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第三十話 闇からの、いざない


 ――やあ、どうも。二回目だから、初めましては言わないよ。


 頭の中へ、あの不快な声が響いた。


 ――僕からのメッセージは、ちゃんと伝わったのかな?


「……あんたの事は覚えてる」


 俺は唇を噛んだ。


「真霊界で、でっかい化け物を操っていたヤツだろ」


「その時は、こんな気配じゃなかったけど」


「わざわざ隠してたのか?」


 ――力は見せびらかすためにあるんじゃない。必要な時に、必要なだけ使うものさ。


「俺の家族に力を使ったのも、必要だったって事か?」


 ――当然だよ。僕は一切の無駄を嫌う存在だからね。


 怒りが込み上げる。


「……なら聞かせてもらおうか」


「なんで俺の家族を襲った!」


 ――君と話し合う機会を作るためさ。


「ふざけるな!」


 ――もし君が僕を正しく理解してくれたら、家族は解放しよう。


「理解?」


「利己主義で、人の命を何とも思っていない、化け物だって事をか!」


 ――それは、僕の一部分の評価だね。


 ――僕は君に、僕の全てを理解してもらいたい。そして良き協力者になってほしい。


「洗脳するって事だろ」


 ――違うよ。


 ――洗脳しても君の一部しか得られない。僕が欲しいのは、君の全てだ。


 ――君自身の意志で、僕と同化してほしいんだ。


 ……狂っている。


 だが、この男は本気だ。

 自分の理想を信じて疑っていない。


「……わかった」


「アンタにもアンタなりの真実があるんだろう」


「でも、俺にも俺の真実がある」


 俺は拳を握った。


「俺は、俺の周りの者達の笑顔を守る」


「難しい理屈はいらない」


「邪魔するヤツは潰す。それだけだ」


 しばし沈黙。


 ――やっぱり悪くない思考だ。


 ――なら、君の真実で僕を潰してみせてくれ。


 ――僕を倒せば、君の家族は解放しよう。



 約束の時刻は一時間後。

 場所はまた、あの砂漠だった。


 だが、その前にやる事があった。


 どうしても、もう一度エチカの顔を見ておきたかった。


 俺は二階へ上がり、自分の部屋の扉をそっと開けた。


 ベッドの上で、エチカが小さな寝息を立てている。


 しかもアイマスクと耳栓つきだ。


「……どんだけ本気で寝る気なんだよ」


 思わず笑った。


 昼間、あれだけ騒いだんだ。

 そりゃ疲れてるか。


 俺は小さくつぶやいた。


「行ってくるよ」


 そして、眠るエチカの頬にそっとキスをした。


 十年以上しもべやってきたんだ。

 これくらい、いいだろ。



 家を出て少し歩いたところで、頭の中に話しかける。


「もう用は済んだ。どこへ行けばいい」


 ――近くに扉を開く。まっすぐ進んでくれ。


 公園へ着くと、木のそばに黒い穴が開いていた。


 その中へ入る。


 そこは異空間だった。


 宙に浮かぶ玉座。

 そこに、一人の男が座っていた。


 黒いスーツ、ノーネクタイ。

 若く見える、どこにでもいそうな男。


 だが、その奥にある気配だけが異質だった。


「ようこそ」


 男は穏やかに笑った。


「僕がラスト・ルートだ」


「これから少し話をして、それでも必要なら戦う」


「そして最終的に、君には僕の計画へ来てもらいたい」


「喜んで拒否するよ」


「俺は戦う。それだけだ」


「そうか」


 ラスト・ルートは頷いた。


「では質問だ。君は人間という存在をどう思う?」


「僕は、この世界に必要ないものだと思っている」


 空気が凍った。


「人類は一部を残し、残りはすべて淘汰すべきだ」


「そのために、君の肉体が必要なんだ」


 俺は睨み返した。


「誰にも、生きる権利を奪う資格なんてない」


「本当にそうかな?」


 ラスト・ルートの目が細くなる。


「人間は他の生き物の権利を奪い続けてきた」


「環境を壊し、命を食い潰し、増え続けている」


「このままでは、生命の樹そのものを切り倒す」


「僕は、それを止めたい」


「物理世界を守りたい」


「それを――僕は、愛夢守アムールと呼んでいる」


 愛夢守。


 理想はわかる。

 だが、やり方が違う。


「人間は、間違いに気づいて変われる」


 俺は言った。


「少しずつでも、進めるはずだ」


「間に合わない」


 ラスト・ルートは即答した。


「僕らは、長い時間すべてを見てきた」


「だが、予想を覆した人間はいなかった」


「もう待てないんだよ」


「地球は、すでに悲鳴をあげている……」


 俺は言葉を失った。


 答えが見つからない。


 その時だった。


「詭弁よ!!!」


 響いた声に、俺は振り向いた。


「エチカ!」


 エチカが立っていた。

 その後ろにはシンちゃん、深代さんまでいる。


「どんなに正しくても、他人が用意したレールには乗らないわ!」


「未来は、自分で決めるの!」


「そのために誰かが犠牲になるのなら、私は一生かけてそれを背負う!」


「それが、生きるって事よ!」


 胸が熱くなった。


「リュウ!」


「そんなヤツに、飲み込まれてるんじゃないわよ!」


「アンタはバカなんだから、バカらしく立ち向かいなさい!」


 ……なんだそれ。


 でも、救われた。


 そうだ。


 俺が戦う理由は、勝てるからじゃない。


 自分に負けたくないからだ。


 俺は前へ出た。


「ラスト・ルート」


「お前の申し出は、全部断る」


「家族は、お前に勝って俺が助ける!」


「最初から、そう言えばいいのよ!」


 エチカが微笑んだ。


「役立たずだけど、アンタはできる役立たずなんだから!」


「それは、余計だ」


 ラスト・ルートは静かに立ち上がった。


「……救済には力が必要だ」


「なら見せてもらおう」


「君たちの力を」


「だから断るって言ったろ!」


「なら――力ずくで」


 次の瞬間。


 無数の気の刃が空間を埋め尽くした。


 同時に、エチカの金色の気が爆発する。


 轟音が世界を揺らす。


 それが――最終決戦の始まりだった。




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