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第38話禁忌の領域(後編)

「ガレリア族とアシュベルク族の争いで、アシュベルク族に攻め滅ぼされたガレリア族のシーサーの母は、息子を連れて、自らの生まれ故郷の父母を頼ってクレミス村に戻った。」


ここまで聞いて、ジュールは思わず絶句した。

「いや……まさか、そんな……! 英雄シーサーの母は、北のドルイド族の出身のはずです。嫁ぎ先の村が焼き払われたあと、故郷である北のドルイド族の村へ帰り、そこで幼かった息子を育てたと……」


「それは『ユグドラシル大陸建国伝』の話だ」

マリア・ロゼは冷ややかな笑みを浮かべ、容赦なく真実を突き放す。

「いいか、ジュール。シーサーのフルネームは、シーサー・ルベルコルス・ガレリアだ」


「ルベルコルス? セカンドネームに……まさか、英雄シーサーは、クレミス村のルベルコルス族長の…」


「それだけではないぞ。その時のルベルコルス族長の息子の名前が、ウォルフガング・ルベルコルスだ。シーサーの従兄弟にあたる男だが……彼こそが、この大陸を統一した真の最大の功労者だ。シーサーなぞ、彼の莫大な功績を横取りしただけの……ただの傀儡にすぎない」


これまで信じてきたユグドラシル大陸建国の話が嘘だったという事実に、ジュールは混乱した。

英雄シーサーの血を引かない王家の人々。そのうえ、シーサーは英雄でもなんでもない。

それが彼の頭の中をぐるぐると巡った。


「のう、ジュール、これでわかったろう。父上が何故あれほどあの婚姻をつぶしたかったのか。…父上が認めいれば、いや…シニストラが伯爵家を継がなければルカは死ぬ事はなかったのじゃ。元々シニストラは悪い噂しかなかったのに…あれに継がせるという決定をしたのは父上じゃあ」


ルカの父である前クレセント伯爵が亡くなったあと、誰にあとを継がせるのか?クレセント伯爵のあとを継ぐ候補はシニストラ以外にも数人いた。だがいずれも東のローゼリアン王国の人間ではなかった。それを理由として、最終的にシニストラが、クレセント伯爵を継ぐ事になったのだ。決定を下したのは東のローゼリアン王国の国王である。


マリア・ロゼの瞳から涙が落ちる。

その涙を拭う事なく、彼女は絞り出すような、しかし拒絶を許さない声で言い放った。


「これでもまだそなたはヴィクトリアにあの土地を返す事に異を唱えるのか?」


静まり返った私室に、その問いだけが重く響く。ジュールはもはや抗う気力を失っていた。


「わかりました」

力なくそう言うと、ジュールは深く息を吐き出し、押し寄せる眩暈と絶望を無理やり喉の奥へと押し込んだ。そして意を決したように顔を上げ、冷徹な宰相としての表情へと戻った。


「『歴史的経緯を踏まえた特別返還』という名目で公文書を用意致します。それと土地の返還に関してヴィクトリア嬢にも来て頂き、署名をしてもらわなければなりませんが」


「わかった。すぐに、わらわがヴィクトリアに書状を出す」

マリア・ロゼの力強い言葉に、ジュールは静かに頭を下げた。


爵位なき土地の返還という異例の協定。

その土地返還が次の嵐を呼ぶ幕開けになるのだった。

ヴィクトリアの父親のヴォルフの正式な名前が

ヴォルフガンフ・ルベルコルスでしたが、

ヴォルフガンフというのは間違いじゃないか、とAIのClaudeに今更指摘されました。

ヴォルフガングという名前はあるけど、ヴォルフガンフという名は見たことないそうです。


ヴォルフガングという名もドイツ読みですし、

英語読みならウォルフガングのようなので、

この話からウォルフガングということにします。徐々にですが、今まで書いていたのも直していきます。

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