第二十六話 黒い計画
ソルロアとグールは、主の座する地――ネス・ピリオンへ来ていた。
その中心にそびえるのは、“黒の宮殿”と呼ばれる巨大な城。
二人は、主の待つ部屋へ向かい、静かに歩いていた。
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「グール……あなたの報告のおかげで、レガスを逃さず処理することができたわ」
「礼を言うわ」
ソルロアの言葉に、グールは深く頭を下げる。
「とんでもございません」
「あの狡猾なレガス様を処理できる機会など、そうそう訪れるものではありませんでした」
「少年が、真影より“タマゴ”を受け取った気配を感じ、急ぎご報告差し上げましたが……」
「まさか、ここまで我らの思惑通りに事が運ぶとは」
「まさに……時勢の流れを感じます」
「そうね」
ソルロアは小さくうなずいた。
「他の件の進み具合を見ても……今は、好機なのかもしれないわ」
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やがて二人は、主――ラスト・ルートの部屋の前へ辿り着く。
コン、コン――。
「入りたまえ」
扉が開いた。
「失礼致します。ソルロア、グールの二名、参上致しました」
部屋の奥に座していたラスト・ルートは、穏やかな声で応えた。
「うん。忙しいところ済まないね」
「レガスの件は、ことのほか上手く運んだようだね」
「はい。すべて、ラスト・ルート様の御心のままに」
「いや……二人がよく動いてくれるおかげだ」
「感謝しているよ」
「勿体無きお言葉」
「我々は、ただご指示のままに動いているだけにございます」
グールは顔を上げ、静かに続けた。
「しかし今回の件は、やはり予想以上に上手く運びました」
「時が……成就する気配を感じて止みません」
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「そうだね」
ラスト・ルートは満足げに微笑んだ。
「それは、私も同感だ」
「――そこで、この機会に、かねてより考えていた計画を実行したいと思う」
室内の空気が変わる。
「君たちは、どう思う?」
ソルロアが即座に答えた。
「わたくしも……今が絶好の機会かと存じます」
グールもまた、深くうなずく。
「わたくしもです」
「そうか」
ラスト・ルートは指先を軽く組んだ。
「例の機械……ソール・リサイクラーの準備は順調かな?」
「はい」
「実施できる手筈は整っております」
「あとは、ご指示を頂くだけかと」
「そうか……」
ラスト・ルートはゆっくり立ち上がった。
「では――それぞれ、自分のやるべき事を始めるとしようか」
「はっ!」
二人の声が重なる。
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静かに足踏みしていた時は――
この瞬間を境に、確かな速度をもって動き始めた。
その気配を、三人は等しく感じていた。




