【外伝20話】 残された世界
ルナお母様とアーマーお父様が異世界へと転移してから1ヶ月が経った
ルナお母様がアーマーお父様も連れて行くであろうことは王様は予想出来ていたようだった
この世界では2人は幸せにならないことがわかっていたのだろう
2人が幸せの願って王様は異世界送りにしたのだ
ルナお母様は生きてる
僕が貰ったお揃いのグレーダイヤモンドのピアスはお互いの無事がわかる仕様になっている
ルナお母様が死んでいれば僕が持っているグレイダイアモンドのピアスは砕けて壊れているはずだ
グレーダイアモンドのピアスが壊れていない限り
ルナお母様は生きてる
きっと今頃は異世界でアーマーお父様と幸せに暮らしているのだろう
僕は自分の魔法の力の扱い方を学ぶ為に王城に残り、執事のポール様の元で働くことにした
僕はポール様か心を読む魔法の扱い方を教わった
触れることでしか心を読むことが出来なかったが、目を合わせるだけで読むことが出来るようになった
それに制御することも出来るようになった
前までは触れると自動的に魔法が発動して頭に心の声が流れ込んできたが
今は触れても魔法が発動しないようにもなった
ポール様が優しく魔法の扱い方も執事の仕事も教えてくれるので穏やかな毎日を過ごしている
ルナお母様とアーマーお父様に置いていかれた僕が残ったのはお金とこの力ぐらいだから
人に支配されない生き方をするには力を手に入れるしかない
利用される側にはならないように
僕は必死に勉強した
2人を思い出すと
僕だけこの世界に取り残された事実に押しつぶされて悲しくなるから
1日の終わりは必ずベースを弾いてルナお母様が最後に僕の為に残した愛の歌を歌う
“私が恋しくなったら歌ってね”とルナお母様は言っていた
だから僕は毎晩歌うんだ
だって毎晩恋しいんだから
会いたいと願っているんだから
無事な世界にいるのなら
僕も連れて行って欲しかった
ポール様は優しくしてくれるから頑張れているけれど
お城の人達はやっぱり新参の僕のことなんてよく思っていないし
僕は心の声が聞けてしまうから本音も筒抜けでわかってしまうのが辛いよ
ここは笑顔で腹の探り合いをする人達が多すぎる
マナお母様とアーマーお父様がいかに本音で生きていたのかを実感するよ
会いたいよ
死んでも構わないから一緒に連れて行って欲しかった
2人がいなくなっても穏やかに日常は過ぎて行った
あの日までは
「おはようございます。ポール様。」
俺は身支度を終えてポール様に挨拶をする
「おはよう。グレイ。今日はお金の管理のやり方を教えます。」
「畏まりました。」
「グレイもこのお城での生活に慣れましたね。」
「ポール様のおかげです。」
「私達の家系は心が読める家系ですが、直系の血族でも遺伝することが少なくなってきています。遠縁のグレイが覚醒したのは本当に驚きました。」
「幸運なのか不幸なのか…」
「そうですね。人と違う力というのはいいことばかりではない。ルナ様とアーマー様は力が強すぎて異世界に送られることになりましたから。」
「僕も力が大きくなりすぎて、異世界送りにされたい。」
「異世界スクロールは1つしかありません。異世界へ追って行くことは難しいですよ。」
「わかっています。でも夢を見たっていいでしょう?」
「夢を見るならこのお城は向いていません。グレイはもう力の制御は出来るようになった。夢を見て旅に出るなら今しかありません。このまま城に残ると王家の執事として働くことになります。心を読める能力は私とグレイしか覚醒していないのですから。」
「え?僕だけなんですか?」
「そう。グレイだけ。私はグレイにはこの仕事を受け継ぎたくない。人の醜さを知りたくないことをたくさん知ってしまうのは心が壊れてしまう。グレイはルナ様の願いで旅に出て自由になれる権利がある。そろそろこの城から出た方がいい。王家に忠誠を誓って働くのは嫌だろう?」
「利用されて生きていくことになるのか。」
「そうだ。だから早く逃げなさい。」
「そんなこと言ってもいいの?」
「執事としては失格だ。でもルナ様の忘れ形見のグレイには幸せになってほしいからね。」
「幸せに…」
ドン!!
大きな物音が響く
城は襲撃に遭い城が崩壊していく
人が逃げ回り、騎士や魔術師達は襲撃相手と戦いが始まってしまった
「何で…」
「逃げなさい。早く。」
「どうして!戦争はアーマーお父様が終わらせたはずなのに!!」
「アーマー様がいないことが敵国にバレてしまった。報復の為に戦争を仕掛けられた。」
「そんな…!!」
「逃げなさい!!早く!!」
僕はポール様の気迫に押されて走り出す
戦いが始まり人が死んでいく姿を横目にとにかく逃げた
逃げるあてなどないのに
僕に帰る場所なんてない
それでも幸せになるようにとここに残された
僕はまだ死なない
何の為にこの世界に残されたのかわからないまま死ぬわけにはいかない
僕は走って走って逃げた
何日経っただろうか
野宿を繰り返して何とか生き延びている
町の人から聞くと、この国はかなり不利な状況らしい
ほとんどの戦力である騎士も魔術師も壊滅させられているようだ
アーマーお父様がいないだけであっという間にこの国は滅びそうになっている
ルナお母様とアーマーお父様を追い出したりするから報いを受けたんだ
こんな国滅んで当然だ
そんなことを思っていたら
時空が歪んだ
目の前が真っ暗になり気持ちが悪い
僕は思わず目を閉じる
「う…」
しばらく目を閉じたまま待っていると落ち着いてきた
僕がゆっくり目を開けると
「おはよう。グレイ。」
崩壊したはずの城は元通りになり、ポール様が何事もなかったかのように僕に挨拶をする
「な…なんで…」
「時間回帰のスクロールを王様が使ったのです。」
「時間回帰のスクロール…?」
「ルナ様が時間回帰のスクロールを作ってくれたのです。異世界に行く前にね。王城が崩壊される1週間前まで時間を戻しました。」
「え…」
「そのグレーダイアモンドのピアスを外しなさい。ルナ様の痕跡を強く受けた物を持っていると記憶を残したまま時空を超えて戻ってしまう。」
「でもこれはルナお母様からの大事な形見…」
「これから地獄のタイムリープが始まります。上手くいくまでずっと時間を戻してやり直すのです。記憶があれば狂ってしまいますよ。」
アーマーお父様がいなくなったこの国と敵国では戦力に差がありすぎる
この国が勝つ未来なんてほとんどない
大量に人が死ぬことを繰り返す
地獄のタイムリープが始まった




