8話 信頼の証明
⚪︎前回のあらすじ
改めてゴブリンたちと協力関係を結ぶ。
俺は学び得たことを無駄にはしないと心に誓う。
修行に励む中、知らぬ間に“影”はすぐそこまで迫っていた。
俺は早く起きて昨日の続きをしていた。
軽くアビリティオーラを意識して、強さを変えてみる。
ゴブリンのおかげでオーラを視認できるようになったが、これを出し入れするのはかなり難しい。
相手のオーラを視認するためのオンオフは簡単だった。
意識を強くすると、確かに熱を帯びる感覚はある。
だが、見た目はほとんど変わらない。
「ふぅ、思ったより難しいな。ずっと意識を強く保ったり、弱めたり、かなり疲れる。」
(ーーー積み重ねが大事だ。)
とりあえず毎日この特訓をやるしかないな。
あとは、俺のスキルについてだ。
とりあえず、前に言われたように回収をしてみる。
近くにあった木箱に意識を集中する。
消えた。
(よし、次は出す方だな。手に意識を集中する。)
何も無いところから木箱が出てきた。
「よーし、とりあえず感覚は間違ってないな。」
(1つ気がかりなのが、“保存”だな、コピーして保存する。だけど、木箱を回収したからまた出せるってことかな?)
手に集中する。
・・・何も起きない。
「ん〜何にも起きないなぁ、コピーして保存って決まった対象があるってことか?」
そう悩んでいると隣から大きなあくびが聞こえた。
「お、おはようクロ。起こしちゃったか、ごめんな。」
目を覚ましたクロは前足と背中を伸ばしている。
その時、俺はあることを思い出していた。
「あ、そうだ!確かクロのスキルを回収した時、スキルを回収。って言ってたな。もしかしてそっちが保存の対象か?」
思いつきだった。
物の複製やコピーじゃないのならスキルの方かもしれない。
だが、調べる方法が思いつかない。
「さてと、俺のスキルの実験をどうしたらいいものか」
その時、
入り口から入ってくる音が聞こえた。
振り返ると、女ゴブリンがフルーツを持っていた。
「こレ、近くで取れル。美味しいから食べてイイ。」
わざわざ取って持ってきてくれた。
「ありがとう。ありがたくいただくよ。」
俺はその果実をかじった。
見た目は赤く、リンゴに近いものを感じた。
(味は少し酸味がある。後から甘味を感じるな。)
「これ、すごく美味しいね。ちょうどお腹すいてたし助かったよ。」
「うん。よかっタ。」
(こうして、美味しい食べ物を分けてくれるんだな。協力とは言ったけど、魔物って結構優しいんだな。)
俺の記憶と少年の記憶から、魔物は人から見たら害のある存在だと思い込んでいた。
だが、ここ数日の関わりだけでもかなり良くしてくれている。
同時に思いついた。
(美味しいものを共有、、、、1人で悩んでたけど、俺のスキルのこと、この子に相談したら解決するんじゃないか?)
そんな思いつきから、すぐに話しかけていた。
「なぁ、ちょっと聞きたいんだけど、俺のスキル、“管理”って言うんだけどさ、、、」
「その内のひとつに保存っていうのがあってな?複製して保存するっていう意味らしい。」
「で、物の複製はできなかった。だからスキルのコピーなのかな?って思って実験したいんだけど、どうしたらいいか分からなくてさ。」
素直に話していた。
前世では人を信用しきれなかったはずなのに、
これも、少年と同化したのが理由なのか、相手が“魔物”だからなのか、定かでは無い。
そんな不安もあった。
「そうだナ、なら、私で試すカ?」
唐突だった。
自分が実験台になると言ってきたのだ。
どこの誰ともしらない相手のことなのに。
「いいのか?相談して言えた口じゃないけど、誰とも知らない相手だぞ?」
「それもそうダ、だけど、信用を寄せるなラ、まず自分からだと私は思ウ。」
俺はこの子から学んでばかりだな、
前世を引きずって人を信用できない俺とじゃ根本的な部分では負けている。見習わないとな。
「そうだね。ありがとうな。」
「じゃあ、まず私のスキルを複製できるか試してくレ。」
「分かった。」
俺はこの子の手の上に自身の手を置いて意識を集中させる。
あの声がまた聞こえてきた。
「確認しました」
「個体名、ゴブリンからNスキル(聞き分け)を回収しました」
「Nスキル(聞き分け)を改善しますか?」
(改善って、あるべき姿に戻すんだよな?なんでこのタイミングで問うんだ?)
もし、何かあっての確認なら元に戻してあげたい。
心の中でYESと答える。
「承認。改善を開始します。」
「・・・終了しました。」
「個体名、ゴブリンにNスキル(聞き分け)を付与しますか?」
(YES)
「承認。付与を実行、、、、、、完了しました。」
完了したと同時に疲れを感じる。
この時、付与された一瞬だが、ゴブリンはクロの時と同様に、光っていた。
そうして、、、、
「どうだった?」
「君のおかげで、スキルの回収から付与までの流れは確認できたけど、保存ができたのか分からないままだ、、、」
何も起きない。
……本当に、何も起きていないのか?
すると、女ゴブリンがそんな俺の様子を見たからか話しかけてくれた。
「まぁそんなこともありますよ。」
「慰めてくれてありがとう、なんとか頑張ってみるよ。」
お互い話し合っていた。
「ところでスキルを付与した辺りから気になってることがあってさ、」
首を傾げる女ゴブリンに問いかけようとする。
「なんか話し方、流暢になってないか?」
以前まで慣れない言葉で話していたのに、今ではそんな姿が見られない。
「あれ?そういえば、そうですね。」
「う〜ん」と、ゴブリンも考えている。
(スキル関係で翻訳してる。って言ってたな。)
回収したスキルはNスキル(聞き分け)。
これが翻訳しているスキルなんだとしたらこれに何かが起きているんじゃないのか?
勘でしかなかったが、頼むことにした。
「ごめん、もぅ一度、君で試したいことがあるんだけどいいかな?」
すると、女ゴブリンはすぐに「いいよ」と返事をして手を出してくれた。
力を込める、、、、
「確認しました」
「個体名、ハイゴブリン――」
(ハイゴブリン?)
え?ハイゴブリンってなに?さっきまでゴブリンだったじゃん?
俺の驚きを気にもせず淡々と伝えていく。
「個体名、ハイゴブリンからスキルの回収は不可能です。」
え?ちょっと待って、さっきまで回収できてたのに、、
また情報が入り込んで来たな、、、
「回答。対象のスキルが自身と同じレベルの場合、回収は不可能です。」
あ〜つまり、回収をする際は、自分の持つスキル。つまり、Rスキル(管理)より階級の低いスキルしかできないってことか。
(だとしたら、なんでNスキル(聞き分け)を回収できないんだ?外して戻した。だけだよね?)
それに応えるかのように返答が帰ってくる。
「回答。Nスキル(聞き分け)をコピーした後、改善してあるべき姿に戻しました。」
「個体名、ゴブリンに付与した瞬間、種族とスキルが進化し、Rスキル(翻訳)になりました。」
え!?進化、、、しちゃったの?
この回答以降、システムのような声は聞こえなくなった。
(もしかして、俺のスキルって、スキル本体を“正しい形に戻す”力なんじゃないか?)
それなら、今のシステムの話に納得ができる。
あるべき姿に戻したからこそ、その反応で種族も進化をしているのかもしれない。
ふと、目を開けてハイゴブリンに目をやる。
今の俺なら分かる。明らかにオーラの量が昨日の3倍くらいだろうか、溢れている。
自分のスキルに、ようやく意味が見えた気がした。
他者に本来あるべきスキルの強さを底上げする。
誰かの役に立てるという気持ちが嬉しかった。その気持ちが昂り、手に力が入る。
だが一つだけ、まだ掴めないものがある。
“保存”。
その意味を知る日は、思っているよりも近い。
だが今の俺には、それを知る由もなかった。
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