【外伝14話】許すことは怠慢だ
事件から1週間が経過した
ルナの傷は完全に治ったわけではないが、痕は少しずつ消えている
ルナは祐也と花音の部屋で穏やかに暮らしている様子だそうだ
ベースの練習をやりたいと言っているが
生憎、アーマーとルナの家のような防音室はない為
テレビで映画を観て過ごさせているらしい
映画を見ながらお菓子を貪っているようだ
まるで何事もなかったかのように
1週間経ったので、俺はルナと話し合うことにして、ルナに会いに行った
「あ。翔じゃん。どうしたの?」
ルナは人の家のはずだが、リビングでくつろぎまくっていた
ソファに寝転びながら何故かあやとりをしている
「あやとりなんかして…よっぽど暇なんだな。」
「うるさいなー。あやとり楽しいよ?祐也に教えて貰ったんだ!橋を作ったりして、最後は手品〜って縄抜けみたいになるの!覚えたら結構楽しいよ。紐だけでこんなに遊べるなんて、孤児院のみんなとか喜んでくれただろうな〜。」
「ルナは孤児院育ちなのか?」
「そうだよ。今日は私の昔話でもしようか。アーマーと私の関係のことを聞きに来たんでしょう?」
「…話しても平気なのか?」
「全然大丈夫だよ。」
明るくルナは振る舞うが、どこか空元気だ
俺達に気を遣って明るくしているのだろう
花音さんが俺達にお茶を入れてくれてから
俺と祐也、花音にルナは昔話を始めた
「私は孤児院の前に捨てられた赤ん坊でした。」
「6歳までは孤児院でシスターと孤児院の子供達と一緒に暮らして育ちました。」
「ある日、アーマーが孤児院に遊びに来たんです。」
「私とアーマーは仲良くなり、私はアーマーの家に養子として王家に引き取られました。」
「…前世で監禁されて自由が奪われた記憶があった私は王家で暮らすことを嫌いました。12歳で私を自由にする。大金を払うと約束して私は12歳まで王家で暮らすことになりました。」
「私達は兄弟として育ったんです。」
「私は約束通り12歳で王家を出ました。夢だった旅に出たのです。ギターを教えて貰ったので、音楽家として旅を1人でする予定でした。」
「でも…アーマーはこっそり私の旅に両親に黙ってついて来てしまった。」
「私達はアース音楽団という旅の音楽団に入団させて貰って2年間旅をしました。」
「本当に…本当に楽しい旅でした。」
「あの日までは。」
「ある日、街が敵軍から奇襲を受けてたくさんの人が亡くなる事件が発生したのです。」
「私はアーマーに頼んだのです。助けて欲しいと。アーマーは私達を守るために…敵軍を殲滅させました。大量殺戮したのです。」
「その後、アーマーを隠しきれなくなった私達は王家に戻されました。」
「その時に真事実が発覚したのです。私は実はアーマーの王家に反逆を企てた血筋の反乱軍の一味だったんです。」
「私は処刑される立場になりました。」
「でも…6年間一緒に暮らした元親子です。情状酌量を頂き私の処罰は国外追放になりました。」
「国外追放されたら2度と国へは帰れない。そういう約束でした。」
「そして国外追放の日。私はアーマーを連れ出しました。誰にも許可を取らずに。」
「理由なんて好きだったから。それだけです。」
「アーマーも2度と国に帰れなくなりました。」
「私のせいでアーマーは故郷も大事な人も捨てさせてしまいました。」
「私のせいでアーマーは大量殺戮をさせてしまいました。」
「アーマーは何も悪くない。」
「私のせいでアーマーはこうなってしまった。」
ルナの独白が終わり、俺はお茶を飲み干す
「別れろ。」
と俺が言う
「話聞いてた!?私のせいでアーマーは…」
「関係ないよ。そんなこと。過去に何があったかなんて。罪の意識があるから何をされても何も言えないってことか?ふざけんな。」
「そういうことじゃないけど…」
「そうにしか聞こえたなかったけど。」
「罪の意識とか関係ない。私はアーマーが好きだから別れたくない。」
「一緒にいてもお互い不幸になってるだけだろうが。別れろ。」
「嫌よ。命懸けで私を助けてくれたアーマーを私は命懸けて幸せにするって決めたんだから。」
「自分が不幸になっても?」
「構わない。」
「だからお前らはダメなんだよ。」
「…どういうこと?」
「お互いが不幸でも見て見ぬふり。一緒にいられたらそれだけでいい。そればっか。」
「私は見て見ぬふりなんてしてない!アーマーと仲良く過ごせるように考えて…」
「ほったらかしにされていたことなんで文句言わなかった?」
「それは…私も自由にさせて貰ってるし…夢中になれることを見つけたなら邪魔になる存在になりたくなかったから。それに私の為に稼いでくれていることもわかってたし…」
「それでお互い嫌なことを我慢するから爆発するんだよ。お前らに足りないことは圧倒的に話し合い。嫌なことを我慢しすぎ。お互いに。アーマーだって3年も抱くことを我慢した挙句に他の男が優しかったなんて話をされたらそりゃ暴走するよ。アホか。デリカシーなさすぎだろ。」
「だって!トラウマになってるか?って聞かれたから…別にそんなことないって伝えたかっただけ…」
「まぁ…だからってルナに暴行したことは許せないが。」
「私も悪かったんです。許してあげてください。」
「許せるかよ。許しちゃダメなんだ。ルナは怒らないといけない。」
「別に怒ってないのに。」
「あのなぁ。怒ることは大事だぞ。また同じことを繰り返したくないだろう?」
「それはそうだけど…」
「怒ることも愛情だ。放置することは怠慢だ。」
「おぉ…なんか深い…」
「2度と同じことが起こらないような話し合いをアーマーとしろ。」
「別れなくてもいいの?」
「本当は別れた方がいい。次は刺されて殺されるかもしれない。アーマーは地雷男すぎる。それでも…本当に愛しているというなら。俺達も納得できるように話し合いをしろ。しっかり今回のことは2度と起こさらないと反省させるんだ。簡単に許したりしてはダメだ。わかったか。」
「わかった…あのさ。ありがとうね。翔がこんなに親身になって私を助けてくれるなんて思わなかった。」
「俺はリーダーだからな。メンバーが困っていたら助けるなんて当たり前だ。」
「本当にありがとう。私はchariotのメンバーでよかった。」
「そうだ。ルナ、お前なんで作曲してること隠していた?」
「え…恥ずかしかったから。」
「バカだろお前。」
「よく言われる。」
「俺、ルナの曲好きだよ。だからまた聞かせろよ。」
そう言うと何故かルナはポロポロと涙を流し始めた
俺は訳もわからずおろおろしてしまう
「え…なんで…泣いて…」
「嬉しくて…ありがとう。翔が好きって言ってくれるならまた歌うよ。」
「次はステージでな。」
「それはまだ恥ずかしいかも。勇気出ないな。」
「かっこいいのに。自信持てよ。」
「翔には敵わないよ。」
「まぁそれはそうだが。」
やっと安堵したかのようにルナは笑った
正直もうアーマーとは関わってほしくない
だが…ルナが別れたくないなら
今後同じことが起こらないように見張るしかない
はぁ…厄介なメンバーを入れてしまったな
でも…俺の曲を好きだと言うから
どうしてもchariotに入りたいと目を輝かせていうから
自信がなかった俺をもう一度輝かせてくれたから
ルナは俺の大事な大事なメンバーなんだ




