第7話:イカサマ
「何がおかしいの!?」
私は苛立ちを抑えきれず、憑き物でも憑いたかのように気味悪く笑う女たちを睨みつけた。
「いやあ、初心者は気楽でいいわね」
「初心者だからってバカにしないでよ。上がったんだから、私の勝ちで終わりでしょ」
「終わり、ね。確かに終わりだわ……あなたの負けでね」
「どうしてよ!?」
声を荒らげる私に、対面の女は勝ち誇ったような、ねっとりとした笑みを向けた。
「どうしてって、私のこの牌、わかるでしょ?」
「……白の、アンカンですよね」
「そう。ここに『白』が4枚ある。そして、あなたの手牌にも……ほらね」
「それは……っ!」
血の気がサーッと引いていくのがわかった。
私の手元にある牌を含めれば、どう数えても卓上に「白」が5枚存在している。
麻雀牌の総数は各種類4枚までという大前提が、完全に崩れていた。
「理由は簡単よ。あんたがイカサマをしたからに決まってるでしょ」
「ふざけないで! そんなのしてない!」
「ふん、口だけなら何とでも言えるわよ。そんなの、調べればすぐにわかるわ!」
女の合図とともに、ギャラリーの男たちが一斉に立ち上がった。
「そうだ! 身の潔白を証明しろ!」
「イカサマ野郎をひっぺがせ!」
下劣な野次が飛び交う中、私は逃げ場のない恐怖と怒りに震えながらも、目の前の卓を強く叩いた。
「いいわよ! いくらでも調べてみなさいよ!」
女たちはしたり顔でうなずくと、私の目の前にある卓の側面を力任せに引っ張った。
ガチャリ、と重い金属音が響き、麻雀卓の構造の一部がスライドしてせり出す。
そこには、プレイヤーの目からは死角になるよう巧妙に作られた「隠し引き出し」が備え付けられていた。
――ガラガラッ!
引き出しが開いた瞬間、そこから大量の牌がジャラジャラと音を立てて零れ落ちた。
東、南、西、北、中、發、そして——無数の「白」。
誰の目から見ても、それが「イカサマ用の仕込み」であることは明白だった。
「ほらね、言ったでしょ。お行儀の悪いお嬢ちゃんには、こういうお灸が必要なのよ」
女たちが嘲笑うように吐き捨てる。
隠し引き出しの中身を見た瞬間、私の脳裏に冷たい絶望が広がった。
(……はめられた……!)
私は最初から、勝つことなど許されない「イカサマの容疑者」として、この卓に座らされていたのだ。




