【外伝23話】愛する人の為に
この世界で戦争が起こることは必然なのだろうか
ソフィア様の6歳の誕生日から8年が経過した
戦争は4年前から始まっていて未だに終わる気配はない
敵国の戦士ライを殺そうと何度も計画してはいるもののことごとく失敗しているようだ
ライは魔力を感知することが出来るようで、どこにいるか把握される為意表を突いた作戦が通用しないようだ
もちろん正面から正々堂々と戦っても勝てるわけもなく…
それでもグリード家も戦争の為に武力を上げていたので、簡単にやられることはない
魔力では勝てないとわかっていたので、グリード家は科学力を駆使して戦車や戦機を大量に生産することに成功していた
クラウド様が魔力がない自分でもサテライト様を守る為に戦えるようにと10年かけて対策していたおかげだ
魔力が使えない平民でも戦場で戦えることになり、負けないようにはなっている
事態は平行線になり、戦争は4年間も続いている
大量に死んでいく戦士達
終わらない地獄
それでも降伏をするわけにはいかない
降伏をすればこの国の国民は奴隷のように扱われる
ソフィア様だって王族ではなくなり、敵国に殺されてしまう
終わらせたいと誰もが思っているが
終わることのない地獄が続いている
「私も戦場に出る。」
ソフィア様が唐突に宣言をした
「ダメに決まっています。ソフィア様はグリード国のたった1人の後継者です。死ぬわけにはいかない。」
「でもアーマーお兄様は戦場で戦っていたのでしょう?私と同じ14歳で。」
「アーマーお父様は全部の魔法を使えた天才だったからです。アーマーお父様は1人で3000人の軍隊を壊滅させていました。ソフィア様とは全く違います。」
「私は炎の魔法しか使えないけれど、それでもこの国の誰よりも強い魔法使いよ。違う?」
「ソフィア様はたしかに強いです。さすがグリード国の王家の人間だ。でも戦場に行くのはダメです。戦力で押し切れる相手ではない。」
「私が戦争で戦えるように幼少期から魔法を鍛えていたのでしょう?私ももう14歳になった。この戦争を終わらせる為にも私が戦場に行くべきよ。」
「なりません。ソフィア様こそこの国の希望。絶対に失うわけにはいかないのですから。」
「そんなこと言って戦争がもっと長引いてどんどん我が国の民が死んでいくのはもう嫌なの。」
「この戦争を終わらせようとみんな頑張っています。信じて待ってください。」
「もうたくさん待ったわ。アーマーお兄様は14歳の時に戦場に行って2年で戦争を終わらせたんでしょう?」
「アーマーお父様と比べてないでください。」
「私だってグリード国の王家として責務を果たす時がきたのよ。グレイ。」
「…王様と王妃様はどう言ってるのですか?」
「戦争に行きたいのなら応援すると言ってくれているわ。」
「そんな…!!」
「大好きだよ。グレイ。私は必ず勝って帰ってくる。その時は結婚しよう。」
「待ってください!強制的に戦場に行けと言われていないのなら行く必要はないはずだ!」
「ごめんね。グレイ。私は腐っても王族。この国の民を守る為に戦わないといけない。」
「そんな…!ソフィア様が何で…」
「絶対に勝って帰ってくるけど…もしも、もしもだよ?私が死んでしまってこの戦争に負けてしまったその時は…もう一度10年時を戻してタイムリープさせて欲しい。」
「10年時を戻して記憶があるのはルナお母様の痕跡を強く受け継いでいる者だけだ。そんなことをしたらソフィア様の記憶はなくなるのですよ!?」
「わかってる。それでもいい。」
「どうして!?僕のことを忘れてもいいのですか?」
「だって何回忘れても私は絶対グレイが好きになる。だから怖くないよ。」
「僕は…嫌です。耐えられません。」
「ねぇ。グレイ。愛してるって言って。」
「僕は…ただの世話係で…立場が違いすぎ…」
「関係ないよ。愛しているって嘘でもいいから言って。これが最後かもしれないから。」
「最後なんて…!そんなこと言わないでください!!必ず帰って来るって言ったじゃないですか!!」
「仕方ないじゃない。戦場に行くというのはそういうことでしょう?」
「嫌です。行かないでください。」
「…ごめんね。グレイ。行ってきます。」
ソフィア様はそう言って戦場へと行ってしまった
何も出来ない無力な自分が大嫌いだ
心を読める魔法なんて戦場では何も意味がない
足手まといだ
ソフィア様を守る魔法が使えたらよかったのに
僕はこの王城で毎日神に祈りを捧げることしか出来ない
「グレイ君。朗報がある。」
そう言って声を掛けてきたのはクラウド様だった
魔力がない平民出身ながら、グリード国に戦力を大量に用意することが出来た化け物だ
サテライト様と結婚するという野望の為になら手段を選ばないと噂だ
「なんでしょうか。」
朗報だと無力な僕に声をかけるなんて
僕を人間魚雷として特攻させるつもりなのだろうか
それでソフィア様が守れてこの国が救われるなら
喜んで受けるけれど
クラウド様の指示なら有益に使ってくれるだろう
ソフィア様が生きていてくれるならそれで構わない
「実はね。異世界に行ける魔法使いを捕まえたんだ。」
「え…えぇ!?」
「スズという男だ。異世界を転々としているからこの世界にいる時間が少なくて捕まえるのに苦労したが…ようやく捕まえることが出来たよ。」
「じゃあルナお母様とアーマーお父様に会えるのですか!?」
「そうだ。」
「凄い…さすがクラウド様ですね!異世界の魔法使いを見つけることが出来るなんて!」
「異世界に行くことはルールがある。異世界で滞在出来る期間は1か月だけ。1か月で異世界にいるルナとアーマーを探さなくてはいけない。異世界に行けるのはスズともう1人だけ。」
「僕が行ってもいいのですか?」
「グレイが適任だからね。」
「ありがとうございます!じゃあ僕はルナお母様とアーマーお父様に会いに行って…」
「一度行った異世界はもう二度と行くことは出来ない。」
「え…そうなのですか…?」
「帰って来れる人は1人だ。」
「まさか…」
「察しが良くて賢いな。グレイ。」
「…。」
「アーマーをこの世界に連れ戻せ。グレイはルナと異世界に残るんだ。悪くない話だろう?」
「…アーマーお父様はルナお母様と引き離せばそれこそこの世界を崩壊させるだけだと思いますが。」
「じゃあソフィア様を殺して、この世界をもう一度10年タイムリープさせるのか?」
「ソフィア様は負けない!勝って帰って来るって…」
「わかっているだろう?ライには勝てないよ。」
「…。」
「アーマーを連れ戻せるのは息子であったグレイだけだ。アーマーが世界を崩壊させたらタイムリープさせればいい。何度もアーマーを説得するほうが勝ち筋がある。異世界人は別の人を探せばまた元の世界に戻れるかもしれないからな。」
「…。」
「頼んだよ。グレイ。愛するソフィア様の為なら何でもするだろう?」
ごめんなさいルナお母様、アーマーお父様
2人はやっと異世界で幸せになれたのに
2人の仲を引き裂く愚かな息子でごめんなさい
僕はどうしてもソフィア様を
愛する人を守りたい
僕はスズさんと一緒に異世界へ行くことにした
アーマーお父様を取り戻す為に




