↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/12

第5話:選択肢

挿絵(By みてみん)

「……もし、負けてしまったら?」


震える声で尋ねた私に、トキは一切の感情を交えない、淡々とした声で答えた。


「その時は、GGG(グロウ・グローバル・グループ)の奴隷となり、生涯かけて借金を返していくことになります」


「そんなの……イヤッ!」


思わず叫んでいた。

一生、あのチンピラたちの言いなりになって、光の当たらない場所で搾取され続けるなんて、絶対に嫌だ。

だが、トキのガラス玉のような瞳は、冷徹な現実だけを映し出していた。


「あなたに選択肢は多くありません。人生を棒に振って法的機関に相談するか、今すぐに慰謝料を全額払うか。……それとも、一か八かの賭けに出るか」


トキ自身も、あの慰謝料が法外な脅しであることは百も承知なのだろう。

確かに、警察や弁護士に駆け込めば、数百万円という不当な請求そのものは無効にできるかもしれない。


けれど、あの巧妙に捏造された『暴行の自白動画』がある限り、私には傷害事件の加害者というレッテルが貼られる。

学校は退学か、良くて停学。

由緒ある道場の看板を汚し、父や祖父の顔に泥を塗ることになる。


そして何より、私の生きがいである合気道の試合には、もう二度と出ることはできない。

かと言って、高校生の私にポンと払えるような金額ではなかった。

逃げ道は、最初から塞がれているのだ。


(……やるしかない)


私はギリッと奥歯を噛み締め、トキの目を真っ直ぐに見据えた。


「行きます」


「……覚悟は決まりましたか」


「はい」


私の決意を聞き届けると、トキは足元に置いてあった見慣れない紙袋を持ち上げ、こちらへと差し出した。


「なら、これを着てください」


「え……?」


促されるままに紙袋を受け取り、中身を引き出してみた私は、目を疑った。

それはセーラー服だった。


だが、当然うちの学校の制服ではない。

丈が極端に短く、着ればおへそが完全に丸見えになるトップス。


そして、膝上15センチはあるだろう、ペラペラで極端に短いプリーツスカート。

どう見ても、深夜アニメに出てくるような安っぽいコスプレ衣装だ。


「あの、これは……?」


戸惑いながら尋ねる私に、トキはほんの少しだけ眉をひそめ、冷徹な声で言った。


「……この施設は、ギャラリーの余興を兼ねています。参加者には指定の衣装を着る義務があります。不条理ですが、拒否権はありません」


嫌悪感で腕に鳥肌が立った。

借金でがんじがらめにした若い女の子にこんな服を着せ、見世物にして楽しむ大人たちがいる場所。


それが、これから私の向かう「戦場」なのだ。

トキの言っていた『狂っている』という言葉の意味が、少しだけわかった気がした。


「……着替えてきます」


布地の少ない、ひどく心許ないコスプレ衣装を握りしめ、私は道場の更衣室へと向かった。

こうして私は、常識も倫理も通用しない、地下の麻雀施設へと足を踏み入れることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。