことだ?」
町と村では知識量が違うため、食いつきながら、森の中でのやり取りを思い出し、質問をする。
「それは私が説明するわ。」
横で水を飲みながら食べ休みをしていた女性が声をかける。
「私たちの町、っていうより世界共通かな、魔物には危険度があってね?」
(話をまとめると、魔物にはランクがある。FからA、その上にSからSS。が存在する。さらに各ランクには細かく下位、中位、上位が存在する。)
「なるほどねぇ、クロってシャドウウルフ、そっちから見ればランクB上位にあたる魔物だから警戒してたのか。」
(ん?ってことはやっぱりクロって性格はともかく、人からしてもかなり強い分類ってことだよな)
俺は横目にたらふく食べて横になるクロをみる。
「あ、そうそう、ひとつ聞きたいんだけど、なんで魔物と人とが話せるんだ?」
スキルによって話せるようになった俺とは違い、最初からコミュニケーションが取れていたところが気になっていた。
「え?ん〜なんでだろうな、初めから普通に話せるぞ?」
(ん〜、話を聞くにも最初からできるかぁ、考えられるのはひとつくらいだなぁ)
「ねぇ、私たちからも質問していいかしら?」
冒険者の方からも質問したいらしい。
(ここに来て色々あったし、そりゃ質問の一つや二つ出てくるよなぁ)
「いいぞ。答えられる範囲で答えるさ」
(隠す理由はないが、下に見られる訳にはいかない。こちらの素性を明かすようなことはならないように気をつけよう)
「じゃあ、単刀直入に聞くけどさ、君って人間なの?」
その言葉を聞き、想定通りの質問がくる。
「俺は、あくまでも人間として生きるつもりだ。だから、お姉さんたちも俺のことは人間として扱ってくれると助かる」
「うん。分かった。まぁやってることは理解できないけど、見た目は人間と変わんないしね!」
笑顔で返してくれて内心ホッとしていた。
「あ、あとさ、今日は夜遅いし、よかったら泊まっていきなよ。夜は魔物もよく出てくるし、」
「お!いいのか?それは助かるし、お言葉に甘えるぜ」
その日、冒険者を泊めることとなった。
俺は自分の寝ぐらに戻って横になる。
「今日も色々あって大変だったなぁ」
(思い返してみても、あの人たちの視点だと異様な光景だもんなぁ、異種族の魔物に人間が一緒に住んでるんだもんな)
一日の出来事を振り返ると今更な気がしてならない。
「あ、そういえば、言葉のやり取り、なんでできたんだろう?初めからって言ってたよな。それって原因は俺なんじゃ」
改めて俺に付与している翻訳系スキルの詳細を聞いてみる。
「回答。Nスキル(聞き分け)は言葉のやり取りで自動的に分かる言葉に変換します。」
(ん〜なんとなくだけど、分かった気がする。)
(おそらくだけど、この世界の言葉は魔物も人も共通なんだろう。俺は異世界人で、日本語や一部の外国語しか分からない。だから、自分に翻訳系スキルを付けることで話せるようになったって感じか)
謎を自分なりに理解し、胸の中のモヤモヤが消える感覚でスッキリしていた。
「……ふう、今日はもう寝よう。また明日少し話したいこともあるし、」
冒険者の人たちとの関わりはこれ以降あるか分からないため、今後のことについて協力してもらおうと考えていた。
そうして、次の朝を迎える。
最後まで見ていただきありがとうございます!
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