第6話:配牌
地下の麻雀施設は、タバコの煙と欲望の入り混じった淀んだ空気が立ち込めていた。
ギャラリーの男たちのねっとりとした視線が、おへそと太ももを丸出しにした私の安っぽいセーラー服を舐め回すように這う。
案内された卓に座っていたのは、あの路地裏で被害者のフリをして私を陥れた、あの3人の女たちだった。
ギラギラとスパンコールが光る、キャバ嬢のような極端に露出の多い派手なドレスを着ている。
これが彼女たちの本職の衣装なのか、これもおじさんたちの趣向なのかはわからない。
(セーラー服じゃなくてよかったですね……)
喉まで出かかった皮肉を、私はぐっと飲み込んだ。
ここで彼女たちを逆上させても盤上では何の意味もない。
合気道と同じだ。
心を乱した方が負ける。
卓の傍らには、深紅のチャイナドレスを身にまとったトキが静かに立っていた。
スリットから覗くしなやかな脚線美と、一切の感情を削ぎ落とした氷のような表情が、このアングラな空間で異様な存在感を放っている。
彼女自身もかつてここで同じような衣類を着せられ、見世物にされた過去があると言っていた。
そのチャイナドレス姿は、美しい反面、どこか凄まじい因果の冷たさを纏っていた。
そのトキが、冷徹な声でルールを告げる。
「それではルールを説明します。対局は一局のみ。ツバメさんが勝てば慰謝料は帳消しとし、今後一切、GGGからあなた、およびあなたの学校、家族、関係者への揉め事は起こさせないと約束します」
「……」
「逆に、ツバメさんが勝てなかった場合は……GGGの奴隷として生涯かけて借金を返していただきます」
(こんなのはただの腹いせだ……対局相手の女性には、何もデメリットがないじゃないか)
ジャラジャラと冷たい音を立てて全自動卓が牌山を押し上げた。
配牌を取る。
ここに来るまでの間、トキから詰め込みで教え込まれた知識と手元の牌を照らし合わせ……私は自分の目を疑った。
一、九、字牌がすべて1枚ずつ、綺麗に手元に揃っている。 これは……『国士無双』の13面待ち聴牌!?
親の私は、初めのツモ牌に手を伸ばす。
引いたのは『5筒』。
これはハズレだ。
私はそれを河に捨てた。
すると、次の瞬間だった。
相手の女が手牌から白を4枚見せて宣言した。
「アンカン」
……ん? アンカン? 私の手元にも『白』はあるのに、相手が『白』の暗槓をした? 麻雀牌は同じ種類は4枚しかないはずじゃ……。
混乱する頭のまま順番が一周し、再び私のツモ番が回ってきた。
引いた牌は——『1萬』。
(やった……! 上がりだ!)
「ツモ! 国士無双、13面待ち!」
こんなにあっさり上がれるなんて。
私は喜びを噛み締めながら、並べた自分の手牌に見惚れていた。
——くすくす。 ——あははははっ。
ふと、くぐもった笑い声が聞こえてきた。
顔を上げると、3人の女性が、口元を押さえながら、不気味な笑顔でこちらを見つめていた。




