第43話 同類相憐れむ
東のローゼリアン王国の貴族相手に売れそうな商品を探し出すために、わざわざ南の王国のそれも片田舎の市場まで足を運んだが、これと言って目ぼしい物は見つからず、落胆していたヴィクトリアは、戻って来たレニードのかいつまんだ話を聞いて、思わずこめかみを押さえて頭を抱えた。
(レニード!このお人好しが)
と言いたいのを我慢した。
「で…その魚をどうしたいんだ?レニード」
「なんとか…全部売りさばく方法はないかと思いまして」
「あるわけないだろ!今何時だと思ってる。仲買人の殆どは午前中に取引を終えている。今から来るのはせいぜいそこら辺の一般人くらいだ」
「そうですよね」
レニードはシュンとした。
「レニード、お前、そのシオス村とかとなんか縁でもあるのか?」
と言われてレニードは、
「縁と言えば縁なんですが…もうだいぶん昔になりますが…」
と言葉を濁した。
シオス村が野盗に襲われた時、助けに入ったのが赤い髪の双剣使いであるウォルフだった。レニードが遅ればせながら助けに入った時には、片がついていた。
まさかここでその時の村の人達に会うとはなんとも不思議な縁である。だからこそ余計なんとかしてやりたいと思ったのかもしれなかった。
「シオス村か…南のアルカディ王国の海沿いの小さな村だよな」
ヴィクトリアは小さく息を吐き、窓の外の喧騒へと視線を向けた。
海沿い、クレセント伯爵家の領地も海沿いの港町だ。同じ海に面した土地柄だと思い至ると、面倒事に関わりたくないという気持ちの奥で、どこか土地の縁のようなものを感じてしまい、ヴィクトリアは自分でも意外なほど、あっさりと考えを改めていた。
「レニード。中にこの市場の組合長がいるはずだ。彼に言って、便宜を図るように申し渡してくれ。それと色々その物知らずのシオス村の連中に色々教えてやってくれるようにも頼め」
「わかりました」
しばらくして、ようやくレニードが馬車に戻って来た。だが、彼は手に藁に包まれた生臭い代物を抱えていた。
「それはなんだレニード?」
「魚です。シオス村の連中が、世話になったお礼にと持たせてくれました。律儀な連中ですよね」
とにこやかに笑う。
「レニード、それをどうするつもりだ」
「え…どうって、お土産にでも」
「私等は旅の空だぞ! そんな藁包みの生魚が土産になるか! 帰る頃には腐ってる。肥料にでもする気か!!」
そこまで考えてなかったレニード。
シオス村の人達といいレニードは同類かもしれなかった。




